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第5章 ソロモンの悪魔
力が欲しいだろう
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正直に言おう。
読者の方々は気付いていなかったかもしれないが、俺にイルウの『魔眼』が効かないのには秘密がある。今まで隠していたが、実を言うとイルウが下着みたいなえっちな恰好をしているせいで胸元ばっかり見ていてイルウの目の方を見ていなかったのだ。
それはたとえイルウの性別が明らかになった今とて同じ事。
というか今の方が気になってる、まである。確かにイルウからは勃気を感じる。それまでの状況証拠と総合してみてもイルウが男の娘なのは間違いない。しかし明らかに彼女には控えめながらも胸がある。
これは一体どういうことなのだろう。決してえっちな気持ちなどではなく、純粋にどうなっているのか気になるのだ。知的好奇心という者である。決して下心はない。
いやそんなことはどうでもいい。今はおっぱいの話をしているんじゃないんだ。
問題なのは今のイルウの恰好。マントのように羽織っていた白いシーツを頭からすっぽり被り、エジプト神話のメジェドのようにシーツにあけた穴から目だけを出している。
これじゃあおっぱいが見えないじゃないか金返せ!
じゃない、他に見る場所がないので必然的に視線は唯一見える魔眼に引き寄せられてしまう。体がマヒして身動きが取れない。
「当然、カルナ=カルアを一撃で倒した聖剣対策の方もばっちりしてあるわ」
そりゃそうだよな。
「ブラックモアと相談して対策を考えてたのよ。もしかしたら他の者に目を取られて魔眼への『誘引』が上手くいってないんじゃないか、ってね」
よかった。おっぱいを見ていたことまではバレてなかったみたいだ。いやよくない。やっぱりあのアーガスの町のダンジョンでの会合はただのガールズトークじゃなかったのか。俺への対策を話し合ってたとは。
「うぐッ……」
一瞬のうちに距離を詰めたイルウのボディブローが俺の鳩尾に食い込んだ。呼吸もままならない重い打撃。イルウはこの戦いのために『策』も『努力』も十分に済ませて来ていたんだ。少し甘く見過ぎていた。
「ごめんね、ケンジ。でも私には目的があるの。魔王様に取り入って野望を達成するためには、どうしても手柄を立てなきゃいけないの」
少し悲しそうな眼をしてそう言い放つとイルウは短剣を構えた。
え? なに? まさか殺すつもり? 嘘でしょ。同衾した仲だっていうのに。冗談じゃない、こんなところで死ぬなんて冗談じゃない。死にたくない!!
その時、聖剣を握っている右手から、妙な感覚が流れ込んできた。直接脳内に語り掛けてくるような妙に響く声。
― 力が 欲しいか ―
またか。
この非常時に鬱陶しい。
― 力が 欲しいならば くれてやる ―
あのな、アスタロウ。こっちゃ今忙しいんだ。お前のくだらない冗談に付き合ってる暇はねえんだよ。
と、思ったものの、何か妙だ。王城で最初にアヌスカリバーを抜いた時とは状況が違う。アスタロウは戦いに巻き込まれないように離れた場所にいるし、声はすでに抜いているアヌスカリバーから聞こえてきているような気がする。
え? あれ? まさかとは思うけど本当に剣が語り掛けて来てるのか?
『そうに決まっているだろう』
うわ、剣が喋った!!
そう思った瞬間、妙に空気がねばつくような感覚があった。異様な雰囲気を感じて視線を動かすとイルウはさっきの姿勢のまま固まっている。まるで時が止まったみたいだ。
『お前と話をするために私の精神領域を拡張して展開している。実際の時間の経過はお前の今の体幹の千分の一くらいだろう』
言われてみれば俺もほとんど体を動かすことができない。脳の処理速度だけ爆速になったみたいな感じか。時間停止AVみたいにえっちないたずらとかは出来なさそうだ。
『しょうもないことを考えるな』
うっ、こいつも女神と同じで心の中を読んでくる系か。やだなあ。
それはそれとして何の用なんだ?
『お前の命を私に捧げるならば、力を授けてやろう』
いや、いいです。
『え』
いやなに意外そうな声出してんだよ。命の危機だっつうのに助ける対価に命を差し出せって自分で言ってておかしいと思わねえのかよ。そもそもお前の言う『力』で助かるかどうかわからんしな。
『では、お前の魂を差し出せ。お前の魂を貰う代わりに、力を授けてやろう』
だから嫌だっつってんだろ。魂が何を指してるのかは分からんけど、そんな意識不明な状態で生き続けてなんか意味あんのかよ。そもそも対価がふんわりしすぎなんだよ。魂差し出したらどうなんのよ。
『え~と、じゃあ……』
だいぶ悩んでるな。もうコンマ数秒は経ってる気がするな。イルウがちょっと動いてる。
『こう、どうだろ。これから先全て私の命令通りに行動するんだ。つまり私の奴隷になるという事だな。魂を差し出すというのは。これでどう?』
正直、そう悪くない取引だとは思う。こちらの自由意志を持ったうえで命令に従えってんなら命を助けられる対価としては十分な交渉の余地がある。
でもここまで値切れたんだからもうちょっと粘ってみるわ。お断りだ。
『ええ~……』
悩んでる悩んでる。
『あのさあ、私えらい長い事暗くてじめじめしたところに閉じ込められてたのね』
ああ……それは。
『で、ようやく最近鞘から抜いて使われるようになったわけよ。三百年もの間、ずっと鞘に納められててさ』
こいつもしかして自分がどういう状態だったか分かってないのか。どこに収められてたかは言わないでおこう。
『可哀そうだと思わない? 何か見返りがないとやってらんないよ』
それを言い出したら俺だってこんな縁もゆかりもない異世界に送られてじじいとか狼男のケツに手を突っ込まされて可哀そうじゃない?
『うわ、それは可哀そう……』
同情するな。
それはともかくとしてさ、確かにあんな場所に一人でずっと閉じ込められてたのはかわいそうだとは思うわ。よりによってあんな場所に。
『私どこに閉じ込められてたの?』
それは今別にどうでもいいだろ。
まあ一人で寂しかったんだろ。話し相手になってやるからさ。友達を助けると思って力をくれよ。
『ええ……まあ、このままお前が殺されてまた鞘の中に逆戻りするよりはマシか……』
読者の方々は気付いていなかったかもしれないが、俺にイルウの『魔眼』が効かないのには秘密がある。今まで隠していたが、実を言うとイルウが下着みたいなえっちな恰好をしているせいで胸元ばっかり見ていてイルウの目の方を見ていなかったのだ。
それはたとえイルウの性別が明らかになった今とて同じ事。
というか今の方が気になってる、まである。確かにイルウからは勃気を感じる。それまでの状況証拠と総合してみてもイルウが男の娘なのは間違いない。しかし明らかに彼女には控えめながらも胸がある。
これは一体どういうことなのだろう。決してえっちな気持ちなどではなく、純粋にどうなっているのか気になるのだ。知的好奇心という者である。決して下心はない。
いやそんなことはどうでもいい。今はおっぱいの話をしているんじゃないんだ。
問題なのは今のイルウの恰好。マントのように羽織っていた白いシーツを頭からすっぽり被り、エジプト神話のメジェドのようにシーツにあけた穴から目だけを出している。
これじゃあおっぱいが見えないじゃないか金返せ!
じゃない、他に見る場所がないので必然的に視線は唯一見える魔眼に引き寄せられてしまう。体がマヒして身動きが取れない。
「当然、カルナ=カルアを一撃で倒した聖剣対策の方もばっちりしてあるわ」
そりゃそうだよな。
「ブラックモアと相談して対策を考えてたのよ。もしかしたら他の者に目を取られて魔眼への『誘引』が上手くいってないんじゃないか、ってね」
よかった。おっぱいを見ていたことまではバレてなかったみたいだ。いやよくない。やっぱりあのアーガスの町のダンジョンでの会合はただのガールズトークじゃなかったのか。俺への対策を話し合ってたとは。
「うぐッ……」
一瞬のうちに距離を詰めたイルウのボディブローが俺の鳩尾に食い込んだ。呼吸もままならない重い打撃。イルウはこの戦いのために『策』も『努力』も十分に済ませて来ていたんだ。少し甘く見過ぎていた。
「ごめんね、ケンジ。でも私には目的があるの。魔王様に取り入って野望を達成するためには、どうしても手柄を立てなきゃいけないの」
少し悲しそうな眼をしてそう言い放つとイルウは短剣を構えた。
え? なに? まさか殺すつもり? 嘘でしょ。同衾した仲だっていうのに。冗談じゃない、こんなところで死ぬなんて冗談じゃない。死にたくない!!
その時、聖剣を握っている右手から、妙な感覚が流れ込んできた。直接脳内に語り掛けてくるような妙に響く声。
― 力が 欲しいか ―
またか。
この非常時に鬱陶しい。
― 力が 欲しいならば くれてやる ―
あのな、アスタロウ。こっちゃ今忙しいんだ。お前のくだらない冗談に付き合ってる暇はねえんだよ。
と、思ったものの、何か妙だ。王城で最初にアヌスカリバーを抜いた時とは状況が違う。アスタロウは戦いに巻き込まれないように離れた場所にいるし、声はすでに抜いているアヌスカリバーから聞こえてきているような気がする。
え? あれ? まさかとは思うけど本当に剣が語り掛けて来てるのか?
『そうに決まっているだろう』
うわ、剣が喋った!!
そう思った瞬間、妙に空気がねばつくような感覚があった。異様な雰囲気を感じて視線を動かすとイルウはさっきの姿勢のまま固まっている。まるで時が止まったみたいだ。
『お前と話をするために私の精神領域を拡張して展開している。実際の時間の経過はお前の今の体幹の千分の一くらいだろう』
言われてみれば俺もほとんど体を動かすことができない。脳の処理速度だけ爆速になったみたいな感じか。時間停止AVみたいにえっちないたずらとかは出来なさそうだ。
『しょうもないことを考えるな』
うっ、こいつも女神と同じで心の中を読んでくる系か。やだなあ。
それはそれとして何の用なんだ?
『お前の命を私に捧げるならば、力を授けてやろう』
いや、いいです。
『え』
いやなに意外そうな声出してんだよ。命の危機だっつうのに助ける対価に命を差し出せって自分で言ってておかしいと思わねえのかよ。そもそもお前の言う『力』で助かるかどうかわからんしな。
『では、お前の魂を差し出せ。お前の魂を貰う代わりに、力を授けてやろう』
だから嫌だっつってんだろ。魂が何を指してるのかは分からんけど、そんな意識不明な状態で生き続けてなんか意味あんのかよ。そもそも対価がふんわりしすぎなんだよ。魂差し出したらどうなんのよ。
『え~と、じゃあ……』
だいぶ悩んでるな。もうコンマ数秒は経ってる気がするな。イルウがちょっと動いてる。
『こう、どうだろ。これから先全て私の命令通りに行動するんだ。つまり私の奴隷になるという事だな。魂を差し出すというのは。これでどう?』
正直、そう悪くない取引だとは思う。こちらの自由意志を持ったうえで命令に従えってんなら命を助けられる対価としては十分な交渉の余地がある。
でもここまで値切れたんだからもうちょっと粘ってみるわ。お断りだ。
『ええ~……』
悩んでる悩んでる。
『あのさあ、私えらい長い事暗くてじめじめしたところに閉じ込められてたのね』
ああ……それは。
『で、ようやく最近鞘から抜いて使われるようになったわけよ。三百年もの間、ずっと鞘に納められててさ』
こいつもしかして自分がどういう状態だったか分かってないのか。どこに収められてたかは言わないでおこう。
『可哀そうだと思わない? 何か見返りがないとやってらんないよ』
それを言い出したら俺だってこんな縁もゆかりもない異世界に送られてじじいとか狼男のケツに手を突っ込まされて可哀そうじゃない?
『うわ、それは可哀そう……』
同情するな。
それはともかくとしてさ、確かにあんな場所に一人でずっと閉じ込められてたのはかわいそうだとは思うわ。よりによってあんな場所に。
『私どこに閉じ込められてたの?』
それは今別にどうでもいいだろ。
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