10 / 123
第1章 聖剣アヌスカリバー
魔眼のイルウ
しおりを挟む俺達の目の前に立ちはだかった魔王軍四天王第二の刺客。
耳がとがっているからエルフってやつか。それとも肌が黒いからダークエルフなんだろうか。詳しくないから分からん。っていうかこの世界にエルフとかダークエルフとかいるかどうかも分からんし。ただの耳が長い人かもしれん。
とにかく、褐色の肌とは対照的に白い髪を編み込み、体にはタトゥーを入れた、妙に扇情的でセクシーな服装の女性が城門の外には立っていた。
城門を守っている衛兵たちは最初の内こそ槍を構えて今にも飛び掛からんと臨戦態勢だったけど、俺が来たと分かると「あ、勇者だ」「あいつに任せときゃいっか」みたいな感じで距離を取り始めた。そんなだからここまで侵入されちゃうんだよ。
「カルナ=カルアが世話になったらしいわね。ふふ、見た目には可愛らしいぼうやにしか見えないのにねえ」
可愛らしいとか言われちゃったよ、なんかドキドキするな。見たところ相手も俺とそんな歳が変わらない感じの、普通の、というかかなり可愛いらしい少女に見えるんだけど、もしエルフなら実際の年齢はもっと上だったりするんだろうか。それにしても美人でスタイルいいなあ。
しかし可愛らしいものの、異様な雰囲気を放っている。この国の中心部まで何の障害もなく侵入してきたし、やっぱりそれなりに強いんだろうなあ。まあ、所詮聖剣の敵じゃねえけど。
「奴の目、紅く光り輝いておるだろう……」
「ん?」
アスタロウが何やらぶつぶつ囁いてくるので見てみると、確かに赤いだけじゃなく、光ってるようにも見えるなあ。
「決して奴の目を見てはいかんぞ」
「ふざけんなよお前見ちゃったじゃねえか!!」
言い方ってもんがあるだろうがお前! そんな言い方したら普通見ちゃうだろうが! そういう時は先に「眼を見るな」って言ってから説明するもんだろうが!
「奴の異名『魔眼』は文字通り奴の得意とする瞳術からつけられておる。目が合えば金縛りにあうぞ」
「遅ぇんだよなにもかも!! そんなだからこんなとこまで魔族に侵入されんだよ!! 体が痺れて動かねえよ!!」
「なに? ケンジ、眼を見てしまったのか」
おめえのせいだよ! っていうか言いながら俺の体を触るな! 痺れてる時に触られるとくすぐったいんだよ!
「なんということだ、これでは聖剣が抜けないではないか」
そう言いながら尻を擦り付けてくるな! くすぐったいし、何より汚い!
「どうした勇者とやら? 聖剣を使わないのか? 聖剣はどこにある?」
このおっさんのケツに刺さってんだよ。っていうか聖剣を抜けないのはお前が金縛りにあわせたからだろうが。
その時、余裕の笑みを湛えたまま、イルウはパチンと指を鳴らした。瞬間、俺の拘束が解除されて身動きが取れるようになった。異様な脂汗をかきながらも、俺はまず真っ先にイルウから視線を外した。
「あれ? もう痺れとれちゃった感じ?」
そう言いながらしつこくアスタロウが俺の体を突っついてくる。
「てめえ本当いい加減にしろよ! 好き放題突っつきまわしてくれやがって! 今度はお前が痺れろ!!」
「ぐわ、や、やめぬかケンジ!」
アスタロウの顔を掴んで無理やりイルウの方に向けさせたが、金縛りにあうことはなかった。魔眼は常時発動してるわけじゃないのか。
「フッ、こんな時に遊んでるとはよほど腕に自信があるようだな」
遊んでませんけど。本気ですけど。
「だが、聖剣を抜かなければお前に勝ち目はないぞ? どうする?」
目は赤いままだが、妖しい輝きは消えている。やろうと思えば今の一瞬でもできたはず。それをしないのは、強者の余裕か、いや、違うな。
狙いは聖剣か。
考えてみれば当然か。
前回俺は四天王の筆頭を一撃で山の向こうまでフッ飛ばしてるんだからな。魔王がその力に着目するのも当然と言えば当然。
正直あんなクソみたいな聖剣くれてやりたいけど。
「聖剣が狙いか、魔族よ。しかし聖剣は選ばれし勇者にしか抜くことができんのじゃ。今まで多くの者が挑んできたが、柄に触れる事すら叶わなかった。本当に『勇気ある者』にしか抜くことが出来んのじゃ」
そういうこと?
自分的には、もしかしてこの間の国王のが演技じゃなくて本当に抜けなくて......って可能性も少しは残ってるかもって考えたんだけど。
触れることすらできなかったって……いくらなんでもそれはないもんね。
結局あれか。「おっさんのケツの穴から剣を引き抜く勇気」のある者が聖剣を使えるってこと?
で、今まで召喚した異世界転移者もあの臭い剣に触る勇気がなかったところ、空気の読めないアホが来て剣を抜いてくれましたってか。やってられん。
「フフ、話が早いわねおっさん。もし私に扱えなくても、手に入れるだけで充分よ。後は海にでも投げ込んでやれば人類の希望は断たれる」
やめろ、汚染水を垂れ流すことになるぞ。いや、処理水って言った方がいいのか? まあいいや。でも俺もあの剣には二度と触れたくないんだよね。
「おっさん、聖剣はどこにあるの? 正直に言えば殺さないであげるわよ」
お前が今話してるおっさんのケツの穴ん中だよ。
「殺さば殺せ。たとえわが命を絶たれようとも、人類の希望たる聖剣をお前などに渡す気はない」
人類の希望たる聖剣をケツの穴に入れるな。このおっさん言ってることだけは格好いいんだよな。
「フン、なら望み通り殺してあげるわ。ただし、殺すのはおっさんの方じゃなくて勇者の方よ。さあ、聖剣を抜かないと死ぬわよ」
う、ターゲットをこっちに絞りやがった。イルウは腰に提げていた短剣を抜く。魔眼と剣のコンボを決められれば逃れる方法はない。周りの衛兵どもは完全に観戦モードだ。お前らちょっとは自分事として考えろよ。
しかしまあ、眼を見たら金縛りにあうんなら単純に目を見ずに戦えばいいんじゃ? とはいえ、聖剣は抜かなきゃ戦えないし、考えものだが。
「頭の悪そうなお前の事だからどうせ『目を見ずに戦えばいい』とでも思っているんだろう。無駄だ。我が瞳の魔力からは逃れることはできない。私の目を見ずにはいられまい」
意識的に視線を逸らしてはいる。しかし何か不思議な魔力というか魅力というか、俺の視線は奴に吸い寄せられていった。まずい。
「喰らえッ!!」
探検を振りかぶり、切りかかってくる。
「フンッ!」
しかしすんでのところで短剣を躱し、俺はイルウの鳩尾にボディブローを叩きこんだ。
「グッ……な、なぜ……?」
全く警戒することなく無防備にカウンターを急所に喰らってしまったイルウはその場にうずくまる。
「『勇者』に、二度同じ攻撃が通用すると思うなよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
