信念の弁証法

WOOPマン

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神聖な寺院のドームの下、複雑な彫刻が施された壁とひっそりと燃えるオイルランプの炎が、バラモン一団を見守っている。ランプのゆらめきは彼らの硬い表情に不吉な影を落とし、重たく煮えたぎる怨念が空気を満たしている。

「ダーラは誰も恐れていない。インドラ神すらもだ」

長老のバラモンが声を上げ、彼の鋭い鼻と目が石壁から反射する光を浴びる。その言葉に他の人々が頷き、口元が怒りで引きつった。

聖なる祠の前で、若いバラモンが落ち着きなく歩き回る。

「ダーラが、私たちの信仰を侮辱し、シュードラたちを誤った道へ導いている。それどころか、ヴァイシャやクシャトリアまで彼を信じる者が増えている。我々は、この街、マガダ国全体がダーラの冒涜によって汚されることを許してはならない」

その言葉はダーラの名に毒が混ざったかのように冷たく、憎悪が混じった。

その言葉に、寺院の空気は一層重くなり、聖なる場所は彼らの緊張と怒りによって包まれる。言葉ごとに浮かび上がる非難は、暴力の気配を帯びて空間を満たす。

「しかし、ダーラの冒涜だけが問題なわけではない。彼を信じてしまう愚かな民衆も悪い。人々は昔と変わってしまった。今は信仰心が希薄な時代だ。昔のように我々バラモンを敬わない」

会話に潜む恐怖が表面化し、部屋の空気が更に冷たく重くなる。

最年少のバラモンが落ち着きなく足を動かし、真鍮の飾りがぶつかりあって静寂を破る。その音が響きわたる中、彼が顫えながら問いかける。

「では、私たちはどうすべきなのでしょう」

全員の心に響くその質問に、長老のバラモンは厳しい目をして彼を見つめる。

「ダーラを黙らせるのだ。」

その宣言に、バラモンたちは息を吸い込み、頷く。寺院の空気が一層濃くなり、ランプが揺らめき、その闇に彼らの心に新たに投げ込まれた恐怖と決意の影を映し出す。変化への恐怖、権力の維持、伝統の保持のための闘争が、今はダーラという一人の挑戦者に向けられ、彼の声を沈黙させることにかかっている。
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