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第5章 ソロモンの悪魔
検証作業
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なぜ私がそこまでおっぱいに拘るのか、疑問に思う方もいるかもしれない。しかしそれは私にだって分からないのだ。分からなくとも、知らなければいけないという事もある。
もう少しだけお付き合いいただきたい。これだけ聞いたら絶対アスタロウ助けに行くから。
「たしかに見た目では胸があるように見えるかもしれないけど、実際には、ないの」
どういうことだ。禅問答か。
「私は魔力を消費して、幻術を使って胸があるように見せかけてるだけだから、実際には胸はないわ。触ってみれば分かるけどね」
んだよ見た目だけで実際には無いって事か。ホログラフィーみたいなもんか。聞いて損した。聞かなきゃよかったわ。
もうこんなとこにいても時間の無駄だ。早くカルアミルクを追おう。悪魔を召喚されたら面倒だ。まだ数分しか経ってないはず。すぐに追えば間に合う。
すぐにイルウをスルーして廊下の奥に進もうとしたが、しかし彼女は俺を呼び止めた。
「試しに触ってみる?」
なんだと。
「ケンジなら……触っても、いいよ」
なんだって。
『おい、落ち着けケンジ!! 男の胸よ!?』
黙っててくれないかアヌスカリバー、今大事なとこなんだ。
「触ってもいい、ということは……もしかして触ることが許されるということなのか!?」
『おい! さすがにそんなことしてる暇ないわよ!! ていうかもう一度言うけど男なのよ!!』
くそ、うるさい剣だな。男だとか女だとか、そんなことしてる暇ないだとか、そう言う問題じゃないんだ。
もし仮にここで胸を触らずにカルアミルクを追ったとして、だ。それは果たして俺であると言えるだろうか。
『言ってる意味が分かんない』
「触らない」という選択をもし取ったとしたらだ。それはすでにコバヤシケンジであるとは言えないんじゃないのか? ということだ。これはアイデンティティの問題なんだ。
なんか聖剣はまたごちゃごちゃと言い始めたが、俺はそれを無視してブラトップの上からそっとイルウの胸に両手を重ねた。
「あ……」
むう、確かに見た目から感じるような柔らかさはない。しかし、これは……どうなんだ? もう少し詳細に調べてみる必要がありそうだ。
― 四時間後 ―
『長すぎるわよ!!』
なにが?
聖剣がまたごちゃごちゃと何か言ってきたが俺は無視して検証作業に入る。
『無視するな! 四時間も男の乳揉んで! 何考えてんのよ!!』
うるさいな。気が散る。俺は再び両手で包み込むようにイルウの胸に触れた。
不思議だ。目で見ている像と実際の感触が合わない。
「あっ……ん……」
イルウが苦悶の声を上げるが、すまない、もう少しだけ耐えてくれ。もうちょっとで何か掴めそうな気がするんだ。
確かに女性の胸とは感触が違う気がする。これは筋肉なんだろうか。しかし別に硬いというわけではない。しなやかな弾力と生意気な反発力を併せ持ち、そして揉み続けていると何か少し硬い突起も感じる。
『本当にいい加減にしてほしいんだけど。ひたすら四時間もおっぱいを揉んでるだけの変態に付き合わされる私の身にもなってよね』
待ってくれアヌスカリバー。君は何か勘違いしてないか? おっぱいと言っても私はただ男の胸に触れているだけのはずだ。それを『変態行為』だと思う方がむしろ不純な目線で見ているんじゃないだろうか?
『とにかくいい加減にして。これ以上揉んでも何も分かんないでしょ?』
ううむ、確かに。
言われてみれば、よくよく考えてみたら俺はそもそも女性の胸を触ったことがないのでいくらイルウの胸を揉み続けても違いなど分かるはずがなかった。
『じゃあなんで揉んでたのよ!!』
「ケ、ケンジ……ちょっと、そろそろ……」
む、久しぶりにあえぎ声以外のイルウの声を聞いた気がする。
「さすがに四時間ともなると、揉まれてるだけの私も体力が……」
「それもそうだな。一旦休憩を取ろうか」
『一旦、って! まだ続ける気なの!?』
何を言ってるんだアヌスカリバー。まだすべての謎が解き明かされたわけではない。そもそも、俺がイルウの胸を触っている理由は……
……理由は、なんだっけ。
俺は、なんでこんなことをしてるんだ。
なぜ、こんな無駄な時間を。
イルウは、相当に疲れてしまったのか、その場で廊下の床にへたり込んで座っている。まあ、見た目には確かに少女にしか見えないんだが、幻術によって胸を女性らしく見せていることは分かった。
そして実際に触覚によって確認した胸と、視覚によって確認できる胸に差異があることも分かった。間違いなく、イルウは男なんだ。
ではなぜ、俺は男の胸を四時間も、揉んでいたのか……?
何をしていたんだ、俺は。
そもそもなぜこんな流れになったんだっけ。
『カルナ=カルアとかいう奴の時間稼ぎでしょ。もうかっくじつに間に合わないわよ。五分時間稼ぎすればいいところを四時間も無駄に過ごしたんだから!』
そうだ、思い出したぞ。なんと言う事だ。俺は敵の罠にまんまとハマってしまったということなのか!?
「イルウ……俺を、罠に嵌めたな!?」
「え……いまさら?」
「普通に考えれば男同士で乳を揉むなどという行為を四時間も続けられるはずがない。まず間違いなくイルウが魅了か何かの能力を使ったに違いない」
「そんな能力ないけど……」
「くっ……」
俺は廊下の先を見つめる。カルアミルクが消えていった方向だ。
「まだ……間に合うか……ッ!?」
『間に合ってたまるか』
そしてまた振り返ってイルウの方を見る。
「どうせ間に合わないなら、もうちょっとだけ揉んでから行くか」
「勘弁して」
『勘弁して』
もう少しだけお付き合いいただきたい。これだけ聞いたら絶対アスタロウ助けに行くから。
「たしかに見た目では胸があるように見えるかもしれないけど、実際には、ないの」
どういうことだ。禅問答か。
「私は魔力を消費して、幻術を使って胸があるように見せかけてるだけだから、実際には胸はないわ。触ってみれば分かるけどね」
んだよ見た目だけで実際には無いって事か。ホログラフィーみたいなもんか。聞いて損した。聞かなきゃよかったわ。
もうこんなとこにいても時間の無駄だ。早くカルアミルクを追おう。悪魔を召喚されたら面倒だ。まだ数分しか経ってないはず。すぐに追えば間に合う。
すぐにイルウをスルーして廊下の奥に進もうとしたが、しかし彼女は俺を呼び止めた。
「試しに触ってみる?」
なんだと。
「ケンジなら……触っても、いいよ」
なんだって。
『おい、落ち着けケンジ!! 男の胸よ!?』
黙っててくれないかアヌスカリバー、今大事なとこなんだ。
「触ってもいい、ということは……もしかして触ることが許されるということなのか!?」
『おい! さすがにそんなことしてる暇ないわよ!! ていうかもう一度言うけど男なのよ!!』
くそ、うるさい剣だな。男だとか女だとか、そんなことしてる暇ないだとか、そう言う問題じゃないんだ。
もし仮にここで胸を触らずにカルアミルクを追ったとして、だ。それは果たして俺であると言えるだろうか。
『言ってる意味が分かんない』
「触らない」という選択をもし取ったとしたらだ。それはすでにコバヤシケンジであるとは言えないんじゃないのか? ということだ。これはアイデンティティの問題なんだ。
なんか聖剣はまたごちゃごちゃと言い始めたが、俺はそれを無視してブラトップの上からそっとイルウの胸に両手を重ねた。
「あ……」
むう、確かに見た目から感じるような柔らかさはない。しかし、これは……どうなんだ? もう少し詳細に調べてみる必要がありそうだ。
― 四時間後 ―
『長すぎるわよ!!』
なにが?
聖剣がまたごちゃごちゃと何か言ってきたが俺は無視して検証作業に入る。
『無視するな! 四時間も男の乳揉んで! 何考えてんのよ!!』
うるさいな。気が散る。俺は再び両手で包み込むようにイルウの胸に触れた。
不思議だ。目で見ている像と実際の感触が合わない。
「あっ……ん……」
イルウが苦悶の声を上げるが、すまない、もう少しだけ耐えてくれ。もうちょっとで何か掴めそうな気がするんだ。
確かに女性の胸とは感触が違う気がする。これは筋肉なんだろうか。しかし別に硬いというわけではない。しなやかな弾力と生意気な反発力を併せ持ち、そして揉み続けていると何か少し硬い突起も感じる。
『本当にいい加減にしてほしいんだけど。ひたすら四時間もおっぱいを揉んでるだけの変態に付き合わされる私の身にもなってよね』
待ってくれアヌスカリバー。君は何か勘違いしてないか? おっぱいと言っても私はただ男の胸に触れているだけのはずだ。それを『変態行為』だと思う方がむしろ不純な目線で見ているんじゃないだろうか?
『とにかくいい加減にして。これ以上揉んでも何も分かんないでしょ?』
ううむ、確かに。
言われてみれば、よくよく考えてみたら俺はそもそも女性の胸を触ったことがないのでいくらイルウの胸を揉み続けても違いなど分かるはずがなかった。
『じゃあなんで揉んでたのよ!!』
「ケ、ケンジ……ちょっと、そろそろ……」
む、久しぶりにあえぎ声以外のイルウの声を聞いた気がする。
「さすがに四時間ともなると、揉まれてるだけの私も体力が……」
「それもそうだな。一旦休憩を取ろうか」
『一旦、って! まだ続ける気なの!?』
何を言ってるんだアヌスカリバー。まだすべての謎が解き明かされたわけではない。そもそも、俺がイルウの胸を触っている理由は……
……理由は、なんだっけ。
俺は、なんでこんなことをしてるんだ。
なぜ、こんな無駄な時間を。
イルウは、相当に疲れてしまったのか、その場で廊下の床にへたり込んで座っている。まあ、見た目には確かに少女にしか見えないんだが、幻術によって胸を女性らしく見せていることは分かった。
そして実際に触覚によって確認した胸と、視覚によって確認できる胸に差異があることも分かった。間違いなく、イルウは男なんだ。
ではなぜ、俺は男の胸を四時間も、揉んでいたのか……?
何をしていたんだ、俺は。
そもそもなぜこんな流れになったんだっけ。
『カルナ=カルアとかいう奴の時間稼ぎでしょ。もうかっくじつに間に合わないわよ。五分時間稼ぎすればいいところを四時間も無駄に過ごしたんだから!』
そうだ、思い出したぞ。なんと言う事だ。俺は敵の罠にまんまとハマってしまったということなのか!?
「イルウ……俺を、罠に嵌めたな!?」
「え……いまさら?」
「普通に考えれば男同士で乳を揉むなどという行為を四時間も続けられるはずがない。まず間違いなくイルウが魅了か何かの能力を使ったに違いない」
「そんな能力ないけど……」
「くっ……」
俺は廊下の先を見つめる。カルアミルクが消えていった方向だ。
「まだ……間に合うか……ッ!?」
『間に合ってたまるか』
そしてまた振り返ってイルウの方を見る。
「どうせ間に合わないなら、もうちょっとだけ揉んでから行くか」
「勘弁して」
『勘弁して』
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