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最終章 手を取り合って
魔法
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「魔族と融和だなんて……僕は認めない」
まとまりそうだった話を引っ掻き回しやがって。カレンに跳ねられてくたばったと思ってたイケメン勇者は苦しそうに上半身を起こしながらそう言った。
そのまま死んでるか死んだふりしてくれてりゃよかったのに、しゃしゃり出やがって。死にかけのお前に発言権なんかあると思ってんのか。
「君は、知らないんだ……こいつら魔族が、どれだけ悪辣な、ごほっ」
そこまで言ってアキラはせき込み、血を吐いた。ああ~、こりゃ内臓まで傷ついてますな。ご愁傷様。
「す、すまない……話をする前に、回復魔法を……たのむ」
「マホ……ウ?」
魔法……? 魔法って、あの魔法? ハ〇ーポッターとかで出てくる? その魔法がなんだって?
「マホウ?」
ちらりとアスタロウとアンススに視線を送るものの、二人ともぷるぷると横に頭をふる。確かにこいつらが魔法を使ったとこなんて見たことない。
「マホ?」
イルウに尋ねるが、やはり彼女も首を横に振る。この世界に、魔法って存在するの? 傷とか治せるの? へぇ~、便利。
「マホ……」
カルアミルクにも尋ねる。そういえばこいつはなんか炎の魔法とか使ってた気がする。どうだっけ? でも回復は使えんのかな? よしんば使えたとして「魔王を殺す」と宣言してるこいつに使ってくれるわけないけど。
「い、いい加減にしろよ! いくら僕の方針とあわないからって同胞を見殺しにする気か!? 回復魔法も使えずにここまでどうやって来たっていうんだ!」
歩いてきましたけど。
「ちょっと痛いけど我慢して」
どうにも困っているとアンススが前に出た。実は回復魔法が使えるのか?
「肺に血がたまってるみたいだから胸部を切開して葦で作ったこのチューブを差し込んで血を抜く。そうすれば肺が膨らむようになって少しは楽になると思うわ」
外科手術やないか。こいつそんなこともできるのか。でもそんなきったねぇ葦を突っ込んだら雑菌が入って感染症を引き起こすんじゃないの?
「そうやって時間稼ぎしている間にあなたたちの仲間の僧侶が目を覚ませば、回復してもらえるかも」
僧侶が死んでなきゃな。そういや忘れてたけどイリユース姫は無事なんだろか。いや絶対無事ではないけど。とりあえず死んでなきゃいいよ。知り合いが死んでたら寝覚めが悪いからな。
とりあえず他に方法が無いのでアンススに執刀を頼んで俺は補助と消毒。数時間に及ぶ緊急処置と、ついでに転がってる奴らの介護をして、無事に僧侶の……なんだっけ、あのパイズリホールの人が目を覚まし、回復魔法を使ってくれて全員が命を取り留めた。
ホントよかったね。俺が患者だったら絶対こんなアホに執刀してほしくないけど。
ともかくだ。俺たちが蘇生処置をしてる間も魔族の奴らはそれを妨害することもなく暖かく見守ってくれていた。アホづら下げて。
君はこんな優しい魔族を根絶やしにしようというのかね。
「僕はここに来るまでに、魔族に苦しめられている多くの民衆を見てきた」
俺だって……見てねえや。
そんなもん一度も見てねえや。せいぜい俺が見たのは勃〇したドラゴンくらいか。あれもエイメが相手すりゃ丸く収まってた話だけども。
「この城でもだ。本来人間がいないはずの魔国で、人が……食糧として囚われていた」
例のぷりぷり牡蠣のアヒージョか。それを例に出されるとな~……いまいち同情する気になれないというか。もっと他にないの?
「国境の付近でもだ。言葉の通じる人間を、食糧としてしか見ていない魔族ども……話すことができるなら、分かり合えるはずなんてのは幻想だ。こいつらと、分かり合うことなんてできない」
魔王の方をにらみつけて、アキラはそう吐き捨てた。魔王は苦笑いをしながら小さな溜息を吐く。俺もため息をつきたい気持ちだ。まさか魔王を説得する前に人間を説得することになるとは。
「まあ……そこは実際難しい問題ではあると思うよ? 人間だって生きるために牛とか豚とか、ほかの生き物を食べてるわけじゃん?」
やはりその話を聞いても俺は人間にすり寄った答えを出すことができなかった。なぜなら事前に人間がリキシに対してどんな仕打ちをしていたかを知っていたからだ。
相撲甚句で喋るリキシと意思疎通はできなかったのかもしれないが、新弟子を労働力として群れから誘拐して家畜として使役し、時には食べることもあったと聞く。リキシは同じ人間だっていうことも知らずに。知らなければ許されるとは簡単には言えないだろう。
「家族や友人を食い殺されても泣き寝入りしろっていうのか!?」
なんか感情的になってるなあ。いろいろあったんだろうな。道中で。
「ううっ、フューリオ。俺が魔族との和解なんて提案しなければ、お前が食われることなんて……」
「勇者様は悪くありませんわ」
泣き崩れるアキラにイリユース姫が寄り添う。腹立つな。あいつ人にさんざん気がある素振りしておきながら。結局は『ただしイケメンに限る』なのか。
「あの時、君の電撃魔法が無ければ僕も同じ運命だったろう……イリユース僕を支えてくれてありがとう」
涙ながらにアキラも彼女に答える。なんなんこれ? 何で急にラブロマンス始まってんの? どんなドラマがあったのか知らんけど目の前にいる人に分からない話題で盛り上がらないでくれます?
「くっそ、調子に乗りやがって。さんざんチュートリアルした仲だってのに目の前でいちゃつきやがって。アスタロウ、お前の尻軽子孫になんか言ってやれ。寝取られだぞ寝取られ」
「寝言は寝てから言え」
それはともかく。
「何もされたことを忘れろって言うつもりはねえよ。復讐するってんなら止めもしないし、それを手伝ってくれって言われれば状況によっては手伝うかもしれない。でもな」
頭の中で少し物事を整理しながら喋る。ここから先はアキラだけじゃなく、魔王に対しても言いたいことになる。言葉選びは慎重に。
「いがみ合ったっていい。ある程度の衝突や、殺し合いだって止めることなんかできないのは分かってる。でもな、だからって相手を滅ぼすまで戦争する、なんてことになったら泥沼だぞ? どちらかが滅びるまで報復合戦が続くことになる」
これが、ヨルダ師匠の言っていた「混ざり合う戦争」だと、俺は思っている。これがアキラに、魔王に通じるだろうか。
「あくまで魔族側に立った発言だな。魔族は食事のためだけじゃなく、その嗜虐心を満たすためにいたずらに人を殺して遊んでもいるということを知らないのか!!」
なんだと。
まとまりそうだった話を引っ掻き回しやがって。カレンに跳ねられてくたばったと思ってたイケメン勇者は苦しそうに上半身を起こしながらそう言った。
そのまま死んでるか死んだふりしてくれてりゃよかったのに、しゃしゃり出やがって。死にかけのお前に発言権なんかあると思ってんのか。
「君は、知らないんだ……こいつら魔族が、どれだけ悪辣な、ごほっ」
そこまで言ってアキラはせき込み、血を吐いた。ああ~、こりゃ内臓まで傷ついてますな。ご愁傷様。
「す、すまない……話をする前に、回復魔法を……たのむ」
「マホ……ウ?」
魔法……? 魔法って、あの魔法? ハ〇ーポッターとかで出てくる? その魔法がなんだって?
「マホウ?」
ちらりとアスタロウとアンススに視線を送るものの、二人ともぷるぷると横に頭をふる。確かにこいつらが魔法を使ったとこなんて見たことない。
「マホ?」
イルウに尋ねるが、やはり彼女も首を横に振る。この世界に、魔法って存在するの? 傷とか治せるの? へぇ~、便利。
「マホ……」
カルアミルクにも尋ねる。そういえばこいつはなんか炎の魔法とか使ってた気がする。どうだっけ? でも回復は使えんのかな? よしんば使えたとして「魔王を殺す」と宣言してるこいつに使ってくれるわけないけど。
「い、いい加減にしろよ! いくら僕の方針とあわないからって同胞を見殺しにする気か!? 回復魔法も使えずにここまでどうやって来たっていうんだ!」
歩いてきましたけど。
「ちょっと痛いけど我慢して」
どうにも困っているとアンススが前に出た。実は回復魔法が使えるのか?
「肺に血がたまってるみたいだから胸部を切開して葦で作ったこのチューブを差し込んで血を抜く。そうすれば肺が膨らむようになって少しは楽になると思うわ」
外科手術やないか。こいつそんなこともできるのか。でもそんなきったねぇ葦を突っ込んだら雑菌が入って感染症を引き起こすんじゃないの?
「そうやって時間稼ぎしている間にあなたたちの仲間の僧侶が目を覚ませば、回復してもらえるかも」
僧侶が死んでなきゃな。そういや忘れてたけどイリユース姫は無事なんだろか。いや絶対無事ではないけど。とりあえず死んでなきゃいいよ。知り合いが死んでたら寝覚めが悪いからな。
とりあえず他に方法が無いのでアンススに執刀を頼んで俺は補助と消毒。数時間に及ぶ緊急処置と、ついでに転がってる奴らの介護をして、無事に僧侶の……なんだっけ、あのパイズリホールの人が目を覚まし、回復魔法を使ってくれて全員が命を取り留めた。
ホントよかったね。俺が患者だったら絶対こんなアホに執刀してほしくないけど。
ともかくだ。俺たちが蘇生処置をしてる間も魔族の奴らはそれを妨害することもなく暖かく見守ってくれていた。アホづら下げて。
君はこんな優しい魔族を根絶やしにしようというのかね。
「僕はここに来るまでに、魔族に苦しめられている多くの民衆を見てきた」
俺だって……見てねえや。
そんなもん一度も見てねえや。せいぜい俺が見たのは勃〇したドラゴンくらいか。あれもエイメが相手すりゃ丸く収まってた話だけども。
「この城でもだ。本来人間がいないはずの魔国で、人が……食糧として囚われていた」
例のぷりぷり牡蠣のアヒージョか。それを例に出されるとな~……いまいち同情する気になれないというか。もっと他にないの?
「国境の付近でもだ。言葉の通じる人間を、食糧としてしか見ていない魔族ども……話すことができるなら、分かり合えるはずなんてのは幻想だ。こいつらと、分かり合うことなんてできない」
魔王の方をにらみつけて、アキラはそう吐き捨てた。魔王は苦笑いをしながら小さな溜息を吐く。俺もため息をつきたい気持ちだ。まさか魔王を説得する前に人間を説得することになるとは。
「まあ……そこは実際難しい問題ではあると思うよ? 人間だって生きるために牛とか豚とか、ほかの生き物を食べてるわけじゃん?」
やはりその話を聞いても俺は人間にすり寄った答えを出すことができなかった。なぜなら事前に人間がリキシに対してどんな仕打ちをしていたかを知っていたからだ。
相撲甚句で喋るリキシと意思疎通はできなかったのかもしれないが、新弟子を労働力として群れから誘拐して家畜として使役し、時には食べることもあったと聞く。リキシは同じ人間だっていうことも知らずに。知らなければ許されるとは簡単には言えないだろう。
「家族や友人を食い殺されても泣き寝入りしろっていうのか!?」
なんか感情的になってるなあ。いろいろあったんだろうな。道中で。
「ううっ、フューリオ。俺が魔族との和解なんて提案しなければ、お前が食われることなんて……」
「勇者様は悪くありませんわ」
泣き崩れるアキラにイリユース姫が寄り添う。腹立つな。あいつ人にさんざん気がある素振りしておきながら。結局は『ただしイケメンに限る』なのか。
「あの時、君の電撃魔法が無ければ僕も同じ運命だったろう……イリユース僕を支えてくれてありがとう」
涙ながらにアキラも彼女に答える。なんなんこれ? 何で急にラブロマンス始まってんの? どんなドラマがあったのか知らんけど目の前にいる人に分からない話題で盛り上がらないでくれます?
「くっそ、調子に乗りやがって。さんざんチュートリアルした仲だってのに目の前でいちゃつきやがって。アスタロウ、お前の尻軽子孫になんか言ってやれ。寝取られだぞ寝取られ」
「寝言は寝てから言え」
それはともかく。
「何もされたことを忘れろって言うつもりはねえよ。復讐するってんなら止めもしないし、それを手伝ってくれって言われれば状況によっては手伝うかもしれない。でもな」
頭の中で少し物事を整理しながら喋る。ここから先はアキラだけじゃなく、魔王に対しても言いたいことになる。言葉選びは慎重に。
「いがみ合ったっていい。ある程度の衝突や、殺し合いだって止めることなんかできないのは分かってる。でもな、だからって相手を滅ぼすまで戦争する、なんてことになったら泥沼だぞ? どちらかが滅びるまで報復合戦が続くことになる」
これが、ヨルダ師匠の言っていた「混ざり合う戦争」だと、俺は思っている。これがアキラに、魔王に通じるだろうか。
「あくまで魔族側に立った発言だな。魔族は食事のためだけじゃなく、その嗜虐心を満たすためにいたずらに人を殺して遊んでもいるということを知らないのか!!」
なんだと。
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