武装聖剣アヌスカリバー

月江堂

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第4章 恐怖!悪のアナリスト

プロフェッショナル

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 朝。
 
 小鳥の鳴き声と共にパンテの村の宿屋で目を覚ます。アスタロウと同部屋なのは本当にイヤだけど爽やかな朝だ。昨日は最悪だったからな。
 
 偶然立ち寄った村で歩く加湿器アンススに出会っただけならまだよかったが、ジャガー級冒険者のイキりヤンキーに喧嘩売られたり、新たな変態集団が現れてひでえもん見せつけられたり。
 
 まあそれも全て過ぎたことだ。
 
 いつかまたトライアヌスが俺の目の前に現れることがあるかもしれんが、その時までは平穏が保たれるだろう。
 
 まあまた全然知らないところから新たな変態が現れる可能性も高いけどな。そんなことは考えても仕方ないか。
 
 ところでアスタロウはベッドにいないけどもう起きてなんかしてんのかな。まあどうでもいいか、と考え事をしていたら部屋のドアがガチャリと開けられた。ドアの向こうから顔をのぞかせたのはアスタロウ。お前外で何やってたんだ。
 
「勇者よ、ちょっと……いいか?」
 
 んだよ朝っぱらから。どうせ「ダメ」って言ってもそんなの許されないんだろう。仕方なく俺は着替えてアスタロウの後について宿屋の外についていった。
 
 意外な人物。俺を待っていたのは狼顔のハドリアヌスだった。
 
 お前ホンット勘弁してくれや朝っぱらから。朝から見たい顔じゃねえんだよお前は。
 
「いつか来るだろうとは思ってたけど連日かよ。もう再戦すんのか? 頼むから二日連続は止めてくれよ」
 
「いやあ……俺も二日連続顔を合わせるのは気まずいとは思ったんだけど……」
 
 ちっ、なんだよはっきりしない奴だな。何の用なんだよ。アナルに物の挟まったような言い方しやがって。
 
「実は……どうやっても昨日のロングソードが抜けなくて……」
 
「知らねえよッ!!」
 
 マジで知らねえよ! そんなこと一々俺に報告しに来るんじゃねえよ!! 帰れバカ野郎!!
 
 ……いやマジでなんでここに来たんだよ。俺とお前は敵同士だろう? 一応。もしかして本当にしばらく療養のために戦えないとかそんなことを報告するために来たのか?
 
「それで、昨日の晩のうちにこういうことに対処できる医療施設を色々調べてたんだけど」
 
 調べたから何だっつうんだよ。肛門科行けよ。この世界にそんなもんがあるのか知らんけどよ。

「どこの病院に行っても、詳しく症状を説明すると『死ね』と言われるばかりで治療してくれなくって」

 そりゃそうだろう。
 
「で、この辺りでそういう事に対処できるプロフェッショナルが、勇者ケンジ様だと聞いて……」

「死ね」
 
 お前さあ……なんなん? いい加減にしろよ。
 
 俺が?
 
 肛門から物を取り出すプロフェッショナルだと?
 
 いや確かにさ? アスタロウの肛門から聖剣を抜き取ったのは俺だけどよ? え? 嘘だろ? 俺世間的にはその道のプロフェッショナルって事になってんの? 冗談じゃねえよ。誰だよそんな噂広めたのは。
 
「儂が折に触れて『勇者は肛門から物を取り出すプロフェッショナルだ』と吹聴したのが功を奏したようじゃの」
 
「てめえの仕業かアスタロウ」
 
「お願いです……お願いです。もう他に、頼れる人がいないんです」
 
「リーダーの虎男にお願いしろよ。なんで俺なんだよ」
 
「フクタビアヌス様は、入れるのは得意ですが出すのは不得手なので……」
 
 なんなんホンマこいつら。入れるだけ入れて取り出せないとかホントに無責任な……そんなんなら最初っから入れてんじゃねえよ!!
 
「安心しろ、ハドリアヌス。勇者は肛門から物を取り出すために生まれてきたような男じゃ。きっとお主の剣も引き抜いてくれる」
 
 勝手に人の人生を定義しないでくれます?
 
 ほんっとに……とはいえさあ……俺は涙を流しながら縋りついてくるハドリアヌスを見下ろす。
 
 何とかしないわけにはいかないか。
 
「清潔なタオルをありったけ持ってこい! 出来るだけたくさんお湯を沸かして!! 男は外に出る!」
 
 
――――――――――――――――
 
 
汚れちまった悲しみに。
 
 なんなんだろう、俺の人生。ハドリアヌスからはえらい感謝されてたけど、これが勇者の仕事なのか? 宿屋の外で座り込んで項垂れてると、何者かが俺の前に立ちはだかった。
 
「やるな、勇者ケンジ。あのトライアヌスを退けるとはな」
 
 あん? こいつ……確か四天王のカルアミルクとかいう奴か……まあどうでもいいわ。今俺は疲れてんだよ。
 
「尤も、この俺を倒したんだからあの程度の連中に倒されてしまっては困るんだがな。お前が実力を示せば示すほど俺の格が上がるというのも何とも複雑な気持ちだな」

 そう言って笑ったが、こいつのこの余裕は何なんだ。俺が今聖剣を抜いていないからか? 確かに今急に襲い掛かられたりしたら困るのは困るが。

 というかだんだん腹立ってきたな。こいつ俺達の戦いを高みの見物って感じでずっと見てたんか?

「あの虎男、確か元四天王だったよな? その仲間を何で魔王軍じゃなくて俺が助けなきゃなんねーんだよ! お前がどうにかするべきだろうが!!」

「フン、あいつはただ四天王をやめただけじゃなく魔王軍を除名処分になっているからな。俺達が助ける義理はない」

「除名っていったい何やらかしたんだ? 相当ヤバいやつなのか?」

「政治資金パーティーの収入を収支報告書に記入しておらず、脱税の罪で除名処分になったのだ」

「しょっぺえ話だな」

 そんな話はともかく、こいつは何しにここに来たんだ。あんまり好戦的な様子にも見えないけど、聖剣が手元にないとやっぱりまずいな。アスタロウを呼ぶか。

「アスタロウ! 魔族が来てるぞ! 早く来てくれ!!」

「今日俺がここに来たのはほかでもない。今呼んだお前の連れ合いに興味があってな……」

 連れ合いじゃねーわ、ただの聖剣の鞘だ。それにしてもホモかコイツ? アスタロウに興味があるだとか気持ち悪い。

「なんじゃ勇者! むっ、こいつはこの間のカルナ=カルアとかいう四天王か!!」

 さすがに二対一というか聖剣が来たのは分が悪いと思ったのか、カルアミルクは大きく跳躍して俺達から距離をとった。

 どうやら戦う気は無いようだが、まさか本当にアスタロウに興味があるだけなのか?

「アスタロウとかいったな……その名前、覚えておくぞ」

 そういうなりカルアミルクは影が夕闇の中に溶けて消えるようにフッと消えてしまった。本当に何が目的だったのか。気味が悪い。
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