武装聖剣アヌスカリバー

月江堂

文字の大きさ
87 / 123
第7章 それは美しき光の玉

遺跡ダンジョン

しおりを挟む
「うっ、中はダンジョンか」
 
 やはりというかなんというか。俺の理想としては普通の地球の遺跡みたいに中に入ったらすぐに本殿で、広い空間の中に伝説の剣かなんかが安置されてるとすげえ楽だったんだが、さすがにそうはいかない。
 
 扉を開いた先はすぐに先ほどの地下道よりは広いものの、石造りの通路だった。
 
 というかまあ、よくよく考えたら伝説の剣はもう間に合ってるわ。まあたくさんあっても困ることはないけどさ。いや、むしろ助かるか。もうアスタロウのケツに触らなくて済むんだから。
 
『浮気するつもり?』
 
 おっと、うっかり思考を読まれてしまった。というか久しぶりだな、アヌスカリバー。
 
『ねえやめてよ? もし新しい剣を手に入れたら私の事は用済みなんて言わないでね?』
 
 いつになくしおらしいが、お前が初対面の時に『命を差し出せ』って言ったことは俺忘れてねえからな。
 
『そんなの言葉の綾じゃない。そんなことより私達約束したでしょう? 他の剣に浮気なんかしたら許さないんだから』
 
 めんどくせぇ聖剣だな。そんなたいした約束したっけ? 昔のことなんであんま覚えてないんだけど。
 
『そんな! 生涯変わらぬ愛を誓い合ったっていうのに、忘れちゃったの?』
 
 こっちが覚えてないと思って適当こいてんじゃねえよ。たまに話し相手になってやるとか、そんなんだったろ。
 
 とりあえず聖剣の事は置いておこう。新しいのが見つかったらこいつはファーム落ちだ。
 
「そんなことより、ダンジョンの中なのに妙に明るいな」
 
「そんなことより?」
 
 それはこっちの話だけど。ランタンの光には負けるけど、ダンジョン内はうっすらと明るい。前のダンジョンで見た光る苔とも違うみたいだけど。
 
「これはもしかして、魔石ませきかのう?」
 
「魔石?」
 
 言われて周囲を見てみれば、何か明かりがあるわけじゃなくて通路内に於かれている彫像が光を放っているように見える。これが魔石?
 
「少しの魔力を供給することで光を放つ不思議な石よ」
 
 俺の質問にはアンススが答えた。しかしそんな便利なもんだっていうのに今まで王宮ですら見たこと無かったけど、なんでだ?

「どこから仕入れてるもんなのか知らんのじゃが、供給量が少なくて値が張るからのう。特別な理由がない限りあまり使われんのじゃ」

 ふうん、なるほどね。じゃあこの遺跡にふんだんに使われてるってことは、もしかしてグラントーレ原産の石だったり……

「ふふん」

 なんとなくちらりとアンススの方を見てみると「聞いてくれ」と言わんばかりのドヤ顔が目に入った。

「えと……アンスス魔石に詳しいの?」

「よくぞ聞いてくれた」

 そら「聞いてくれ」と言わんばかりの顔だったからな。

「魔国グラントーレから少量魔石を仕入れてアルトーレに独占的に売ってるのがまさに私なのよ」

 え……

「それは、もしかして……」

「アンスス、お主密輸しとるのか?」

 めちゃ金持ってるってこと?

 なんだろう。理由は分からないけど急にアンススが輝いて見えてきた気がする。今までさんざんバカだバカだと思ってきたけどさ、よくよく考えてみたらもし本当にバカだったら冒険者として生き残ってこれないよね?

 それに魔国に貨幣経済を持ち込んだり魔石の密輸したり、そういう学校の成績だけで測れない頭のよさとか、あるんじゃないかなあ。

「みつ……なに? そんな事よりこれだけ魔石が光ってるってことは、これに魔力を供給してる生き物がいるっていう事よ」

 ん? 露骨に話題を逸らしたけどどういう事?

「魔石は周囲の雰囲気から微量の魔力を吸収して光を発するから、このダンジョンの中に魔力を持った生き物がいるっていうことよ」

 こんなところにか? 入り口を見た感じじゃ数百年は人が入ってなさそうだったけど、別に入り口があるっていう事?

「宝物の番人として魔物を『飼って』るかもしれないわ」

 マジか。やっぱり普通の遺跡どころかダンジョンになってるってことは、そういう『障害物』もちゃんと備えてるのね。完全にこりゃ宝物が眠ってる気配がするわ。

 通路の先を見てみると、魔石の光は弱く、そして俺達の持っているカンテラの光もそう遠くまでは届かない。視界の確保はせいぜい20メートルといったところか。

 要するにほとんど自分達のいるところしか見えず、迷宮の全貌は文字通り杳として知れずというところだ。

 そんなところに、モンスターがいる……なんか、急に怖くなってきた。前にダンジョンで保護色を使って物陰から襲い掛かってくる巨大な虫とかいたし、そんなのがここにもいるのかもしれないのか。

 そう考えているとアンススが静かに人差し指を立てて自らの口の前に立てた。

 「静かにしろ」というサインか。そのまま彼女はゆっくりとしゃがんで、そのまま石床に耳を当てた。

「何か、いる……」

 気体より液体、液体より個体の方が音の振動がよく伝わる。

 頭は悪くとも、こういったことは経験則でアンススはよく理解している。おそらくは、床石に伝わる振動から足音を聞いているのだろう。

「体重は軽い……小柄な人型の魔物」

 小柄な人が頼まもの……っていうとゴブリンとか、コボルトとか、その辺の二足歩行のモンスターか? 多分たいしたことないだろうけどドラゴン〇ールのフ〇ーザ最終形態みたいなのもいないとは限らないからな。

「こっちに向かってるのか?」

 小さな声で問いかけると、アンススは床に耳をつけたまま静かに答える。

「こちらには……気付いてるみたいな足取り。真っ直ぐ向かってはこないけど、警戒しながら近づこうとしてるわ」

 足音だけでそこまで分かるもんなのか。なんというか……本当にアンススがいてくれて助かった。俺とアスタロウじゃ多分聖剣頼みの力押しの戦い方しかできないからな。

「一旦退いて、迎え撃ちやすいところを探したいわ」

 相手の近づく速度と、そしてこちらに対する態度を確認できたため、アンススが立ち上がる。

 とはいえ、当然初めて来る場所なので迎え撃ちやすい場所なんてのがどこにあるのかは分からない。しかし入口に入ってすぐに正面は壁。そこから右と左に分かれるような通路になっているのでどちらかに進むって事だろう。

「敵は左の通路の先から来るわ。反対側にとりあえず行ってみましょう」

 方針が決まれば行動は迅速に。とはいえ、反対側にも敵がいないとは限らないし、十分に警戒はしながらだ。

「どういうところが迎え撃ちやすいのかのう?」

アスタロウの疑問も当然だが、特殊な地形でもない限りそんなのはたいてい同じだろう。遮蔽物があって、こちらの身を隠しやすく、なおかつこちらから相手を観察は出来る部屋みたいなのがあれば一番いい。

「ちょうどおあつらえ向きな部屋があるな。この中で待伏せしよう。

 通路の途中で俺は小部屋を見つけた。中に逆に待ち伏せしてるような奴がいないのを確認すると、すぐ中に入る。5メートル四方くらいの小部屋か。少し狭いけど待ち伏せには問題ないだろう。

「ああ、でも部屋で待伏せするときには気を付けることがあって……」

 そう言いながらアスタロウと一緒にアンススが部屋に入ってくる。なんだろう? 中に何もいないのは確認したけど。

 彼女が部屋に入るとドン、と大きな音がして扉が閉められた。あんまりデカい音出すと相手にバレるんじゃないか? まあアンススがやったんなら何か考えがあるのかもしれないけど。

「で、気を付ける事って?」

「閉じ込められないように気を付けること」

 お前が閉めたんじゃなかったのか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...