武装聖剣アヌスカリバー

月江堂

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最終章 手を取り合って

煽りカス

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「魔族は、生きるためではなく『遊び』で人間を殺してることがあるってこと?」
 
 アキラは険しい顔のまま無言で頷く。
 
 ちょっと、そうなってくると事情が変わってくるぞ。歴史上の長い確執があって人間と魔族が相いれないものだとして、上手いこと住み分けしながらソフトランディング路線で融和していけるものなんじゃないかとは思っていたのだが。
 
「というか、ホントさぁ……」
 
もううんざりだ。なんでこんなのばっかなんだ。
 
「後出し情報やめてくんない?」
 
 本気でいい加減にやめて欲しい。アンススやエイメがそんな情報出してくれないのは仕方ないわ。本来なら関係ない人だから。
 
「も、申し訳ない」
 
 だがアスタロウ、お前は違うだろう。思いっきり当事者側の人間で、俺への依頼元とも近いのに、なんでそういう情報出してくれないの。悪意すら感じるんだが。
 
「そういうとこの節々にさあ、なし崩し的というかさあ。自分に都合の悪い情報伏せといて『まあいざとなりゃあ流れでイケるだろ』みたいな意図を感じるんだよね」
 
「い、いやあ……ワシとしては本当に、その……勇者殿の融和路線をじゃな? 理想的な展開じゃと思ってサポートしておったつもりなんじゃがな、その……」
 
 アスタロウはたどたどしく言い訳しながらもちらりとイリユースとアキラの方を見る。
 
 まあ、情報は伏せていたかもしれないが、こいつも新勇者のことは知らなかったッぽい感じはある。
 
 というかさ。あんまり言いたくないことなんだけどさ。
 
 お前、切り捨てられたんじゃね?
 
 俺も。
 
 王国の恥部として。
 
「そもそも君にも当事者意識が足りないんじゃないのか?」
 
 うそん。俺が攻撃される流れ? アキラは俺をにらみつけながら言葉を発した。
 
「この世界に勇者として送られた以上、その影響力は計り知れない。勇者の力を振るうということは、それだけの責任が求められるはずだ。それを、自分で情報を収集することも放棄して、理想を振りかざすことは無責任じゃないのか?」
 
 正論オブ正論。
 
「あぁんコルルァ!!」
 
 俺は威嚇することで事なきを得た。
 
「そもそも魔族はなんでそんな酷い事すんのよ。お前らがやらなくてもいいことやってるせいで話がまとまってこなくなってんじゃん」
 
 苦しくなった俺は沈黙を守っている魔王ベルメスに話題を投げた。俺は悪くない。あいつらが余計なことしなけりゃ話は丸く収まったはずなんだ。
 
「ほぉう、じゃあ言わせてもらうが、人間は何もしてないとでも言うつもりか? 私は知っておるぞ。食糧に困ってるわけでもないくせに、人間がとらえた魔族を殺して、その肉を食っていることな」
 
 あ~あ、もう泥沼だよこれ。リキシ食うこともあるような連中だから魔族ぐらい余裕で食いそうだなあとは思ってたけどよ。
 
 しっかしここにきて急にハードになってきたな。召喚されてここまでろくに死人も出てなかったのに、このアキラとかいうやつが出てきてから急に世界観が崩れちゃったじゃん。なんなんコイツ? こんなハードな世界じゃなかったじゃん。ついさっきまでアナル相撲とかやってたんよ?
 
「そんな話は初耳だ。捏造じゃないのか? イリユース」
「……、知りません」
 
 含みを持たせた回答をするな。
 
「ヒューリウムは?」
「……し、知らない」
 
 視線をそらしながら答えるパイズリホール僧侶。もう半分答え出てるだろこれ。
 
「私は聞いたことあるわ」
 
 すると、俺の隣にいたアンススが代わりに答えてくれた。
 
「魔族の持つ強大な力を取り込むためとか言って、魔国と接する辺境領の冒険者や兵士は倒した魔族の肉を食べることがあるって」
 
 はい答え出ました。どうすんだよこれ。
 
「アキラさんあなた当事者意識が足りないんじゃないんスかねぇ? ちゃんと自分から情報集めるように動いてますぅ? 情報ってのは口開けて待ってたら放り込まれるもんじゃないんスよ? 自分から取りに行かなきゃ」
 
 我ながら最高の煽りが炸裂した。ざまあみろポッと出の偽勇者め。お前なんかアルトーレに体よく使われてる都合のいい道具なんだよ。いざとなったらそのうち切り捨てられるぜ。
 
 俺たちみたいに。
 
 いかん。言ってて自分でテンションが下がってきた。もう帰りたい。
 
「黙れ! 僕は自分こそが正義だなんて言うつもりはない。ただ自分の信じる人達のために戦うだけだ!! そうじゃなきゃ……そうじゃなきゃ、ワーベルハウト、君が……報われないじゃないか……」
 
 誰だよヘーベルハウスって。知らねえ奴の名前出すんじゃねえよ。仲間内でしか通用しないサムいノリ出すのホント禁止ね。言われても分かんないから。
 
「全ては魔族の残虐行為が発端だ。僕にとってはそれが全てだ。たとえ非難されようとも、僕は自分の心に嘘はつけない。覚悟しろ、魔王ベルメス!!」
 
「いやいやいやホント待ってって。待て、ハウス!」
 
 いきなり剣を魔王に向けるアキラ。直情径行にもほどがある。何があったのか知らんがこういう奴がいるから戦争がなくならないんだろうな。
 
「魔族側にもなんか言い分があるんでしょ? どのくらいの残虐行為があったか知らないけどさ、全面戦争はまずいって!」
 
 お互いそれは避けた方がいいと思う。なんせ魔王城もアルトーレの城もセキュリティガバガバだからな。戦争になったら互いのトップが暗殺され放題で指揮系統無茶苦茶の泥沼になるぞ、きっと。
 
「私は現場には出ないから分からないわ。でもそういうの……拷問だとかに積極的に動いてるのはカルナ=カルア、お前だと聞いてるけど?」
 
 実際そうなのかもしれんけどこの魔王、部下にキラーパスしやがった。
 
「えっ!? いやあ、そのぅ……」
 
 口ごもるカルアミルク。まさか国の代表がいるのに自分にターンが回ってくるわけないと思って油断してやがったな。
 
「とぼけるな魔王ベルメス! 僕はお前に聞いているんだ!! ここに来るまでに囚われていた若い男達を牢から解放した。あの人たちは毎晩地獄の責め苦を負っていたと言っていたぞ」
 
 またぷりぷり牡蠣のアヒージョの話かよ。テンション下がるからその話やめてくれよ。
 
「あれはほとんど拷問だった、と言っていたぞ!!」
 
 『ほとんど拷問』だろ、拷問じゃねえよそれ。気持ちいいやつだよきっと。お前どんだけ純真なんだよ。きっと女神とか国王とかに上手いこと騙くらかされてここまで来たんだろうなあ。
 
「なぜ……みんなそんな残酷なことができるんだ……」
 
 感極まったのかアキラはとうとう膝をついて涙をこぼした。
 
 まあ、こいつの気持ちも分からんでもないけどなあ。嗜虐心を満たすために人間を傷つける魔族にも腹が立つし、人間も負けじとやり返してたことを仲間は黙っていた。
 
「まあ……」
 
 何ともやりきれない雰囲気の中、魔王がおずおずと口を開く。
 
「たのしいじゃん? 弱者をしいたげるの」
 
 もうどうしようこれ。
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