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カッシャ――ンとカッターが床に落ちる。
そして、ぼたぼた――と鮮血が散らばった。
「新多君! いやだ……どうしよう! 血が……きゅ、救急車!」
新多が腕を切ったのだ。
「かすっただけ、ヘーキヘーキ! 実はさっきお前の母ちゃんが病院を抜け出したって情報が入って、警察呼んでるんだわ。だから心配すんな」
「で、でも……」
こちらの事情などお構いなしの寿美子は「嫌あああ!」と嘆き、物凄い力で暴れる。
言葉も通じず獣のようになった母親を見ていられない。
透琉は必死で抵抗した。
「やめて、もうやめてよ! 母さん!」
二人掛かりで拘束するも、寿美子は言うことを聞かない。
床がパリン、パリンと割れ始めた。
カッターにさえ怯まなかった新多は、割れた鏡の破片を見て狼狽える。
次の瞬間「確保!」という男の声がして、ぞろぞろと人が雪崩れ込んで来た。
新多に抱えられた透琉は、寿美子から引きはがされる。
バチンっと電流が走る音がして、ミラードームは静寂に包まれた。
寿美子はプツンと糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。出血はしていないので、ただ気絶しているだけのようだ。
新多は透琉を抱きかかえたまま、スーツ姿の御門に懇願する。
「撃つな! 透琉は何もしていない!」
「数値が跳ね上がっている。今ここで保護しなければ、もっと大勢を巻き込んだ事故を起こす可能性もある」
「母親と決別した! もう問題は取り除かれた!」
「この床のヒビを見ても、そう言えるのか?」
温度のない声色が恐ろしくて、透琉はぶるっと身震いした。
どうして新多は、透琉を撃つなと言っているのだ。この人たちは一体誰なのか。どんな関係があるのだろうか。
二人が自分のことで揉めているということ以外、何一つピンとこない。
「新多君……。どういうこと? この方は、たしかうちの回りで起きた竜巻の調査していた人だよね?」
「そ、それは……」
海外のレスキュー隊のような格好をした人たちは、困惑する透琉の横を通り抜けて寿美子を担架に乗せ、建物外へと運び出す。
「こんにちは、土岐透琉さん。私はそこにいる新多の養父である御門隆一。残念ながら、竜巻の調査員ではない」
「みかど……」
養子だと言っていたので、親子で苗字が違うこともあり得るのかもしれないが、さきほどから新多と視線が一度も合わない。
新多は唇を嚙んで震えている。
「警察と救急車だけ呼んでくれって言ったのに……。なんで局長まで来るんだよ……」
「我々も警察のようなものだろう」
その言葉に新多はガクッと首を折ってうな垂れる。
御門は、新多を支える透琉に、透琉が現在置かれている状況を詳しく説明した。
そして、ぼたぼた――と鮮血が散らばった。
「新多君! いやだ……どうしよう! 血が……きゅ、救急車!」
新多が腕を切ったのだ。
「かすっただけ、ヘーキヘーキ! 実はさっきお前の母ちゃんが病院を抜け出したって情報が入って、警察呼んでるんだわ。だから心配すんな」
「で、でも……」
こちらの事情などお構いなしの寿美子は「嫌あああ!」と嘆き、物凄い力で暴れる。
言葉も通じず獣のようになった母親を見ていられない。
透琉は必死で抵抗した。
「やめて、もうやめてよ! 母さん!」
二人掛かりで拘束するも、寿美子は言うことを聞かない。
床がパリン、パリンと割れ始めた。
カッターにさえ怯まなかった新多は、割れた鏡の破片を見て狼狽える。
次の瞬間「確保!」という男の声がして、ぞろぞろと人が雪崩れ込んで来た。
新多に抱えられた透琉は、寿美子から引きはがされる。
バチンっと電流が走る音がして、ミラードームは静寂に包まれた。
寿美子はプツンと糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。出血はしていないので、ただ気絶しているだけのようだ。
新多は透琉を抱きかかえたまま、スーツ姿の御門に懇願する。
「撃つな! 透琉は何もしていない!」
「数値が跳ね上がっている。今ここで保護しなければ、もっと大勢を巻き込んだ事故を起こす可能性もある」
「母親と決別した! もう問題は取り除かれた!」
「この床のヒビを見ても、そう言えるのか?」
温度のない声色が恐ろしくて、透琉はぶるっと身震いした。
どうして新多は、透琉を撃つなと言っているのだ。この人たちは一体誰なのか。どんな関係があるのだろうか。
二人が自分のことで揉めているということ以外、何一つピンとこない。
「新多君……。どういうこと? この方は、たしかうちの回りで起きた竜巻の調査していた人だよね?」
「そ、それは……」
海外のレスキュー隊のような格好をした人たちは、困惑する透琉の横を通り抜けて寿美子を担架に乗せ、建物外へと運び出す。
「こんにちは、土岐透琉さん。私はそこにいる新多の養父である御門隆一。残念ながら、竜巻の調査員ではない」
「みかど……」
養子だと言っていたので、親子で苗字が違うこともあり得るのかもしれないが、さきほどから新多と視線が一度も合わない。
新多は唇を嚙んで震えている。
「警察と救急車だけ呼んでくれって言ったのに……。なんで局長まで来るんだよ……」
「我々も警察のようなものだろう」
その言葉に新多はガクッと首を折ってうな垂れる。
御門は、新多を支える透琉に、透琉が現在置かれている状況を詳しく説明した。
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