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3章 聖剣エクスカリバー

47話 ゼトラ戦③

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 セラとウィナーが話している間、アルフォスとゼトラとの激しい攻防が続いていた。

 魔剣カラドボルグの攻撃を幾度も受け続けたことでゼトラの鎧も損傷が目立ってきていた。

 (邪神の遣いの分際で!)

 ゼトラはなかなか決着をつけることができない現状に苛立ちと焦りを感じていた。

 「調子にのるなよ! 水刃すいじん!」

 圧縮された水の刃をかわし、アルフォスは魔剣カラドボルグを一閃する。その刃先がゼトラの頬にかすり傷を残す。

 「うぉぉぉぉぉ!!」

 ウィナーがゼトラの背後からクレイモアで斬りかかる。

 「ふん」

 ゼトラは横っ跳びに避けると、ウィナーの首を狙って聖剣エクスカリバーを閃かせる。

 「うぉっと!」

 ウィナーは身体をひねり、聖剣エクスカリバーの刃から逃れようとするが首筋についた一筋のかすり傷から血が流れる。あとほんの少しでも反応が後れていれば首は地面に転がっていたにちがいなかった。

 (あのおバカさんは何を考えてるんですの!? あんな大声をだして斬りかかっていっては、背後からの攻撃の意味がありませんわ!!)

 その様子を見ていたセラは憤りを感じていた。

 「一気にたたみかけるぞ!」

 アルフォスは叫んでゼトラに斬りかかる。それと同時にウィナーと再びクレイモアを手にゼトラに襲いかかった。

 「くっ……こいつら!!」

 魔剣カラドボルグとクレイモアの連続攻撃にゼトラは劣勢にたたされる。鎧の損傷はますます大きくなるばかりだ。

 (くそ! 光の女神様より授かった鎧が!?)

 今や傷だらけとなり、見る影もなくなった純白の鎧はその効力を充分に果たせてはいない。

 合図も何もなくセラが動く。

 「火属性最上級魔術フレイム・キャノンボール!!!」

 「紅雷こうらい!」

 素早くゼトラに接近すると間髪いれずに自身の最強魔術火属性最上級魔術フレイム・キャノンボールを放つセラ。

 そのタイミングに合わせるようにアルフォスも魔剣カラドボルグの魔力を解放し紅雷こうらいを撃つ。

 「ぐぁぁっ!!」

 焦燥感にかられ、冷静さを欠いていたゼトラは反応が後れる。火炎の弾丸はゼトラの脇腹を貫通し、紅い雷撃が全身を駆け巡った。

 「ぜぇぇぇぇぇいっ!!!」

 ウィナーは猛然と突進しクレイモアをゼトラの腹に突き刺す。

 「ぐはっ!」

 ゼトラは吐血し、右手に握られていた聖剣エクスカリバーが滑り落ちる。

 「く……そ!……ア…ル…フォ…ス!……」

 仰向けに倒れて恨めしそうにアルフォスを睨むゼトラ。

 アルフォスは魔剣カラドボルグを背中の鞘に納め、聖剣エクスカリバーを拾い上げる。長剣で重みのある魔剣カラドボルグに対し、聖剣エクスカリバーは非常に軽い。その軽さに驚きつつゼトラから鞘を外して納める。

 「さて、あとはこの勇者を始末すれば目的達成ですわね」

 「こいつの始末もリュカリオンから頼まれてたのか?」

 「まったく……。あなたはリュカリオン様の話を全く聞いてないんですのね! そもそもわたくしたちが天救教団の施設を破壊して回ってたのは、聖剣エクスカリバーを持つ勇者を誘き出すためだったのですわ」

 「おぉ! そういうことだったのか!!」

 今更ながら納得するウィナーにアルフォスとセラは深いため息を漏らす。

 「とにかく、そういうわけだ。覚悟しろ!」

 アルフォスは聖剣エクスカリバーの切先を仰向けに倒れいるゼトラに向ける。

 次の瞬間、ゼトラは突如出現した光の珠へと吸い込まれ、そのまま空の彼方へと消えてしまった。

 ほんの一瞬の出来事に油断していたアルフォスたちは反応できなかった。

 「なんなんですの!?」

 「おいおい、せっかくのチャンスだったってのに勇者を仕留め損なっちまったぞ!?」

 「聖剣エクスカリバーは回収できたんだ。引き上げてリュカリオンに報告するしかないだろう」
 驚きの声をあげるセラとウィナーに対して、アルフォスは冷静であった。
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