119 / 123
最終章 手を取り合って
うどん
しおりを挟む
「暴力ってホントに素晴らしいよね」
魔王の一言にその場が凍り付く。アキラの方を見てみると、眉間にしわを寄せて怒りに打ち震えているようだ。
「魔王ッ!!」
「いやお前のこと言ってんのよ」
アキラが大きく吠えたが魔王ベルメスはあくまでマイペース。
「正義と名の付く暴力はさぞ楽しかったでしょうね」
魔王。こいつもなかなかの煽りカスだな。
「言葉は無用。聖剣イムカルテの力を見せてやる」
「受けて立とう!」
ああ、戦いが始まっちゃった。っていうかこいつ魔王がサキュバスの血を引いてて魅了の力があるって知ってんのかな? なんか対策立ててあんのか? 俺はそれなりに対策考えてあるけど、まあお手並み拝見と行こうか。
しかしアキラが切りかかるより先にギラリと魔王の両眼がピンク色の光を放った。先制で魔眼を仕掛けられた形だ。
「ぐうっ!?」
おいおい全然ダメじゃん。アキラの奴、苦しそうにうめき声をあげて何とか立ってる状態だが、完全に動きが止まっちゃったぞ。
「まさかこれは、魅了!? 安心してください勇者様、すぐに私が解除を……」
そう言いながら僧侶の……なんだっけ、名前。あの、パイズリホールの服の人がメイスを高く掲げ……そして固まった。
「邪魔はさせんぞ。おとなしく見ておれ」
「は……はい」
速攻で僧侶も魔眼に堕とされたみたいだな。もしかしてこのヒーラーが切り札だったのか? だとしたらお粗末すぎる。
「精霊の矢よ!!」
すぐさまエルフの弓兵が矢をつがえようとしたが……
「だからおとなしくしてろって」
「ぐっ……」
同じ手に何度もかかってんじゃねえよ。お前らホントに勇者パーティーか。
「すぐ助けます! 雷よ!!」
もういいよ、どうせお前も魔眼で止まるんだろ。
「シャラップ」
「むぐ」
ていうかイリユース姫さあ。魔法使えたのかよ。俺の時そんなこと一っ言も言ってなかったじゃん。
しかもなに? そっちのパーティーにいるときはチュートリアルキャラも封じてるの? なんなんそれ? 相手によって態度を使い分けるのって良くないと思いますよ?
ホント、どこで道を間違えちゃったんだろうな。聖剣を抜いたのがまずかったのかな。もっと違う攻略ルート辿ってたら俺にもそんな素敵な仲間ができてたんかな。どういうリアクション取るのが正解だったんだ、あれは。
「はぁ……」
なんだかやる気がなくなってきた。俺はごろんと横になって頬杖をついて観戦する。もう好きにしろお前ら。
「俺は……負けないッ!!」
「ほほう、なかなかの精神力」
おお~、粘るじゃんあのイケメン。魅了の力に抵抗してんのか。ゆっくりとだけど、一歩、二歩、と剣を構えたまま進んでる。
「逆らえば苦しむだけだぞ。私にその身を委ねるのだ。さすれば永遠とも思える快楽と、肉欲の愉悦を約束しよう」
「ほざけ! 誰が貴様なんかに!!」
何がそんなに彼を頑張らせるのかねぇ。あんなセクシーなお姉さんがエッチなことしてくれるって言ってんのに。俺だったら魅了されてなくてもコロッとイッちゃうよ? コロッと。魔王、俺を誘惑してくんねぇかな。
「みんな、俺に力を貸してくれ!」
俺は貸さねえよ? 魅了されてる仲間に言ってんだよね?
それにしてもアレだな。こいつって……主人公みたいだな。
主人公なのかな、もしかして。
そうか、主人公なのか。だからこんなに俺と違うのか。
ああ、なんかだんだん分かってきたぞ。俺、この物語の主人公じゃなかったのか。この魔王討伐の物語は、鬼龍院アキラとかいう勇者が王国の姫と、どこが聖職者だよって服装のパイズリホール僧侶と、気高いエルフを連れ立って旅行く英雄譚だったんだな。
そんでケツに聖剣の刺さったおっさんと、アホな冒険者とエルフの相撲取りを連れた変な偽勇者が終盤になってコメディリリーフとして出てくんだ。で、その変な奴らをメインにした外伝っていうか、スピンオフの物語が俺たちの話なんだな。
わかっちゃった。
わからせられちゃった。
ああ~~~……やる気が地に落ちた。もうどうでもええ。
「帰りてぇ……」
「僕は、絶対に魔王なんかに屈したりしない!!」
「日本に帰りてぇ……〇亀製麺のうどん食いてぇ」
「邪神の使いである貴様らなんかにうるさいなあもう!!」
「ふえ?」
俺に言いました?
「人がまじめにやってんのにうどんがどうとかやめてくれないか!!」
「だってさぁ……食いたくない? うどん。サクサクのてんぷらを上にのっけてさぁ……いや、違うな」
しばし目をつぶって熟慮する。
「素うどんがいい。かつお出汁のしっかり効いた素うどんか、きつねうどんを。いや、アゴ出汁もいいな」
「ぐうッ!?」
ガランと金属音が響く。あいつの聖剣……なんつったっけ? 田舎そばとか、そんな名前の剣を取り落とした音だ。苦しそうに耳を抑えてる。どしたの?
「アゴ出汁のうどん、嫌いだった?」
「やめろ! それ以上アゴ出汁の話をするな!!」
「嫌いなの? 甘いアゴ出汁のうどんでさ、九州風のトロトロになるまで煮込んだうどん食べたくない?」
「ぐああッ! やめろ! 僕は九州出身なんだ!! せっかく最近ホームシックを断ち切ったのに!!」
「唇で噛み切れるくらい煮込んであってさあ、あれもううどんっていうかスイーツだよね。食べたいなあ」
「あああああ!! 帰りたいぃぃぃ!!」
こいつホームシックになるのも全力だな。
魔王の一言にその場が凍り付く。アキラの方を見てみると、眉間にしわを寄せて怒りに打ち震えているようだ。
「魔王ッ!!」
「いやお前のこと言ってんのよ」
アキラが大きく吠えたが魔王ベルメスはあくまでマイペース。
「正義と名の付く暴力はさぞ楽しかったでしょうね」
魔王。こいつもなかなかの煽りカスだな。
「言葉は無用。聖剣イムカルテの力を見せてやる」
「受けて立とう!」
ああ、戦いが始まっちゃった。っていうかこいつ魔王がサキュバスの血を引いてて魅了の力があるって知ってんのかな? なんか対策立ててあんのか? 俺はそれなりに対策考えてあるけど、まあお手並み拝見と行こうか。
しかしアキラが切りかかるより先にギラリと魔王の両眼がピンク色の光を放った。先制で魔眼を仕掛けられた形だ。
「ぐうっ!?」
おいおい全然ダメじゃん。アキラの奴、苦しそうにうめき声をあげて何とか立ってる状態だが、完全に動きが止まっちゃったぞ。
「まさかこれは、魅了!? 安心してください勇者様、すぐに私が解除を……」
そう言いながら僧侶の……なんだっけ、名前。あの、パイズリホールの服の人がメイスを高く掲げ……そして固まった。
「邪魔はさせんぞ。おとなしく見ておれ」
「は……はい」
速攻で僧侶も魔眼に堕とされたみたいだな。もしかしてこのヒーラーが切り札だったのか? だとしたらお粗末すぎる。
「精霊の矢よ!!」
すぐさまエルフの弓兵が矢をつがえようとしたが……
「だからおとなしくしてろって」
「ぐっ……」
同じ手に何度もかかってんじゃねえよ。お前らホントに勇者パーティーか。
「すぐ助けます! 雷よ!!」
もういいよ、どうせお前も魔眼で止まるんだろ。
「シャラップ」
「むぐ」
ていうかイリユース姫さあ。魔法使えたのかよ。俺の時そんなこと一っ言も言ってなかったじゃん。
しかもなに? そっちのパーティーにいるときはチュートリアルキャラも封じてるの? なんなんそれ? 相手によって態度を使い分けるのって良くないと思いますよ?
ホント、どこで道を間違えちゃったんだろうな。聖剣を抜いたのがまずかったのかな。もっと違う攻略ルート辿ってたら俺にもそんな素敵な仲間ができてたんかな。どういうリアクション取るのが正解だったんだ、あれは。
「はぁ……」
なんだかやる気がなくなってきた。俺はごろんと横になって頬杖をついて観戦する。もう好きにしろお前ら。
「俺は……負けないッ!!」
「ほほう、なかなかの精神力」
おお~、粘るじゃんあのイケメン。魅了の力に抵抗してんのか。ゆっくりとだけど、一歩、二歩、と剣を構えたまま進んでる。
「逆らえば苦しむだけだぞ。私にその身を委ねるのだ。さすれば永遠とも思える快楽と、肉欲の愉悦を約束しよう」
「ほざけ! 誰が貴様なんかに!!」
何がそんなに彼を頑張らせるのかねぇ。あんなセクシーなお姉さんがエッチなことしてくれるって言ってんのに。俺だったら魅了されてなくてもコロッとイッちゃうよ? コロッと。魔王、俺を誘惑してくんねぇかな。
「みんな、俺に力を貸してくれ!」
俺は貸さねえよ? 魅了されてる仲間に言ってんだよね?
それにしてもアレだな。こいつって……主人公みたいだな。
主人公なのかな、もしかして。
そうか、主人公なのか。だからこんなに俺と違うのか。
ああ、なんかだんだん分かってきたぞ。俺、この物語の主人公じゃなかったのか。この魔王討伐の物語は、鬼龍院アキラとかいう勇者が王国の姫と、どこが聖職者だよって服装のパイズリホール僧侶と、気高いエルフを連れ立って旅行く英雄譚だったんだな。
そんでケツに聖剣の刺さったおっさんと、アホな冒険者とエルフの相撲取りを連れた変な偽勇者が終盤になってコメディリリーフとして出てくんだ。で、その変な奴らをメインにした外伝っていうか、スピンオフの物語が俺たちの話なんだな。
わかっちゃった。
わからせられちゃった。
ああ~~~……やる気が地に落ちた。もうどうでもええ。
「帰りてぇ……」
「僕は、絶対に魔王なんかに屈したりしない!!」
「日本に帰りてぇ……〇亀製麺のうどん食いてぇ」
「邪神の使いである貴様らなんかにうるさいなあもう!!」
「ふえ?」
俺に言いました?
「人がまじめにやってんのにうどんがどうとかやめてくれないか!!」
「だってさぁ……食いたくない? うどん。サクサクのてんぷらを上にのっけてさぁ……いや、違うな」
しばし目をつぶって熟慮する。
「素うどんがいい。かつお出汁のしっかり効いた素うどんか、きつねうどんを。いや、アゴ出汁もいいな」
「ぐうッ!?」
ガランと金属音が響く。あいつの聖剣……なんつったっけ? 田舎そばとか、そんな名前の剣を取り落とした音だ。苦しそうに耳を抑えてる。どしたの?
「アゴ出汁のうどん、嫌いだった?」
「やめろ! それ以上アゴ出汁の話をするな!!」
「嫌いなの? 甘いアゴ出汁のうどんでさ、九州風のトロトロになるまで煮込んだうどん食べたくない?」
「ぐああッ! やめろ! 僕は九州出身なんだ!! せっかく最近ホームシックを断ち切ったのに!!」
「唇で噛み切れるくらい煮込んであってさあ、あれもううどんっていうかスイーツだよね。食べたいなあ」
「あああああ!! 帰りたいぃぃぃ!!」
こいつホームシックになるのも全力だな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる