武装聖剣アヌスカリバー

月江堂

文字の大きさ
25 / 123
第2章 冒険者達

ガールズトーク

しおりを挟む
 汚れちまった悲しみに、今日も小雪の降りかかる。
 
 何があったかは聞かないでくれ。アンススの汚物を見るような視線が突き刺さる。「こいつらいったい何してるんだ」と言いたいのだろう。言わなくても分かるさ。
 
「バカなの?」
 
 もっとストレートな一言だった。悪いな。混乱させちまったか。生まれて初めて自分より頭の悪い生き物を見たんだろう。
 
「さて、腹ごしらえも済んだし先へ進むとしよう」
 
 クラッカーを食べ終えたアスタロウがそう言って立ち上がった。お前よくそんなところに入れてた食いもんを食べる気になれるな。ホントに元国王かお前。
 
「ごめん、ケンジくん。ケンジくんとアスタロウ殿がそういう関係だって知らなくて……」
 
 申し訳なさそうな顔をするなアンスス。っていうかどういう関係だと思ってるんだ。聖剣の使い手と鞘の関係だぞ。
 
 とはいえ、ポジティブに考えよう。これでアンススが俺と距離を置くようになってくれればそれはそれでいいんじゃないだろうか。気を取り直して先へ進もう。
 
 このダンジョンのどこかには四天王のイルウがいるはず。そして、情報が確かなら他にももう一人四天王がいるはず。
 
 人間の領土のこんな片田舎に魔王軍の四天王が二人。これが偶然のはずがない。何か凶悪な陰謀を感じる。イルウの目的はいったい何なのか。
 
 
――――――――――――――――
 
 
「へえ、そんなことがねエ」
 
「そうなのよ! もう私、ドキドキしちゃって! ねえ、これって脈あると思う? 絶対脈あるよね!」
 
「どうでしょうネ? ワタシそういう恋愛関係疎いんでよく分かんないですけど」
 
 ダンジョンの先で俺達を待ち受けていたもの、それは意外な空間だった。それまでの岩肌むき出しの床と壁と打って変わって綺麗に整地されてレンガを敷き詰められた壁面、床にはこのフェルネッド地域に見られる毛織物の特産品の絨毯。
 
 地域の特産品を使った装飾だけではなく発光菌糸累をふんだんに使って採光した柔らかい光は匠のこだわりが感じられる、ゆとりのあるくつろぎ空間を演出している。
 
 ダンジョンという性質上どうしても換気の問題が付きまとってくるが、部屋の屋根裏には通風孔のスペースが大きく割かれており、どうやら地上まで繋がっているらしい。
 
 その通風孔に俺達三人は今潜んでいるわけだが。
 
「でねでね、もう最初に王都で出会った時から私の事『美少女』とか言っちゃっててさ」
 
「ああ~、それはもう完全に惚れてますネ」
 
「でしょ? やっぱそうだよね?」
 
(あいつらは何の話をしとるんじゃ)
 
 聞こえないように小声でアスタロウが呟くが、俺にも分からん。
 
 小部屋にいたのは二人。一人は四天王のダークエルフ、イルウ・レッフーサ。もう一人はローブを羽織った骸骨だった。こいつがギルドにいたお姉さんの言ってた四天王だろうか。
 
 それはまあいい。まあよくはないんだが、まあいい。
 
 わざわざ人間の町の近くで四天王の内の二人が集まってるんだ。悪だくみの一つや二つもあるだろう。きっと魔王軍幹部の打ち合わせに違いない。
 
 だがさっきからお前らが話してる内容はなんだ。
 
「あ、そのピーチティー好きだったよね? お店で買ったら一袋おまけしてもらっちゃった」
 
「ヤー、ありがたいデス。ワタシはこれに目が無くってですネ」
 
 目が無いのはアンデッドだからだろう。
 
「ンー、いい香りデスね」
 
 匂い分かるのかあの骸骨。ゆっくりとティーカップをあおると下顎骨の裏側からドバドバと紅茶がこぼれた。何がしたいんだあいつ。
 
「クッキーもおいしいですネ。ワタシ自分で買いに行けないんで助かりまス」
 
 そう言ってクッキーを口に運ぶと、これまた下顎の裏側からポトリと落ちた。なんか意味あるのかその行為。
 
(勇者よ、これは……『無駄足』ではないか)
 
 俺もそんな気がしてきた。イルウがここに四天王の一人とコンタクトを取りに来たところまでは正しいだろう。だが、これはどう考えても『雑談』……お茶飲みに来ただけなんじゃないのか。
 
(いや、もう少し様子を見よう)
 
 だが、俺には気になることがある。もう少し、もう少し情報を引き出した方がいい様な気がする。
 
「でね、さっきなんか壁尻してる時にね」
 
「壁尻ってなンですか」
 
「『お前の聖剣は俺が貰う』とか言われちゃって、キャー♡」
 
 これ俺の話じゃねえか?
 
「それはもウ、愛の告白と言っても過言じゃないですネ」
 
 なんでそうなるのかはいまいち分からんが。
 
「でしょ? どうしよう、ブラックモア。私ついに彼氏ができちゃうかも」
 
 ブラックモアっていうのか、あのアンデッド。ローブなんか羽織ってて、見たところレイスとかリッチみたいな魔法使い系のアンデッドっぽいな。
 
 それはそれとしてだ。狭い通風孔の中、這いつくばったまま、俺はアスタロウの肩をポンと叩く。
 
(なっ?)
 
(何がじゃ)
 
 おっ、なんだよ負けが認められないのか? 俺がさんざん「イルウは仲間になる顔だ」って教えてやったのに否定しやがって。それともあんな可愛い子が俺に惚れてるっていう事実に嫉妬してるのか?
 
「デモ、肝心なところだと思うンですけど、イルウさんはそのケンジさんの事好きなンですか?」
 
 おっ、核心ついちゃう? ブラックモアもなかなかやるじゃん。見てみろよアスタロウ。あのイルウの顔を。ありゃ完全に恋する乙女の顔じゃん。俺って罪な奴だな。
 
「そ、そりゃまあ……私も、結構好き、って……いうか」
 
 これはもう否定のしようがないだろう。はっきりイルウの口から「好き」って出たぞ。俺の勝ちだな。なんだかんだあったけど、ここっていい世界だよな。
 
「ちなみにイルウさん、ネコとタチ、どっちなンですか?」
 
(ん?)
 
 なんか今……ノイズが入ったな。
 
「う~ん、正直今までずっと自分はネコだと思ってたんだけど」
 
 ネコ……? ネコ系女子ってことかな? いや待てよ、じゃあタチってなんだ? 今何の話をしてるんだ?
 
(勇者よ、雲行きが怪しくなってきたぞい)
 
 黙ってろアスタロウ。なんかちょっと……ノイズが入っただけだ。
 
 そう言えばアレだな。この世界の文字、読めなかったけど、言葉は普通に分かるんだよな。きっとアレだな。女神のなんか……不思議な力で言葉が翻訳されてるんだな。日本語と、このアルトーレ王国の言葉がリアルタイムで翻訳されて。
 
 ただ、文字までは翻訳されないみたいだけど。
 
 あと、アレだ。明治維新の時、欧米の言語にあって日本語に無い概念がたくさんあって、福沢諭吉とか、なんか偉い人がかなり苦労したらしい。特に法律とか学問関係で今俺達が苦労せずに済んでるのはそういう先人たちの努力のおかげなんだよなあ。
 
 つまり、アルトーレ語にあって、日本語に無い概念っていうのもかなりあるはずなんだ。それがまあ、今言った「ネコ」とか「タチ」とかいう概念なんだろうな。それがちょっとノイズになってる、と。
 
「その、壁にハマった時に色々あって……もしかしたら、タチもイケるかなあ、って」
 
 何故か分からないけど背筋に悪寒がはしるな。なんでだろう。
 
「ケンジもなんか、私のエクスカリバーに興味あるっぽいし、なかなか可愛いお尻してるっていうか、こう……無茶苦茶に汚してやりたいっていうか」
 
 何故か分からないけど急に体調が悪くなってきたな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...