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 総理毒殺未遂事件と名付けられた今日の試食会。犯行を行ったと見られるのは、brawlerの下部組織。
 たかが下部組織。俺にかかれば簡単に潰せれる。

 俺は事件が起きた日の次の日の早朝、下部組織へ向かった。本当は総理の家で警護をしなくてはならないのだが、仕方がない。だって潰さなければ、被害はさらに広がるからだ。
 「澄野、下部組織の拠点ってのはここか?」
「ああ。お前、本当にやるんだな笑」
「何笑ってんだよ。本気だぞ笑」
「お前にかかれば簡単か。じゃサポートはするからあとは頑張れよ。」
 俺は優秀な警護人の顔ともうひとつ裏の顔がある。それは殺し屋だ。しかし、殺し屋と言ってもただの殺し屋では無い。俺は悪事を働く奴らを殺しているのだ。
 今までも国家転覆に関わるような犯罪グループを潰してきた。まさに、俺はこの国のヒーローと言っても過言では無い。

 さて、やっちいますかね。



 「鮫川くん、おはよう。」
「総理おはようございます。本日のご予定は秘書からお聞きですか?」
「ああ、聞いたよ。会見かぁ、緊張するなぁ。」
「心配しなくても大丈夫ですよ。総理は今までの実績があるじゃないですか。」
 本当にいい子だな、鮫川くん。
 ああ、最近あっていないな。息子と妻に会いたい。
 
 私には妻と二人の息子がいた。しかし、今息子は一人しかいない。今でも夢に出てくるよ。

 「犯罪グループbrawlerの一員の少年が何者かの手によって殺害されたと警察が発表しました。」
 考えもしなかった。私が政治家として活動している中で、私の息子、ヒロシは突然いなくなった。本当に突然だった。

 ある日、いつもだったら学校に向かうために朝食を取りにリビングに来るヒロシが来なかった。私は部屋に向かったが、そこにはもぬけの殻となった部屋と一枚の置き手紙しかなかった。
 「探さないでください。ヒロシ。」
 言葉が出なかった。こんなにも愛していた息子が前触れもなくいなくなってしまったのだ。
 もちろん、妻とヒロシの弟のキリトも驚いた。
 私は直ぐに警察に連絡したが、「置き手紙に探さないでくださいと書かれているので捜査は難しいですね」と突っぱねられてしまったので、自らヒロシを探すことにした。
 だが、その努力も虚しく、最悪の知らせが届いたのだ。

 「松原さん。非常に申し上げにくいのですが...。」
 ヒロシは犯罪グループbrawlerの一員で、とある仕事でしくじったようだ。そのままヒロシは殺されてしまった。
 言葉に言い表せないほどの怒りと心にぽっかりと穴が空いたような感覚が同時に訪れ、私の精神はズタボロだった。

 しかし、妻とキリトの献身的なサポートにより、私は今や総理大臣を務められるくらいに回復した。
 あの時の家族には感謝してもしきれない。
 
 鮫川くんは、本当に、ヒロシに、似ているなぁ。
 私は懐かしい気持ちと悔しい気持ちでいっぱいになった。
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