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4章 ラミーネル攻略戦
51話 リュカリオンとセラ
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夜風が頬を撫でる。
ベランダに出て、その心地よさを楽しむリュカリオンの耳にドアをノックする音が聞こえる。
「セラか。入るがよい」
「失礼いたしますわ」
セラは静かに扉を開けて室内へと入り、扉を閉める。
「こちらに来ぬか? 夜風が実に心地よいぞ」
「それでは……」
セラはリュカリオンの隣まで移動する。
「それで、アルフォスの様子はどうだ?」
リュカリオンが本題を切り出す。
「いつもと変わらないですわ。ご自分の故郷を襲撃することに全く躊躇いがないように思いますわ」
「そうか……」
セラからの報告に短く答えるリュカリオン。
「セラよ、おまえには心より感謝している」
「あら? なんのことでございますの?」
謝意を伝えるリュカリオンにセラは問い返す。
「これまでアルフォスを支え続けて来てくれたことに関してだ。この城に来た時のアルフォスは荒みきっていた。あのままでは復讐にとらわれた哀れな戦士にしかならなかったであろう。それを危惧しておまえを世話役に任命した余の判断は正しかったということだろう」
セラは不意にフフフフと笑いだす。
「どうかしたのか?」
リュカリオンはセラのほうを振り向き訊ねる。
「申し訳ございません。ですが、最初はリュカリオン様をお恨みしましたわ。魔族であるわたくしがなぜ人間であるアルフォス様に仕えねばならないのか…と」
今度はリュカリオンがフッと笑う。
「当然であろう。本来、人間と魔族は敵対するものだからな」
「はい。ですが、2人で幾つもの戦場を渡り歩くうちに少しずつ信頼関係が築かれてきましたわ。わたくしがピンチに陥ったときには、何度でも身を呈して守ってくれましわ。お互いに感情的になって口論になった時もありましたわね。それでも、少しずつですが、アルフォス様なら信用しても大丈夫だと思えるようになってきましたの」
「それは望ましいことだな」
リュカリオンは満足げに笑む。だが、次の瞬間には消えていた。
「ラミーネルでのアルフォスの行動によっては……」
「承知しておりますわ。たとえ、アルフォス様に裏切り者と呼ばれようとも……。その覚悟は既にできておりますわ」
そう言うセラの表情には物悲しさが滲んでいた。
「……すまぬ。そのときがきてしまったら、おまえには辛い思いをさせてしまうことになるな……。ゆるしてくれとは言わぬが……」
「リュカリオン様のそのお気持ちだけで……」
セラは込み上げる不安を振り払うように頭を小さく振り、両手を強く握りしめた。
ベランダに出て、その心地よさを楽しむリュカリオンの耳にドアをノックする音が聞こえる。
「セラか。入るがよい」
「失礼いたしますわ」
セラは静かに扉を開けて室内へと入り、扉を閉める。
「こちらに来ぬか? 夜風が実に心地よいぞ」
「それでは……」
セラはリュカリオンの隣まで移動する。
「それで、アルフォスの様子はどうだ?」
リュカリオンが本題を切り出す。
「いつもと変わらないですわ。ご自分の故郷を襲撃することに全く躊躇いがないように思いますわ」
「そうか……」
セラからの報告に短く答えるリュカリオン。
「セラよ、おまえには心より感謝している」
「あら? なんのことでございますの?」
謝意を伝えるリュカリオンにセラは問い返す。
「これまでアルフォスを支え続けて来てくれたことに関してだ。この城に来た時のアルフォスは荒みきっていた。あのままでは復讐にとらわれた哀れな戦士にしかならなかったであろう。それを危惧しておまえを世話役に任命した余の判断は正しかったということだろう」
セラは不意にフフフフと笑いだす。
「どうかしたのか?」
リュカリオンはセラのほうを振り向き訊ねる。
「申し訳ございません。ですが、最初はリュカリオン様をお恨みしましたわ。魔族であるわたくしがなぜ人間であるアルフォス様に仕えねばならないのか…と」
今度はリュカリオンがフッと笑う。
「当然であろう。本来、人間と魔族は敵対するものだからな」
「はい。ですが、2人で幾つもの戦場を渡り歩くうちに少しずつ信頼関係が築かれてきましたわ。わたくしがピンチに陥ったときには、何度でも身を呈して守ってくれましわ。お互いに感情的になって口論になった時もありましたわね。それでも、少しずつですが、アルフォス様なら信用しても大丈夫だと思えるようになってきましたの」
「それは望ましいことだな」
リュカリオンは満足げに笑む。だが、次の瞬間には消えていた。
「ラミーネルでのアルフォスの行動によっては……」
「承知しておりますわ。たとえ、アルフォス様に裏切り者と呼ばれようとも……。その覚悟は既にできておりますわ」
そう言うセラの表情には物悲しさが滲んでいた。
「……すまぬ。そのときがきてしまったら、おまえには辛い思いをさせてしまうことになるな……。ゆるしてくれとは言わぬが……」
「リュカリオン様のそのお気持ちだけで……」
セラは込み上げる不安を振り払うように頭を小さく振り、両手を強く握りしめた。
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