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第5章 ソロモンの悪魔
男の娘
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「さようなら、ケンジ。あなたの事は好きだったけど、私には大いなる目的があるの」
「オオッ!!」
短剣を振りかぶって容赦なく切りかかってくるイルウ。しかしすんでのところで俺は体の自由を取り戻し、その斬撃を聖剣で受けることができた。
刃で短剣を受けると、短剣の方が真っ二つになり、刃先が地面に叩きつけられた。これ、重量のある武器を受けるときは気を付けないと危ないな。イルウは予想外の事態に狼狽しながらもバックステップで距離を取る。
「そ、そんな馬鹿な……なぜ!?」
結構緊迫した場面ではあるんだけど、イルウがオバケのQ太郎みたいな格好してるせいでいまいち緊張感が無いな。
それはともかく、危機は去ったのか? なんで体の自由が戻ったんだ?
「くそっ、もう一度!!」
またもイルウの赤い目が怪しく光る。なすすべもなく俺の視線は彼女の瞳に注がれてしまうが……
『大丈夫だ。聖剣の前に切れぬものはない。あの女とお前の間に交わされている呪術的繋がりを断つすることができる』
まさに今回の件にはおあつらえ向きの能力だったって事か。
諦め悪く折れた短剣で切りかかってきたイルウの斬撃を躱して、彼女の眼前に剣の切っ先を突き付ける。
「な、なぜ……」
「前にも言ったはずだぜ。勇者に同じ攻撃は二度も通用しない、ってな」
「くっ、殺せ」
くっころ来ました。
とはいうもののね。さすがに殺す気にはなれんよ。裏切られて気がして悲しいけれども、よくよく考えてみたら最初っから徹頭徹尾敵同士で裏切られてもいないし。どちらにしろもう戦意を失った相手を殺すなんて出来るわけないだろ。
「さっき言ってたイルウの『目的』ってのはなんなんだ? 村を人間達に焼かれたからじゃないのか?」
「別に……仇なんかとる気はない。私は村でも差別されていたから、むしろせいせいしたと思ってるわ」
なんか複雑な理由がありそうだな、とも思ったがそこまででもないか。よくよく考えてみれば現代日本よりも個人の人権が尊重されてない世界で『男の娘』なんて存在が許容されにくいってのは当たり前と言えば当たり前か。
しかもエルフなんていう極めて閉鎖的な社会環境で暮らしてるコミュニティに於いて異分子がどういう扱いを受けていたかは想像に難くない。
「だとしたらなんで魔王に協力してんの?」
「それは……私の性別に関係がある」
ん? どういうことだ? 結局そこに戻ってくるのか。イルウが男の娘なのと魔王に何か関係が?
「実を言うと……私は男の娘なんだ」
知ってるよ。その先を説明してくれよ。
「男の娘というのは『少女のような外見をした少年』を表す言葉で、私の性自認が……」
だからその辺はどうでもいいって。知ってるから。しかしやっぱり何かその辺が関係してるのか。
『ふむ、なるほど。ならば私がどうにかできるかもしれないわよ』
「うおびっくりした!!」
「どうしたの? ケンジ」
急に聖剣が喋るから驚いて声を出してしまった。しかしイルウには聞こえてないようで疑問符を浮かべている。俺はこの聖剣に意思があり、俺にだけ語り掛けてくること、そして不思議な力を持っていることをイルウに話した。
「どうにかできる、って……私の性別を変えられるって事……?」
「マジなのかアヌスカリバー。本当にそんなことできるのか?」
『もちろんだ。私の聖剣としての力を使えばちょっと待て』
にわかには信じられないけどついさっきイルウの魔眼の力をキャンセルするところを見せられたばかりだからな。そんな能力があっても不思議はないのかも。
『いやちょっと待て。アヌスカリバーってなんだ』
「え?」
『私の事か? 私はエクスカリバーって名前だったはずだが?』
「え? ごめん、なんて?」
『いや聞こえてるだろ。アヌスカリバーって何って聞いてんの』
「ケンジ、聖剣はなんて?」
「ごめん、なんか通信状態が悪いみたいで聞こえなくなっちゃった」
『おい! 聞こえないふりするな!! アヌスカリバーってなんだ!!』
「勇者よ、何か異常があったのか? 一旦聖剣を鞘の中に戻すか?」
来やがったよ元凶が。
誰のためにごまかしてやってると思ってんだアスタロウ。
ここまでに分かったこと二つ。声と喋り方からして、聖剣はどうやら女性じゃないかという事。もう一つ、どうやら聖剣は視力を持たず、自分がどこに収められていたかは知らないようだという事。
そんな状態の女性がよ? 中年男性のアナルの中に収められてます。これからも使わないときはそこに収めようと思います。なんて耐えられると思うか?
「まあ、剣の名前に関してはいいじゃん。『エクス』がエヌス、エァヌス、アヌスって訛って変化してきたんだよ、長い時代の中でさ」
『そんなことあるか? いまいち納得いかないんだけど、まあいいか』
「そんなことより本当にイルウの性別を変えるなんてことができるのか? さっきみたいに『呪術的繋がりを断つ』特殊能力でそんなことができるのか?」
『もちろん』
すごいぞ。自然とイルウの顔にも喜びの色が浮かぶ。
『私の刀身でそいつのイチモツを切ってやればポロリと落ちるわよ』
「物理じゃねーか!!」
違うんだよそうじゃねーんだよ!! そんな力業で解決するんならその辺にあるナイフでやっても変わんねーわ!!
普通そんな自信満々に言うなら聖剣の持つ不思議な力でなんかいいカンジに出来るのかと思うじゃねーか!! 普通に刃物としての能力じゃねーか!!
「ど、どうなの、ケンジ? 聖剣様はできるって?」
あーあ、どうすんだよこれもう。イルウがめちゃめちゃ期待に満ち満ちた表情でこっちを見てるじゃねえか。聖剣『様』とか言ってるぞ。
気持たせしてしまって非常に心苦しいけど、これ俺がイルウに説明するしかないか。聖剣の声は俺にしか聞こえねえし。
「……というわけで、すまん。イルウ。できないらしい」
「ああ、そう。ふーん。まあ、期待はしてなかったけど。所詮は刃物ね」
『聖剣様』から『刃物』に格下げだ。
「じゃあずっと抜き身で持ってても危ないし、早くアスタロウのアヌスにしまった方がいいんじゃない?」
「それもそうだな」
『ちょ、ちょっと待て! アヌスにしまう!? どういう意味よ!! なんでアヌスカリバーなんて呼ばれてんのよ!! 今度こそ答えてよ!!』
「オオッ!!」
短剣を振りかぶって容赦なく切りかかってくるイルウ。しかしすんでのところで俺は体の自由を取り戻し、その斬撃を聖剣で受けることができた。
刃で短剣を受けると、短剣の方が真っ二つになり、刃先が地面に叩きつけられた。これ、重量のある武器を受けるときは気を付けないと危ないな。イルウは予想外の事態に狼狽しながらもバックステップで距離を取る。
「そ、そんな馬鹿な……なぜ!?」
結構緊迫した場面ではあるんだけど、イルウがオバケのQ太郎みたいな格好してるせいでいまいち緊張感が無いな。
それはともかく、危機は去ったのか? なんで体の自由が戻ったんだ?
「くそっ、もう一度!!」
またもイルウの赤い目が怪しく光る。なすすべもなく俺の視線は彼女の瞳に注がれてしまうが……
『大丈夫だ。聖剣の前に切れぬものはない。あの女とお前の間に交わされている呪術的繋がりを断つすることができる』
まさに今回の件にはおあつらえ向きの能力だったって事か。
諦め悪く折れた短剣で切りかかってきたイルウの斬撃を躱して、彼女の眼前に剣の切っ先を突き付ける。
「な、なぜ……」
「前にも言ったはずだぜ。勇者に同じ攻撃は二度も通用しない、ってな」
「くっ、殺せ」
くっころ来ました。
とはいうもののね。さすがに殺す気にはなれんよ。裏切られて気がして悲しいけれども、よくよく考えてみたら最初っから徹頭徹尾敵同士で裏切られてもいないし。どちらにしろもう戦意を失った相手を殺すなんて出来るわけないだろ。
「さっき言ってたイルウの『目的』ってのはなんなんだ? 村を人間達に焼かれたからじゃないのか?」
「別に……仇なんかとる気はない。私は村でも差別されていたから、むしろせいせいしたと思ってるわ」
なんか複雑な理由がありそうだな、とも思ったがそこまででもないか。よくよく考えてみれば現代日本よりも個人の人権が尊重されてない世界で『男の娘』なんて存在が許容されにくいってのは当たり前と言えば当たり前か。
しかもエルフなんていう極めて閉鎖的な社会環境で暮らしてるコミュニティに於いて異分子がどういう扱いを受けていたかは想像に難くない。
「だとしたらなんで魔王に協力してんの?」
「それは……私の性別に関係がある」
ん? どういうことだ? 結局そこに戻ってくるのか。イルウが男の娘なのと魔王に何か関係が?
「実を言うと……私は男の娘なんだ」
知ってるよ。その先を説明してくれよ。
「男の娘というのは『少女のような外見をした少年』を表す言葉で、私の性自認が……」
だからその辺はどうでもいいって。知ってるから。しかしやっぱり何かその辺が関係してるのか。
『ふむ、なるほど。ならば私がどうにかできるかもしれないわよ』
「うおびっくりした!!」
「どうしたの? ケンジ」
急に聖剣が喋るから驚いて声を出してしまった。しかしイルウには聞こえてないようで疑問符を浮かべている。俺はこの聖剣に意思があり、俺にだけ語り掛けてくること、そして不思議な力を持っていることをイルウに話した。
「どうにかできる、って……私の性別を変えられるって事……?」
「マジなのかアヌスカリバー。本当にそんなことできるのか?」
『もちろんだ。私の聖剣としての力を使えばちょっと待て』
にわかには信じられないけどついさっきイルウの魔眼の力をキャンセルするところを見せられたばかりだからな。そんな能力があっても不思議はないのかも。
『いやちょっと待て。アヌスカリバーってなんだ』
「え?」
『私の事か? 私はエクスカリバーって名前だったはずだが?』
「え? ごめん、なんて?」
『いや聞こえてるだろ。アヌスカリバーって何って聞いてんの』
「ケンジ、聖剣はなんて?」
「ごめん、なんか通信状態が悪いみたいで聞こえなくなっちゃった」
『おい! 聞こえないふりするな!! アヌスカリバーってなんだ!!』
「勇者よ、何か異常があったのか? 一旦聖剣を鞘の中に戻すか?」
来やがったよ元凶が。
誰のためにごまかしてやってると思ってんだアスタロウ。
ここまでに分かったこと二つ。声と喋り方からして、聖剣はどうやら女性じゃないかという事。もう一つ、どうやら聖剣は視力を持たず、自分がどこに収められていたかは知らないようだという事。
そんな状態の女性がよ? 中年男性のアナルの中に収められてます。これからも使わないときはそこに収めようと思います。なんて耐えられると思うか?
「まあ、剣の名前に関してはいいじゃん。『エクス』がエヌス、エァヌス、アヌスって訛って変化してきたんだよ、長い時代の中でさ」
『そんなことあるか? いまいち納得いかないんだけど、まあいいか』
「そんなことより本当にイルウの性別を変えるなんてことができるのか? さっきみたいに『呪術的繋がりを断つ』特殊能力でそんなことができるのか?」
『もちろん』
すごいぞ。自然とイルウの顔にも喜びの色が浮かぶ。
『私の刀身でそいつのイチモツを切ってやればポロリと落ちるわよ』
「物理じゃねーか!!」
違うんだよそうじゃねーんだよ!! そんな力業で解決するんならその辺にあるナイフでやっても変わんねーわ!!
普通そんな自信満々に言うなら聖剣の持つ不思議な力でなんかいいカンジに出来るのかと思うじゃねーか!! 普通に刃物としての能力じゃねーか!!
「ど、どうなの、ケンジ? 聖剣様はできるって?」
あーあ、どうすんだよこれもう。イルウがめちゃめちゃ期待に満ち満ちた表情でこっちを見てるじゃねえか。聖剣『様』とか言ってるぞ。
気持たせしてしまって非常に心苦しいけど、これ俺がイルウに説明するしかないか。聖剣の声は俺にしか聞こえねえし。
「……というわけで、すまん。イルウ。できないらしい」
「ああ、そう。ふーん。まあ、期待はしてなかったけど。所詮は刃物ね」
『聖剣様』から『刃物』に格下げだ。
「じゃあずっと抜き身で持ってても危ないし、早くアスタロウのアヌスにしまった方がいいんじゃない?」
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