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第2章 冒険者達
街道
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「はぁ、結局おっさんと二人旅か……」
なんつう色気のない展開だ。
街で可愛い女奴隷を奴隷商館から救い出すこともなく、道中モンスターに襲われている村娘に会う事もなく、俺達は王都を離れて次の街へ向かった。
ケツの穴に聖剣の刺さったおっさんと二人きりで。ロバもいるけど。
ふざけんな。
お前これ完全に珍道中記じゃねえか。
これがネット小説で俺が読者だったら絶対に評価しねえぞ。
エンタメの基本は金、暴力、セックス。これはいつの時代も絶対だ。
金ならあるのに。
王様からたんまり支度金をふんだくったからな。しかし基本移動は徒歩で、乗合馬車すら使わない。何故なら荷物を載せてるロバがいるから。金はあるけど使い道がない。町と町の間の宿泊は当然ながら野宿だ。虫刺されが酷いし、寝るのは交代。うんこはその辺でする。
このおっさん去年まで国王やってたくせによくこんな生活平気だな。つい最近まで高校生やってた俺には耐えられん。
「あ~あ、あのダークエルフ、脈ありだったのになぁ……」
「何を見てそう思ったんじゃ」
「顔見りゃ分かんだろうが! 完全に仲間になりたそうな顔でこっちを見てたじゃねえか。お前あの顔、完全に仲間になる顔だったろう」
「だからその『仲間になる顔』ってのが分からんのじゃが。顔がいいだけなら儂の子孫のイリユース姫とかはどうなんじゃ」
「あの娘、顔は可愛いけど頭おかしいからあんまり話したくないんだよなぁ……」
「人の子孫に向かってえらい言い様じゃな」
そう言えばさっきうんこって言ったから思い出したけど、このおっさん国王の言った通り本当にうんこしないんだよな。俺が一日一回草むらに行って葉っぱでケツ拭いてるのにこいつは全然そういうのないもん。本当に聖剣が全てを吸収してるんだろうか。
おっさんのうんこを栄養にしてる聖剣使いたくないなあ。
さらに言うならおっさん、俺が寝てて歩哨してるあいだ、なんか変な喘ぎ声出しながら聖剣をいじってるみたいなんだけど、あれ何してるんスか?
まあだいたい分かるし口に出して聞きたくないから心の中で思うのにとどめてるんだけどさ、俺本当にあの聖剣使いたくないのよ。だから王都を出るときに普段使い用の剣も買っといた。おっさんには「無駄遣いだ」って咎められたけど、聖剣を無駄にケツの穴に刺してる奴に言われたくないんよ。
「おっ、勇者よ、ようやく町が見えてきたぞ」
おっさんの声に顔を上げると、確かに建物みたいなものが見える。簡単な柵みたいなものがあるけど、城塞都市みたいに石塀で囲まれたりはしていない。まあ、人が住んでる以上畑とかもあるだろうし、よほど切羽詰まってないとそんなもの金の無駄だろうからな。
ところで俺達はどこを目指してるんだろう?
さっき「次の町」とか言ったけど、行先は基本おっさん任せで俺は何も把握していない。一応地図も見せては貰ったんだけど、なんだかいい加減な海岸線と山の書いてある落書きみたいな地図で、海には化け物の絵が書いてある。
地図の右上の方はぼやけたような適当な線になって、おっさんの話じゃ「魔界」と書いてあって、そこが魔族の領域らしい。
多分だけど、こいつら世界の正確な姿を把握してないんだろうな。海に化け物の絵が書いてあるとかなんか昔の地図みたいだし。まあ、この世界なら本当に化け物がいるのかもしれないけど。
とにかく俺達は魔王を倒す戦力(聖剣)はもうあるんで情報を集めながら「魔界」に向かって一直線に進んでいくらしい。
「この町には王都にはなかった『冒険者ギルド』があるはずじゃ。そこで冒険者として登録をすれば情報が入りやすくなるらしいからな」
ほほう、なるほど、一応考えてはいるんだな。伊達に聖剣と一体化してるわけじゃないな。
それにしても王都を出てから四日ほどかかったか。ここまで大きなトラブル……盗賊に襲われるだとかモンスターに襲われるだとかそんなのが無くて本当によかった。結構道の人通りも多かったし、王都から近いこともあってか割と安全だったと思う。
それもこれも道がしっかり整備されてるせいだろうか。やっぱり都市発展の基礎は道だな。こういうところはしっかりしてるんだなこの国。
「ふっ、儂が若い頃に整備した街道のおかげで大事なく辿り着けて良かったのう」
ホントこいつケツに剣が刺さってる以外は名君なんだよなあ……
――――――――――――――――
「あの姿は……」
街道の脇にある雑木林。
その影から二人とロバを見つめる者がいた。
「勇者とおっさん……何故こんなところに。まさか、我らの計画に気付いているのか……?」
いつかどこかで会った、ダークエルフがそこにはいた。
なんつう色気のない展開だ。
街で可愛い女奴隷を奴隷商館から救い出すこともなく、道中モンスターに襲われている村娘に会う事もなく、俺達は王都を離れて次の街へ向かった。
ケツの穴に聖剣の刺さったおっさんと二人きりで。ロバもいるけど。
ふざけんな。
お前これ完全に珍道中記じゃねえか。
これがネット小説で俺が読者だったら絶対に評価しねえぞ。
エンタメの基本は金、暴力、セックス。これはいつの時代も絶対だ。
金ならあるのに。
王様からたんまり支度金をふんだくったからな。しかし基本移動は徒歩で、乗合馬車すら使わない。何故なら荷物を載せてるロバがいるから。金はあるけど使い道がない。町と町の間の宿泊は当然ながら野宿だ。虫刺されが酷いし、寝るのは交代。うんこはその辺でする。
このおっさん去年まで国王やってたくせによくこんな生活平気だな。つい最近まで高校生やってた俺には耐えられん。
「あ~あ、あのダークエルフ、脈ありだったのになぁ……」
「何を見てそう思ったんじゃ」
「顔見りゃ分かんだろうが! 完全に仲間になりたそうな顔でこっちを見てたじゃねえか。お前あの顔、完全に仲間になる顔だったろう」
「だからその『仲間になる顔』ってのが分からんのじゃが。顔がいいだけなら儂の子孫のイリユース姫とかはどうなんじゃ」
「あの娘、顔は可愛いけど頭おかしいからあんまり話したくないんだよなぁ……」
「人の子孫に向かってえらい言い様じゃな」
そう言えばさっきうんこって言ったから思い出したけど、このおっさん国王の言った通り本当にうんこしないんだよな。俺が一日一回草むらに行って葉っぱでケツ拭いてるのにこいつは全然そういうのないもん。本当に聖剣が全てを吸収してるんだろうか。
おっさんのうんこを栄養にしてる聖剣使いたくないなあ。
さらに言うならおっさん、俺が寝てて歩哨してるあいだ、なんか変な喘ぎ声出しながら聖剣をいじってるみたいなんだけど、あれ何してるんスか?
まあだいたい分かるし口に出して聞きたくないから心の中で思うのにとどめてるんだけどさ、俺本当にあの聖剣使いたくないのよ。だから王都を出るときに普段使い用の剣も買っといた。おっさんには「無駄遣いだ」って咎められたけど、聖剣を無駄にケツの穴に刺してる奴に言われたくないんよ。
「おっ、勇者よ、ようやく町が見えてきたぞ」
おっさんの声に顔を上げると、確かに建物みたいなものが見える。簡単な柵みたいなものがあるけど、城塞都市みたいに石塀で囲まれたりはしていない。まあ、人が住んでる以上畑とかもあるだろうし、よほど切羽詰まってないとそんなもの金の無駄だろうからな。
ところで俺達はどこを目指してるんだろう?
さっき「次の町」とか言ったけど、行先は基本おっさん任せで俺は何も把握していない。一応地図も見せては貰ったんだけど、なんだかいい加減な海岸線と山の書いてある落書きみたいな地図で、海には化け物の絵が書いてある。
地図の右上の方はぼやけたような適当な線になって、おっさんの話じゃ「魔界」と書いてあって、そこが魔族の領域らしい。
多分だけど、こいつら世界の正確な姿を把握してないんだろうな。海に化け物の絵が書いてあるとかなんか昔の地図みたいだし。まあ、この世界なら本当に化け物がいるのかもしれないけど。
とにかく俺達は魔王を倒す戦力(聖剣)はもうあるんで情報を集めながら「魔界」に向かって一直線に進んでいくらしい。
「この町には王都にはなかった『冒険者ギルド』があるはずじゃ。そこで冒険者として登録をすれば情報が入りやすくなるらしいからな」
ほほう、なるほど、一応考えてはいるんだな。伊達に聖剣と一体化してるわけじゃないな。
それにしても王都を出てから四日ほどかかったか。ここまで大きなトラブル……盗賊に襲われるだとかモンスターに襲われるだとかそんなのが無くて本当によかった。結構道の人通りも多かったし、王都から近いこともあってか割と安全だったと思う。
それもこれも道がしっかり整備されてるせいだろうか。やっぱり都市発展の基礎は道だな。こういうところはしっかりしてるんだなこの国。
「ふっ、儂が若い頃に整備した街道のおかげで大事なく辿り着けて良かったのう」
ホントこいつケツに剣が刺さってる以外は名君なんだよなあ……
――――――――――――――――
「あの姿は……」
街道の脇にある雑木林。
その影から二人とロバを見つめる者がいた。
「勇者とおっさん……何故こんなところに。まさか、我らの計画に気付いているのか……?」
いつかどこかで会った、ダークエルフがそこにはいた。
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