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最終章 手を取り合って
ケツアナコワレトル
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直接脳内会話……読んで字の如く、通常の通り空気の振動により声を相手に伝えるのではなく、なんや知らんけど脳みその中に直接話しかけてくる行為である。テレパシーかなんかで。
今まで俺の脳内は女神ベアリス、聖剣の意思、ヨルダ師匠に蹂躙されてきた。でもなんか今回はちょっと違うな。周りの奴らのリアクションを見るに、みんなにも聞こえてるみたいだ。直接脳内じゃなかったわ。
『よくぞ難解な問題に対して、自分なりの解決策を導き出してくれた。礼を言おう、人の子よ』
誰だろう? 知らない男の声だ。よく通る声で、落ち着いてて、若干エコーがかかってて、これぞ神の声、って感じだ。心当たりはないけど。
「まさか……邪神?」
そう呟いたのはアスタロウ。ううん、さっき女神も話しかけてきたし、この場に邪神が現れたといっても不自然さはないような気がする。
一応解説するとこの世界には女神と、その兄の邪神がいて、人間を中心にエルフとか、他知らんけどいろんな種族が女神の信望しており、反対に魔族を中心とした奴らが邪神を信望して敵対してるらしい。
ちなみに女神と邪神自体は別に敵対してるわけじゃなく、しかも兄妹らしい。んで、別に女神と邪神がこの世界を作ったわけでも、種族を生み出したわけでもないそうだ。
で、なんでここで急に邪神が俺達に親しげに話しかけてくんのかな? これはもしかしてアレか? もうエンディングなのか?
『やー、お兄ちゃんですか。お久しぶりです』
女神ベアリスの方は相変わらず自然体というか、威厳が無いのよな、この神様。しかしやっぱりベアリスが反応したってことはこいつは邪神なのか。邪な神ってんだから、よっぽどアレだな。変態なんだろうな。
『邪神というのは人間が勝手につけた呼び名に過ぎぬ。我は蛇なる神。文明と農耕を与える者、翼をもつ蛇なり』
翼を持つ蛇? なんか、どっかで聞いたことあるような気がするな……そうだ、思い出したぞ。南米の……アステカ神話だっけ? 女神転生やっててよかった。邪神じゃなくて蛇神ってところか。名前は確か……ケツァルコアトルとかいう神じゃなかったか。
『我が名はケツアナコワレトル。太陽神にして水をつかさどる神』
やっぱ変態じゃねーか。
『昨日食べた肉が賞味期限切れてたみたいでケツアナがコワレタみたいに水状の便が止まらなくて困っておるのだ』
知らねーよ。ビオフェルミンでも飲んどけ。
『勇者ケンジよ、おぬしはこの狂った世界の中、よく戦った』
ホントだよ。狂いすぎだよこの世界。責任者出てこい。
『ええ本当にケンジさんはよくやってくれました。彼ならきっとやってくれると思っていましたよ。私が新しい勇者を送って危機感を煽ったことが上手くいったようですね。すべて私の思った通りに進んで本当に良かったです』
女神お前本当にいい加減にしろよ。
とはいえ、これで俺の勇者としての仕事も終わりか。いや、まだアスタロト達がいるんだったな。いやだなあ。自分たちでどうにかしてくんないかな。もとはと言えばあいつら呼んだのは魔族だし、ドラゴンカーセックス生命体が生まれたのはメルポーザのせいだろう。
『ケンジよ、日本に帰りたくはないか』
「帰りたいッ!!」
俺じゃない。
かぶせ気味に大声で叫んだのはアキラだった。ちょっと引っ込んでろよお前。今俺が話してんだよこのアゴ出汁野郎が。
「日本に……帰れるのか?」
「帰りたいッ!!」
しかし確か前に聞いた話だと、向こうで俺は死んでるから帰れないんじゃなかったんだろうか。帰って向こうで死体をやるとかならごめんだぞ。
『もちろん通常はできない。これは特例だ。君が向こうで死んだその時の、直前の時間軸に健康な状態で戻そう』
トラックにはねられるコンマ数秒前とかはやめてくれよ? こいつらいまいち信用できないんだよな。
『よほど信用がないようだな。心配はない。これは君への心よりの感謝の気持ちだ決して悪いようにはしない』
あんたの妹が信用無いからな。
しかし困ったな。どうしよう。帰るべきか、帰らざるべきか。
はっきり言って、帰りたい。
ぶっちゃけて言ってこんな電気もエアコンもない世界よりも、向こうの快適な世界の方が数倍いい。コンビニだってある。〇亀製麺だってある。暇なときはスマホでネットにつないで×で愚痴を言う。漫画もアニメもゲームもある。トイレットペーパーとウォシュレットだってある。
受験勉強だとか就職だとか、税金だとか社会保障だとか考えるだけで憂鬱になることもいっぱいあるけども、でもそれだってこの世界から見てみると本当にいい制度だと思う。
みんなが一生懸命考えて、少しずつ社会を良くしようと考えて作った制度なんだから、当たり前だ。今になってわかる。あの世界の『普通』が、こちらではどんなに希求しても手に入らない『普通』が、どれだけ貴重なものだったのか。
「帰っちゃうの……? ケンジくん」
ちらりと、振り返る。
声をかけてきたのはアンススだった。その隣にはイルウとエイメもいる。イリユース、お前は視界から外れろ。
たしかに、日本で生き返ってもこの先こんな美人と深い仲どころかお知り合いになれる機会すらないだろう。
おっさんのケツに腕を突っ込むことも、悪のアナリスト集団に粘着されることも、勃気術のエルフと出会うことも、日本に帰ればないだろう。この、刺激的でユニークな世界とも……いや待て、刺激的?
そりゃ出来事だけを負っていけば刺激的だったけど、基本は何もない毎日だ。例えば俺の旅路を物語として読めばいろんなことがあったように見えるけど、実を言うと、ほとんどの日々は何もない毎日だ。
日の出てる間にひたすら歩いて、夕暮れになってきたら寝床を確保して、朝日が出るまで寝る。暇でも、することなんて何もない。本すらない。あっても暗いから読めない。
……日本は刺激的だった。
やっぱり、帰りたい。家族にも会いたい。
『答えは出たようだな、勇者よ』
その声とともに俺たちの目の前に巨大な羽の生えた蛇が姿を現した。体育館ほどの広大な魔王の謁見の間に、溢れんほどの巨躯の蛇が。これが、蛇神の実体か。
『心が決まったなら、ゲートを通って元の世界に帰るがよい』
そう言って、蛇神は、尻尾の方を俺に向けた。その中腹には真っ暗な、暗い穴が開いている。え? この穴って、もしかして……
『さあ、我のアナルを通って、在るべき場所に帰るのだ』
ケツアナコワレトル。
今まで俺の脳内は女神ベアリス、聖剣の意思、ヨルダ師匠に蹂躙されてきた。でもなんか今回はちょっと違うな。周りの奴らのリアクションを見るに、みんなにも聞こえてるみたいだ。直接脳内じゃなかったわ。
『よくぞ難解な問題に対して、自分なりの解決策を導き出してくれた。礼を言おう、人の子よ』
誰だろう? 知らない男の声だ。よく通る声で、落ち着いてて、若干エコーがかかってて、これぞ神の声、って感じだ。心当たりはないけど。
「まさか……邪神?」
そう呟いたのはアスタロウ。ううん、さっき女神も話しかけてきたし、この場に邪神が現れたといっても不自然さはないような気がする。
一応解説するとこの世界には女神と、その兄の邪神がいて、人間を中心にエルフとか、他知らんけどいろんな種族が女神の信望しており、反対に魔族を中心とした奴らが邪神を信望して敵対してるらしい。
ちなみに女神と邪神自体は別に敵対してるわけじゃなく、しかも兄妹らしい。んで、別に女神と邪神がこの世界を作ったわけでも、種族を生み出したわけでもないそうだ。
で、なんでここで急に邪神が俺達に親しげに話しかけてくんのかな? これはもしかしてアレか? もうエンディングなのか?
『やー、お兄ちゃんですか。お久しぶりです』
女神ベアリスの方は相変わらず自然体というか、威厳が無いのよな、この神様。しかしやっぱりベアリスが反応したってことはこいつは邪神なのか。邪な神ってんだから、よっぽどアレだな。変態なんだろうな。
『邪神というのは人間が勝手につけた呼び名に過ぎぬ。我は蛇なる神。文明と農耕を与える者、翼をもつ蛇なり』
翼を持つ蛇? なんか、どっかで聞いたことあるような気がするな……そうだ、思い出したぞ。南米の……アステカ神話だっけ? 女神転生やっててよかった。邪神じゃなくて蛇神ってところか。名前は確か……ケツァルコアトルとかいう神じゃなかったか。
『我が名はケツアナコワレトル。太陽神にして水をつかさどる神』
やっぱ変態じゃねーか。
『昨日食べた肉が賞味期限切れてたみたいでケツアナがコワレタみたいに水状の便が止まらなくて困っておるのだ』
知らねーよ。ビオフェルミンでも飲んどけ。
『勇者ケンジよ、おぬしはこの狂った世界の中、よく戦った』
ホントだよ。狂いすぎだよこの世界。責任者出てこい。
『ええ本当にケンジさんはよくやってくれました。彼ならきっとやってくれると思っていましたよ。私が新しい勇者を送って危機感を煽ったことが上手くいったようですね。すべて私の思った通りに進んで本当に良かったです』
女神お前本当にいい加減にしろよ。
とはいえ、これで俺の勇者としての仕事も終わりか。いや、まだアスタロト達がいるんだったな。いやだなあ。自分たちでどうにかしてくんないかな。もとはと言えばあいつら呼んだのは魔族だし、ドラゴンカーセックス生命体が生まれたのはメルポーザのせいだろう。
『ケンジよ、日本に帰りたくはないか』
「帰りたいッ!!」
俺じゃない。
かぶせ気味に大声で叫んだのはアキラだった。ちょっと引っ込んでろよお前。今俺が話してんだよこのアゴ出汁野郎が。
「日本に……帰れるのか?」
「帰りたいッ!!」
しかし確か前に聞いた話だと、向こうで俺は死んでるから帰れないんじゃなかったんだろうか。帰って向こうで死体をやるとかならごめんだぞ。
『もちろん通常はできない。これは特例だ。君が向こうで死んだその時の、直前の時間軸に健康な状態で戻そう』
トラックにはねられるコンマ数秒前とかはやめてくれよ? こいつらいまいち信用できないんだよな。
『よほど信用がないようだな。心配はない。これは君への心よりの感謝の気持ちだ決して悪いようにはしない』
あんたの妹が信用無いからな。
しかし困ったな。どうしよう。帰るべきか、帰らざるべきか。
はっきり言って、帰りたい。
ぶっちゃけて言ってこんな電気もエアコンもない世界よりも、向こうの快適な世界の方が数倍いい。コンビニだってある。〇亀製麺だってある。暇なときはスマホでネットにつないで×で愚痴を言う。漫画もアニメもゲームもある。トイレットペーパーとウォシュレットだってある。
受験勉強だとか就職だとか、税金だとか社会保障だとか考えるだけで憂鬱になることもいっぱいあるけども、でもそれだってこの世界から見てみると本当にいい制度だと思う。
みんなが一生懸命考えて、少しずつ社会を良くしようと考えて作った制度なんだから、当たり前だ。今になってわかる。あの世界の『普通』が、こちらではどんなに希求しても手に入らない『普通』が、どれだけ貴重なものだったのか。
「帰っちゃうの……? ケンジくん」
ちらりと、振り返る。
声をかけてきたのはアンススだった。その隣にはイルウとエイメもいる。イリユース、お前は視界から外れろ。
たしかに、日本で生き返ってもこの先こんな美人と深い仲どころかお知り合いになれる機会すらないだろう。
おっさんのケツに腕を突っ込むことも、悪のアナリスト集団に粘着されることも、勃気術のエルフと出会うことも、日本に帰ればないだろう。この、刺激的でユニークな世界とも……いや待て、刺激的?
そりゃ出来事だけを負っていけば刺激的だったけど、基本は何もない毎日だ。例えば俺の旅路を物語として読めばいろんなことがあったように見えるけど、実を言うと、ほとんどの日々は何もない毎日だ。
日の出てる間にひたすら歩いて、夕暮れになってきたら寝床を確保して、朝日が出るまで寝る。暇でも、することなんて何もない。本すらない。あっても暗いから読めない。
……日本は刺激的だった。
やっぱり、帰りたい。家族にも会いたい。
『答えは出たようだな、勇者よ』
その声とともに俺たちの目の前に巨大な羽の生えた蛇が姿を現した。体育館ほどの広大な魔王の謁見の間に、溢れんほどの巨躯の蛇が。これが、蛇神の実体か。
『心が決まったなら、ゲートを通って元の世界に帰るがよい』
そう言って、蛇神は、尻尾の方を俺に向けた。その中腹には真っ暗な、暗い穴が開いている。え? この穴って、もしかして……
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ケツアナコワレトル。
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