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運命は人知を越えて荒れ狂う
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運命は人知を越えて荒れ狂う。人の意志を嘲笑わうかのように。
その道は本当に自分が選んだものなのか。そこに、己の意志はあるのか。
人を愛するという事は、本当に人を幸せにすることができるのか。
それでも人は走り続けなければならない。それが生きるという事なのだから。
「……賽はもう、振られたのです」
静かな部屋の中で、ギアンテの言葉だけが響いた。
「それが、ギアンテの答えですか」
敬愛する王子からの、実質的に愛の告白とも受け取る事の出来る言葉ですら、ギアンテの心には届かなかったのだ。床に跪いてギアンテの膝の上に体重を預けたまま彼女の顔を見上げるイェレミアスの表情は、聖者のように神聖で。仔猫のように頼りなく。それゆえにギアンテは彼の顔を直視することさえできなかった。
これがヤルノを殺害する前であれば、あるいは彼女も大いに迷いながらもこの提案に乗ったのかもしれない。
しかし彼女はすでに、イェレミアス王子を生かすために人生で初めて肌を重ねた相手であるヤルノを殺害してしまっているのだ。
今更船を降りることはできない。
ましてや、王妃インシュラを一人残して自分達だけが逃げることなどできようはずもない。彼女もギアンテにとっては尊敬する恩人なのだ。
「そんなに、王位が欲しいんですか。ヤルノを殺してまでも」
ゆっくりと立ち上がりながら、彼に似つかわしくない低く暗い声でイェレミアスはそう言った」
「そりゃあそうでしょうね。あんなどこの馬の骨とも分からないガキ、王位と共に手に入れられるものに比べたら大事の前の小事。殺しても痛くもかゆくもないですもんね」
「違っ……」
否定しようとして、言葉に詰まった。
イェレミアスの命を助けるためでもある。しかしそれならばどこか別の国に亡命するという手もあったのではないか。それこそ先ほど王子が言ったように全てを捨ててどこかの田舎か修道院ででも過ごすという手も。
だがそれをしなかったのは、王宮の豪奢な暮らしが捨てられなかったからではないのか。そう問われれば、はっきりと否定ができない。
「違うのなら、はっきりと言ってくださいよ。『ヤルノを愛していた』と」
うつむきがちに目を伏せてしまっていたギアンテの顔をこちらに向けさせるべく、イェレミアスはその白魚のような指先で彼女のあごをくいと上げた。今度はギアンテが幼子のように頼りない表情をし、イェレミアスは今までに見たことの内容な嗜虐的な表情をしている。
「ヤルノは……大切な……」
言葉の先を聞く必要がないと思ったのか、ギアンテの言葉を遮って、イェレミアスは口づけにて彼女を封じた。
まさかそんなことをされると思ってはいなかったのか、ギアンテは目を見開き、抵抗することも、身じろぎ一つできずにいる。
そうしている間にもイェレミアスの舌はギアンテの口をこじ開け、なめくじの交尾のように彼女の舌と絡み合う。
唇が離れると、はじけるように呼吸が復活し、二人のきずなを繋ぐように頼りない唾液の糸が口を伝った。
「殿下……なにを」
何が起きたのか理解できず混乱したまま、ギアンテは体を抱きかかえられ、ベッドに押し倒された。
この二週間でイェレミアスの体はより一層細く、頼りなくなっている。抵抗しようと思えば簡単だ。しかし彼女にはそれができなかった。女としての本能。それともヤルノの件の後ろめたさからなのか。
「ギアンテが僕やヤルノを都合よく利用するというんなら、僕だってギアンテを使ってあげますよ」
イェレミアスがあの優しい顔の裏にこんなペルソナを隠し持っているとは考えてもいなかった。果たしてそれは今までも存在していたのか。それともヤルノの死を契機に現れた者なのか。
― もしくは、全くの別人なのか ―
ギアンテが混乱して何も動きをとれないうちにも、彼女の衣服はどんどん剥がされていき、しなやかな筋肉の上にうっすらと脂肪の乗った、まるで陶磁器のようにきめ細かな美しい肌があらわになっていく。
「だ、だめです、王子……」
騎士には似つかわしくない豊かな胸を鷲掴みにされ、ようやく彼女は抵抗の言葉を上げることができたが、所詮言葉に、力を止めることなどできない。双丘の先端の、少し色素の薄い突起を弄ばれ、女騎士は甘い声を漏らした。
「いけません……ッ、そんな」
いつの間にかイェレミアスも衣服を脱ぎ捨てており、楔のように彼女の両足の間に侵入していく。それでも彼女は言葉以外に抵抗を見せない。できないのだ。
「殺される苦しみに比べれば、こんなのはどうってことない」
自分が殺してしまった少年。そのことを出されるとギアンテは抵抗の言葉すら出せなくなる。まだ準備も不十分であるというのにイェレミアスは強硬に彼女に分け入ってゆく。
痛みを紛らわすためか、それとも彼女が逃げないようにか。イェレミアスは二人の掌が合わさるように手を重ね、指を組み合わせて握った。
― その時、彼女を絶望が襲った ―
「ふふ、気付いた?」
「この……手は……」
顔面が蒼白になり、瞳孔が拡大する。
「可哀そうなイェレミアス。愛する人に殺されて、どんな気分だったでしょうね」
そうしている間も彼の腰は容赦なく快楽をむさぼり続ける。しかしギアンテにとってもはやそんなことはどうでもよかった。
この手。
幾度となく重ね合わせた手。
王子の物とは違う、別の者の手。
『剣の握り方が違うのか、タコのでき方が違うんです。王子はなぜか小指の方にタコができてて……』
「そんな……そんなっ!!」
そこから先は口に出すことすらできなかった。もはや分かり切ったことではあるものの、口に出してしまえばその現実が確定してしまうような気がして。
口に出さないうちはまだ、現実があやふやに振舞ってくれるような気がして。
「お前だよ。お前が殺したんだよ」
もはや人形のように表情をなくし、ただただ呆然としているだけのギアンテの中に、少年は精を放った。
その道は本当に自分が選んだものなのか。そこに、己の意志はあるのか。
人を愛するという事は、本当に人を幸せにすることができるのか。
それでも人は走り続けなければならない。それが生きるという事なのだから。
「……賽はもう、振られたのです」
静かな部屋の中で、ギアンテの言葉だけが響いた。
「それが、ギアンテの答えですか」
敬愛する王子からの、実質的に愛の告白とも受け取る事の出来る言葉ですら、ギアンテの心には届かなかったのだ。床に跪いてギアンテの膝の上に体重を預けたまま彼女の顔を見上げるイェレミアスの表情は、聖者のように神聖で。仔猫のように頼りなく。それゆえにギアンテは彼の顔を直視することさえできなかった。
これがヤルノを殺害する前であれば、あるいは彼女も大いに迷いながらもこの提案に乗ったのかもしれない。
しかし彼女はすでに、イェレミアス王子を生かすために人生で初めて肌を重ねた相手であるヤルノを殺害してしまっているのだ。
今更船を降りることはできない。
ましてや、王妃インシュラを一人残して自分達だけが逃げることなどできようはずもない。彼女もギアンテにとっては尊敬する恩人なのだ。
「そんなに、王位が欲しいんですか。ヤルノを殺してまでも」
ゆっくりと立ち上がりながら、彼に似つかわしくない低く暗い声でイェレミアスはそう言った」
「そりゃあそうでしょうね。あんなどこの馬の骨とも分からないガキ、王位と共に手に入れられるものに比べたら大事の前の小事。殺しても痛くもかゆくもないですもんね」
「違っ……」
否定しようとして、言葉に詰まった。
イェレミアスの命を助けるためでもある。しかしそれならばどこか別の国に亡命するという手もあったのではないか。それこそ先ほど王子が言ったように全てを捨ててどこかの田舎か修道院ででも過ごすという手も。
だがそれをしなかったのは、王宮の豪奢な暮らしが捨てられなかったからではないのか。そう問われれば、はっきりと否定ができない。
「違うのなら、はっきりと言ってくださいよ。『ヤルノを愛していた』と」
うつむきがちに目を伏せてしまっていたギアンテの顔をこちらに向けさせるべく、イェレミアスはその白魚のような指先で彼女のあごをくいと上げた。今度はギアンテが幼子のように頼りない表情をし、イェレミアスは今までに見たことの内容な嗜虐的な表情をしている。
「ヤルノは……大切な……」
言葉の先を聞く必要がないと思ったのか、ギアンテの言葉を遮って、イェレミアスは口づけにて彼女を封じた。
まさかそんなことをされると思ってはいなかったのか、ギアンテは目を見開き、抵抗することも、身じろぎ一つできずにいる。
そうしている間にもイェレミアスの舌はギアンテの口をこじ開け、なめくじの交尾のように彼女の舌と絡み合う。
唇が離れると、はじけるように呼吸が復活し、二人のきずなを繋ぐように頼りない唾液の糸が口を伝った。
「殿下……なにを」
何が起きたのか理解できず混乱したまま、ギアンテは体を抱きかかえられ、ベッドに押し倒された。
この二週間でイェレミアスの体はより一層細く、頼りなくなっている。抵抗しようと思えば簡単だ。しかし彼女にはそれができなかった。女としての本能。それともヤルノの件の後ろめたさからなのか。
「ギアンテが僕やヤルノを都合よく利用するというんなら、僕だってギアンテを使ってあげますよ」
イェレミアスがあの優しい顔の裏にこんなペルソナを隠し持っているとは考えてもいなかった。果たしてそれは今までも存在していたのか。それともヤルノの死を契機に現れた者なのか。
― もしくは、全くの別人なのか ―
ギアンテが混乱して何も動きをとれないうちにも、彼女の衣服はどんどん剥がされていき、しなやかな筋肉の上にうっすらと脂肪の乗った、まるで陶磁器のようにきめ細かな美しい肌があらわになっていく。
「だ、だめです、王子……」
騎士には似つかわしくない豊かな胸を鷲掴みにされ、ようやく彼女は抵抗の言葉を上げることができたが、所詮言葉に、力を止めることなどできない。双丘の先端の、少し色素の薄い突起を弄ばれ、女騎士は甘い声を漏らした。
「いけません……ッ、そんな」
いつの間にかイェレミアスも衣服を脱ぎ捨てており、楔のように彼女の両足の間に侵入していく。それでも彼女は言葉以外に抵抗を見せない。できないのだ。
「殺される苦しみに比べれば、こんなのはどうってことない」
自分が殺してしまった少年。そのことを出されるとギアンテは抵抗の言葉すら出せなくなる。まだ準備も不十分であるというのにイェレミアスは強硬に彼女に分け入ってゆく。
痛みを紛らわすためか、それとも彼女が逃げないようにか。イェレミアスは二人の掌が合わさるように手を重ね、指を組み合わせて握った。
― その時、彼女を絶望が襲った ―
「ふふ、気付いた?」
「この……手は……」
顔面が蒼白になり、瞳孔が拡大する。
「可哀そうなイェレミアス。愛する人に殺されて、どんな気分だったでしょうね」
そうしている間も彼の腰は容赦なく快楽をむさぼり続ける。しかしギアンテにとってもはやそんなことはどうでもよかった。
この手。
幾度となく重ね合わせた手。
王子の物とは違う、別の者の手。
『剣の握り方が違うのか、タコのでき方が違うんです。王子はなぜか小指の方にタコができてて……』
「そんな……そんなっ!!」
そこから先は口に出すことすらできなかった。もはや分かり切ったことではあるものの、口に出してしまえばその現実が確定してしまうような気がして。
口に出さないうちはまだ、現実があやふやに振舞ってくれるような気がして。
「お前だよ。お前が殺したんだよ」
もはや人形のように表情をなくし、ただただ呆然としているだけのギアンテの中に、少年は精を放った。
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