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第5章 ソロモンの悪魔
寝不足
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― 3日後 ―
「このように、第四代国王ガスクルフの治世に於いて魔族との敵対は決定的になり、ギルウッド侵攻により生活の場を失った森に棲んでいた亜人種たちが国内に流入し、現地十人との軋轢を……」
イリユース王女のチュートリアル(個別指導)が始まって三日の時が過ぎた。
まさか三日間ぶっ続けで神話から続く歴史の勉強が始まるとは思ってもみなかった。
今アルトーレ王国の四……五代? どっちだっけ。そのくらいの国王の話まで来たから、確かアスタロウが七……
「勇者様! ちゃんと聞いてますか? 寝ないでくださいね!!」
うお危ねえ! 今俺もしかして寝てたのか? 全然自覚なかった。
しかしまさか三日間ぶっ続けでこの世界のチュートリアルを受けることになるなんて……ん? おかしいな。これさっきも言った気がするな。
とにかく、途中食事やトイレは挟んでいるものの、三日間寝ずに講義を受け続けてるのでもう体力の限界だ。死ぬほど眠いし、椅子に座り続けているのでケツと腰が痛い。
いつの間にかアスタロウとイルウもいないし、宿屋の親父はめちゃ面倒くさそうな視線でこちらを見てたけど、二日目くらいからはもうあきらめの表情だ。
正直「出て行け」と言いたいんだろうけど、こんなんでもこの国の王女だからな。寒村の宿屋の親父が意見など出来る筈もなし。
「す……すまん、イリユース。もう体力の限界だ」
というかなんでお前は平気なんだ。どんな体力してやがる。化け物め。
「ええ? ここからがみんなも知ってる近代の話になってきて面白くなってくるのに……」
「みんなも知ってる」とか言われても俺は知らねえんだよ。面白くとも何ともねえよ勘弁してくれ。
「これに懲りたらもう二度とチュートリアルを馬鹿にするような発言はしない事ですね」
「わ、分かった。もう本当にチュートリアルを軽んじるような発言はしないから、寝かせてくれ」
「チュートリアルは素晴らしい!」
「ちゅ、チュートリアルは素晴らしい……」
「知は力なり」
「ちはちからなり……」
なんなんこれ。
もしかして俺今マインドコントロールされようとしてる?
もしくはもうされてる?
もうどっちでもいいから寝かせてくれ。俺はふらふらと宿屋の食堂を後にする。それにしても世の中「教えたがり」の人間は多いもんだが、まさかここまでの熱量を持っているとは。
自分の部屋の、ベッドまでの道程でなんとなくチュートリアルの内容を思い出す。
軽く要点を押さえると、女神と邪神は元々兄妹神らしい。ただ、この世界や人間を神が作ったという事ではなく、女神は人間の、邪神は魔族の後見人としてその生活を助けてやったんだそうだ。
さらにその後女神の側にはエルフやドワーフがつき、邪神側にはドラゴンや魔物がついて少しずつ勢力を拡大していったそうな。
元々女神と邪神は敵対していたわけじゃなかったけど、勢力を拡大するにつれてその生活圏が衝突する事態が起き、少しずつ仲が険悪になっていき、それに伴い暴力も発生する。まあ、この辺は人間同士でも同じだな。
かくして人間と魔族はそれぞれ背後に女神と邪神を控えて長い長い戦争に突入する、と。その先はまだ聞いてないけど、多分人間が女神に助けてくれるように嘆願して、聖剣が遣わされたんだろうな。
そのせっかくの女神の好意をあのアホ野郎はケツの穴にしまい込んだわけだ。ホント死ね。
『まあ大体そんなところです』
うお、女神か。いつも突然頭の中に話しかけてくるからびっくりするんだよな。ていうか本来お前がこの世界に送る前に事前にレクチャーしとくべき内容ちゃうんか。
お前が面倒くさがって放置したばっかりにここにきて一気に詰め込み式の教育されてんだぞ。
『あはは、面目ない』
全然悪いと思ってないなコイツ。
そもそも、なんか聞いた話を総合してみると、これって女神と邪神の代理戦争じゃないのか? って気がしてくるんだが?
もしかしたら神同士で戦争をすると互いに大きな痛手になる可能性があるから自分らで戦う代わりに人間と魔族を争わせて戦争ゲームしてるだけなんじゃないのか? もしそうだとしたら諸悪の根源はお前らなんじゃないのか?
『いやいやケンジさん、それはいくら何でも斜に構えすぎですよ』
どうだか。いまいちこの女信用ならないんだよな。人間なんて喋る将棋の駒くらいに考えてんじゃないの?
『私はあくまでも目にかけていた人間さん達がお願いしてくるからこそ、力を貸してあげているだけですから! そもそも私自身は邪神と敵対してませんし!』
ああ、そう言えば邪神とは兄妹関係なんだっけ? なんだよ妹系だったのかよこの女神。「おにいちゃん」って言ってみてよ。
『完全に寝不足テンションですね、ケンジさん』
うるせえなあんな責め苦を味わったんだから少しくらいいいことがあってもいいだろう。いいから「おにいちゃん」って言ってみろよ。
『もう……おにいちゃんのいじわる』
結構クるものがあるな、これは。
『割と本気でキモいです』
うるさい。俺はもう寝る。
ああ、眠い。ベッドの中に潜り込むとすぐに睡魔が襲ってきた。こういうのを「泥のように眠る」っていうんだろうな。意識を保てない。
次に意識が戻った時は朝の光の中、スズメ科の鳥の鳴き声が窓の外からチュンチュンと聞こえてきた。
「んん……」
ああ、よく寝た。
ベッドの中に異物感を感じる。なんだこれ? 俺抱き枕に抱き着いて寝てたのか? そんなもん寝るときにあったっけ?
「あ……ケンジ、起きたの?」
小鳥のさえずるような可愛らしい声。
俺の腕の中で眠そうに目をこすったのは、裸のイルウだった。
「このように、第四代国王ガスクルフの治世に於いて魔族との敵対は決定的になり、ギルウッド侵攻により生活の場を失った森に棲んでいた亜人種たちが国内に流入し、現地十人との軋轢を……」
イリユース王女のチュートリアル(個別指導)が始まって三日の時が過ぎた。
まさか三日間ぶっ続けで神話から続く歴史の勉強が始まるとは思ってもみなかった。
今アルトーレ王国の四……五代? どっちだっけ。そのくらいの国王の話まで来たから、確かアスタロウが七……
「勇者様! ちゃんと聞いてますか? 寝ないでくださいね!!」
うお危ねえ! 今俺もしかして寝てたのか? 全然自覚なかった。
しかしまさか三日間ぶっ続けでこの世界のチュートリアルを受けることになるなんて……ん? おかしいな。これさっきも言った気がするな。
とにかく、途中食事やトイレは挟んでいるものの、三日間寝ずに講義を受け続けてるのでもう体力の限界だ。死ぬほど眠いし、椅子に座り続けているのでケツと腰が痛い。
いつの間にかアスタロウとイルウもいないし、宿屋の親父はめちゃ面倒くさそうな視線でこちらを見てたけど、二日目くらいからはもうあきらめの表情だ。
正直「出て行け」と言いたいんだろうけど、こんなんでもこの国の王女だからな。寒村の宿屋の親父が意見など出来る筈もなし。
「す……すまん、イリユース。もう体力の限界だ」
というかなんでお前は平気なんだ。どんな体力してやがる。化け物め。
「ええ? ここからがみんなも知ってる近代の話になってきて面白くなってくるのに……」
「みんなも知ってる」とか言われても俺は知らねえんだよ。面白くとも何ともねえよ勘弁してくれ。
「これに懲りたらもう二度とチュートリアルを馬鹿にするような発言はしない事ですね」
「わ、分かった。もう本当にチュートリアルを軽んじるような発言はしないから、寝かせてくれ」
「チュートリアルは素晴らしい!」
「ちゅ、チュートリアルは素晴らしい……」
「知は力なり」
「ちはちからなり……」
なんなんこれ。
もしかして俺今マインドコントロールされようとしてる?
もしくはもうされてる?
もうどっちでもいいから寝かせてくれ。俺はふらふらと宿屋の食堂を後にする。それにしても世の中「教えたがり」の人間は多いもんだが、まさかここまでの熱量を持っているとは。
自分の部屋の、ベッドまでの道程でなんとなくチュートリアルの内容を思い出す。
軽く要点を押さえると、女神と邪神は元々兄妹神らしい。ただ、この世界や人間を神が作ったという事ではなく、女神は人間の、邪神は魔族の後見人としてその生活を助けてやったんだそうだ。
さらにその後女神の側にはエルフやドワーフがつき、邪神側にはドラゴンや魔物がついて少しずつ勢力を拡大していったそうな。
元々女神と邪神は敵対していたわけじゃなかったけど、勢力を拡大するにつれてその生活圏が衝突する事態が起き、少しずつ仲が険悪になっていき、それに伴い暴力も発生する。まあ、この辺は人間同士でも同じだな。
かくして人間と魔族はそれぞれ背後に女神と邪神を控えて長い長い戦争に突入する、と。その先はまだ聞いてないけど、多分人間が女神に助けてくれるように嘆願して、聖剣が遣わされたんだろうな。
そのせっかくの女神の好意をあのアホ野郎はケツの穴にしまい込んだわけだ。ホント死ね。
『まあ大体そんなところです』
うお、女神か。いつも突然頭の中に話しかけてくるからびっくりするんだよな。ていうか本来お前がこの世界に送る前に事前にレクチャーしとくべき内容ちゃうんか。
お前が面倒くさがって放置したばっかりにここにきて一気に詰め込み式の教育されてんだぞ。
『あはは、面目ない』
全然悪いと思ってないなコイツ。
そもそも、なんか聞いた話を総合してみると、これって女神と邪神の代理戦争じゃないのか? って気がしてくるんだが?
もしかしたら神同士で戦争をすると互いに大きな痛手になる可能性があるから自分らで戦う代わりに人間と魔族を争わせて戦争ゲームしてるだけなんじゃないのか? もしそうだとしたら諸悪の根源はお前らなんじゃないのか?
『いやいやケンジさん、それはいくら何でも斜に構えすぎですよ』
どうだか。いまいちこの女信用ならないんだよな。人間なんて喋る将棋の駒くらいに考えてんじゃないの?
『私はあくまでも目にかけていた人間さん達がお願いしてくるからこそ、力を貸してあげているだけですから! そもそも私自身は邪神と敵対してませんし!』
ああ、そう言えば邪神とは兄妹関係なんだっけ? なんだよ妹系だったのかよこの女神。「おにいちゃん」って言ってみてよ。
『完全に寝不足テンションですね、ケンジさん』
うるせえなあんな責め苦を味わったんだから少しくらいいいことがあってもいいだろう。いいから「おにいちゃん」って言ってみろよ。
『もう……おにいちゃんのいじわる』
結構クるものがあるな、これは。
『割と本気でキモいです』
うるさい。俺はもう寝る。
ああ、眠い。ベッドの中に潜り込むとすぐに睡魔が襲ってきた。こういうのを「泥のように眠る」っていうんだろうな。意識を保てない。
次に意識が戻った時は朝の光の中、スズメ科の鳥の鳴き声が窓の外からチュンチュンと聞こえてきた。
「んん……」
ああ、よく寝た。
ベッドの中に異物感を感じる。なんだこれ? 俺抱き枕に抱き着いて寝てたのか? そんなもん寝るときにあったっけ?
「あ……ケンジ、起きたの?」
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俺の腕の中で眠そうに目をこすったのは、裸のイルウだった。
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