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 「昨日の毒殺未遂事件の詳細と、これからの警備体制についての説明です。総理、お願いします。」
 何回やっても会見はなれないなぁ。緊張で手汗が滲む。しかし、国民が見ている中でこんな所は見せれない。気合いを入れて会見に臨んだ。

 「総理、お疲れ様です。」
「うん、ありがとう。さて、ゆっくりはしてられないね。次の仕事にむかわないと。」
 今日はかなり忙しい。会見の後、アメリカ大使館の長と会談がある。これが面倒くさい。翻訳者がいるから話の面は心配ないが、色んな人に見られるのが嫌なのだ。カメラに囲まれるのはなんか嫌だ。
 こんなことは言っていられない。
 私は移動する車に乗り込んだ。



 さて、今朝の激闘は凄かった。相手は色んな手を使って応戦してきたが、澄野のおかげで全て無力化されており、簡単に潰すことが出来た。
 しかし、これからが重要な任務。総理の会談を警護するのだ。
 主にメディア関係者が会談の様子をみるのだが、このご時世だ。総理に危害を加える輩がいるかもしれない。
 
 会談するアメリカ大使館はかなりの厳重警備だった。アメリカ関係者と見られるゴツイ体つきの黒人が、防弾チョッキを来て大使館を囲っていた。
 日本の警護はアメリカ側を上回る程の人数で、至る所に警備がいる状態だった。
 どうやら会談を視聴するメディア関係者全てに持ち物検査を行っているらしく、空港でよく見られる金属探知機が置かれていた。
 「総理。ご安心ください。何かあっても私が必ず守ります。」
「ありがとう。本当に信頼できるよ。」

 総理は一瞬不安げな表情を見せたが、直ぐに普段の優しい顔に戻り、会談へ向かった。

 会談は順調に進んでいた。両者穏やかな表情で会談をしていて、総理の人柄の良さがこの雰囲気を作っているのかなと思った。
 ふとメディア関係者席に目線を向けると、一人不審な動きをしている男がいた。
 俺は咄嗟に体が動いた。
 「バーン!」
 ものすごい銃声で辺りの人々は悲鳴をあげて逃げ出した。
 「総理、ご無事ですか?」
「ありがとう。無事だよ。」
 
 俺は不審な動きをする男がカバンから何かを取り出す仕草を見せた瞬間、嫌な予感がして総理を避難させた。
 他のどの警護よりも早く、俺は総理を避難させた。
 
 しかし、ここまで立て続けて事件が起こるとは。
 何かまずいことが起きているに違いない。

 俺はその日の夜に澄野に連絡した。
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