武装聖剣アヌスカリバー

月江堂

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第5章 ソロモンの悪魔

キャラ被り

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 魔王軍に所属し、その幹部でもある四天王の一人、ダークエルフのイルウ・レッフーサ。この女は(女じゃないが)俺に「罠に嵌まれ」と言ってきている。
 
 罠だと分かっててわざわざ嵌まりに行くのはダンジョンの壁に突き刺さってたお前とアンススくらいのもんだよ。
 
「いやあ、だってさ? ここでこうしてうだうだしてても話が進まないじゃん? それにどんな悪魔を召喚してるのか、興味ない? 大丈夫、ケンジならどんな奴が出てきてもどうせ楽勝だよ。私は魔王軍として勇者を誘き出す任務が達成できる。ケンジは一撃で悪魔を撃退する。カルナ=カルアの一人負け。ウィンウィンの関係じゃない?」
 
 興味ないなあ。
 
「興味はあるのう。他にも地獄の大公爵を召喚してるというし、悪魔の実力を測るいい機会かもしれん」
 
 余計なこと言うなよアスタロウ。罠に嵌まるのは俺なんだぞ。嵌まる奴の気にもなってみろ。
 
 しかし、確かにアスタロウの言う事にも一理あるなあ……ん? なんだ? イルウの奴、妙にアスタロウの方に熱い視線を送って。なんか、熱心に観察してる、って感じだな。俺は諦めてこのおっさんに乗り換える気か?
 
「……悪魔の事が、気になる?」
 
 今度は明らかに俺じゃなくアスタロウに訊ねてる。何を考えてるんだろう。
 
「じゃあ、特別サービスで私が知ってるソロモン72柱の事を教えてあげるから、一緒に来てくれないかなあ?」
 
 そう言ってイルウはどこにしまっていたのか分厚い本をどさりとテーブルの上に置いた。
 
 ソロモン72柱ねえ。有名ではあるけど、細かいことは知らないなあ。ソロモンって地球の地名かなんかじゃなかった? 
 ※72柱の悪魔を使役したと言われる古代イスラエル国王の名。地名は関係ない。
 
 異世界から悪魔を呼ぶ、かあ。思えば悪魔は地球から見てもこの世界から見ても異世界にいる住人って事になるのかな。
 
 罠に嵌まりに行くかどうかはともかくとして、俺はテーブルを挟んで魔導書を開き、その中身を確認した。ソロモン72柱って言えば名前は有名だけど、その中にどんな悪魔がいるのかは実は全く知らないんだよな。有名なのとかいるんだろうか。
 
 魔導書に書かれているのは当然こちらの世界の文字であり、はっきり言って俺には全く読めない。しかし一つ一つに悪魔のイラストや想像図なんかが数枚書かれており、イメージがしやすい。1ページずつ、丁寧にイルウが説明をしてくれた。
 
 しかし俺達は本を読み進めるにつれて頭を抱えることになった。
 
「これは……」
「本当に、こんなことが……?」
「恐ろしいのう」
 
 三者三様に戸惑いの声を上げる。無理もない。俺達は恐ろしい悪魔の実態を知ってしまったのだ。
 
「めっちゃキャラ被りしてるやん」
「むう、これがキャラ被りを気にしなかった時代の創作かのう」
「ちょっ、創作とか言わないでよ」
 
 元々こうやって一冊にまとめて紹介されることを想定してないんだろうか。と言ってもイルウの言う通り創作じゃないならたまたま特徴が被っただけかもしれないけどさ。
 
「この、アガレスとヴァサゴっての、『ワニに乗った老人』って、そんなビジュアルで被ることある? 普通」
「こっちのサレオスってのもワニに乗ってるらしいのう」
「もしかしたら魔界じゃワニは割とポピュラーな乗り物なのかも……」
 
 ワニやぞ?
 
 乗り心地めっちゃ悪いやろ。跨ったら地面に足がつくし。
 
 こんなんもし魔界で四天王決めよ、ってなった時アガレスとヴァサゴとサレオスが選ばれたら残りの一人めっちゃ浮くやん。
 
 「なんで俺以外全員ワニ乗ってんの?」ってなるやん。「俺もワニ乗らなあかんかなあ」ってなるやん。
 
 ほんで最後の一人がこの「ツグミの姿をしてる」カイムって奴だったら、ワニに乗った鳥になるやん。もうそんなん悪魔じゃなくてただの雄大な自然の姿やん。ワニの歯の掃除をする鳥やん。
 
「このオセとフラウロスとシトリーというのも三人とも豹の姿じゃのう」
 
 こいつらが四天王になったらまた最後の一人が浮くやん。もし勇者が魔王討伐に来てこいつら含む四人が前に立ちはだかったら戸惑うやん。「え、なんか……豹の群れがおる」ってなるやん。「なんか知らんけど豹の群れに誰か襲われてる」ってなるやん。
 
「ライオンも多いよね」
 
 ブルソンとサブナックがライオン頭の男、ヴィネとアロケルがライオンの獣人、オリアスがライオン、さらにヴァプラが空飛ぶライオン。ライオン多すぎだろ。
 
「まあ、強そうだもんね。ライオンって」
 
 もうなんかイルウまでちょっとバカにした感じで話すようになってる。
 
「このガミジンの『青ざめた馬の姿』ってなに?」
 
 俺が笑いをこらえながら訊ねるとイルウは思わず噴き出してしまった。
 
「ぷふっ、青ざめないよね、馬」
 
 青ざめても分からないしな。っていうかずっと青ざめてんのか? この悪魔は。
 
「このビフロンスとかいう奴の『墓場をコントロールする能力』ってのはなんなんじゃ」
 
「そんなにコントロールする要素あるか? 墓場って」
 
「あれじゃない? お供え物を片づけたり、枯れちゃった花を交換したりするんじゃない?」
 
 ただの管理人じゃん。
 
「墓の上に火を灯したり、死体を入れ替える……」
 
 魔界の貴族のはずなのに悪戯好きの妖精みたいな事すんのね。
 
「あとなんか、公爵と王がやたら多くね?」
 
 魔界はめちゃくちゃ国がたくさんあるのか? それとも持ち回り制でやってんのか? 「あ~、俺今年公爵か~、この間やったばっかだと思ったのにもう回ってきたのか~」とか言うのか? 町内会の役員かよ。
 
「この本面白いのう」
 
「なんかいつまでも読んでられるわ。俺、字読めないけど」
 
 ― 三日後 ―
 
「じゃあブエルのカードを場に残してターンエンド」
 
「残念、バティンのカードが伏せてあったんで場のカードは使用不能になりまーす」
 
「うわマジか、やられた」
 
 ここ数日しているように今日も三人でワイワイやっていると、宿のドアがコンコンとノックされた。誰だろう? 誰か訪ねてくるような用事なんかあったか?
 
「ちょっ……ちょっといい?」
 
 数センチだけ明けられたドアのすき間から見えたのは浅黒い肌の男。誰だ?
 
「ちょっとイルウだけ……いい?」
 
 あ~、魔王軍四天王のカルアミルクとかいう奴か。イルウは気まずそうに呼び出されて廊下に行ってしまった。ドアの向こうから小さく声が聞こえてくる。
 
「なにしてんの? 自分ら」

「いや……まあ、ちょっと」

「カードで……なに? 遊んでんの?」

「いやなんか、トレーディングカードにしたら面白そうだな、って……話になって」

「あのさあ……もう一週間も待ってんのね?」
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