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日記帳は何かと怖い

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 私は〇〇の事務員として働いている二十六歳だ。
 「これっていつのものですか?」
 「んーとね。これ九十年代のやつだね」
 私は仕事終わりに、家までの帰り道にある骨董品店に寄ることが日課になっている。
 この骨董品店は、初老のおじさまが店主で、私が商品を見ていると必ず話しかけてくれる。
 今私が見ているのは綺麗なスノードーム。
 見ているだけでも楽しいので私はここ一年くらい、仕事の後に大体この骨董品店に寄る。
 この店はかなり遅くの時間まで開いていて、休みの日がいつなのかもよく分からないのだ。


~別の日~

 今日も私は仕事終わりに骨董品店に寄った。
 「いいやつあるかなぁ」
 今日は給料日なので、何か良さそげなものがあれば買おうと思っていた。
 「これいい!」
 私が手に取ったのは少し古いが、何か惹きつけられる日記帳だった。
 私はこの日記を買うことにした。
 「この日記、買うのかい?」
 「はい。どうかしたんですか?」
 何故か店主のおじさんは曇った表情をした。しかし、少々気になったが、あまり気に留めず日記帳を購入した。

 「あの子、大丈夫かな...。」


  私は家に帰ってすぐにあの日記帳を開いた。
 中身は普通の365日分の日記で、シンプルなデザインだった。

 「ん?あれ?」
 私は日記帳の真ん中あたりのページを開いた。するとそこにはすでに他の人が日記を書いていたのだ。
 読み進めていくと、他の人が書いた日記は30日分。つまり1ヶ月分あったのだ。
 消そうと思ってもボールペンで書かれていて消せない。
 「あーあ、買う前にちゃんと見とくんだった。」
 かなり気に入った日記帳だったので、私はまぁまぁショックだった。
 「安かったからいいか」
 私はそう思い、日記のことを忘れようと就寝した。

 次の日のことだった。
 私はいつも乗る路線で仕事場へ向かった。いつも私は急行電車に乗る。大体出勤する時間はラッシュ時間を少し過ぎたあたりなので、そこまで混んでいなかった。
 その時だった。
 「ブーーーーーーン!!!!」
 けたたましい警笛が鳴った後すぐに、鈍い嫌な音が響いた。
 「ただいま当列車にて人身事故が発生しました。お客様には...」
 仕事遅刻確定。
 ま、サボれるからいいかと思っていると、ふと昨日の日記帳のことを思い出した。何故このタイミングで思い出したのかわからない。
 「とりあえずスマホ弄ろう」
 そう思った私は鞄の中に入れていたスマホを取り出そうとした。

 すると、入れた記憶のないがあったのだ。
 その瞬間、なんとも言えないゾクゾクとした感覚を覚えた。

「私、入れてないよね...?」

 私はまるで導かれるように日記帳を読み始めた。

 『〇月〇日。乗っている電車で人身事故が起きた。』

 鳥肌が止まらなくなった。
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