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Extra3:幸せのいろどり ―透side―
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山手にある閑静な住宅街は、昔、俺が建築課で現場監督をしていた頃、初めて担当した家がある。
何をするのも初めてで、喜んでもらえるように最善を尽くそうと、毎日遅くまで現場に行ってたっけ。
その頃、夜遅くに車で帰る時に見つけた場所。
高い丘の上にある住宅街は、夜になると夜景が綺麗で、特に公園の前は遮るものが何もなくて、見通しがよい。
「え? ここ? 公園?」
不思議そうな顔をして俺の方を見る直くんに、「前を見てごらん」と言って、フロントガラスを指差した。
「……わ……ッ」
前方が行き止まりで、ガードレールの向こう側に広がる都会の夜景に、直くんが感嘆の声をあげる。
その横顔がキラキラと輝いているように見えて……。
直くんは、素直に綺麗なものを綺麗だと、そのまま受け止める。
そんな純粋な笑顔を、俺のせいで曇らせてしまうんじゃないかって、いつも不安になるけれど……。
直くんが俺に飽きるまででいいから、それまでは俺から直くんを手放すことはないんだろうな、と考えていた。
同時に、結婚の話はなるべく先に延ばせないか、父からも言ってもらえるように頼んでみよう、なんて都合のいい事も。
「夏になると河川敷でやってる花火大会とか、ここからよく観えるんだよ」
「へえー、ここからだと、夜景と花火が一緒に見えて綺麗だろうなー」
「うん、綺麗だよ。夏になったら、一緒に観よう」
夏まで一緒に居れるかどうかも分からないのに。俺はその時、本当に心からここで一緒に花火を観たいと思っていた。
――しかし、似合ってるな。
隣を見ると、助手席で少し前のめりになって、前方の夜景を眺めている直くんが女の子にしか見えなくて、コートの下のワンピースが気になって仕方ない。
「ね、直くん。車の中だし、寒くなければ、そのコート脱いで欲しいんだけど」
「え? コート?」
「折角可愛い服を着ているのに、コート着てるとよく見えないから……」
「服は、可愛いかもだけど、俺、男だし、よく見えなくていいよ!」
そんなに恥ずかしがられると、余計に見てみたくなるんだよ。
「駄目かな……」
「いい……ですけど……恥ずかしいから、ちょっとだけだよ?」
照れながらも、直くんはシートベルトを外して、コートを脱いでくれた。
コートを右手に持って後ろの座席に腕を伸ばして置く瞬間に、ふわりと長い髪が後ろになびく。
スクエアカットの胸元から首筋のラインが綺麗で……、思わず見惚れてしまっていた。
「と、透さん、そんなに見られると……」
気が付けば、何かを言いかけた直くんの、艶のある唇に吸い寄せられるように口付けていた。
何をするのも初めてで、喜んでもらえるように最善を尽くそうと、毎日遅くまで現場に行ってたっけ。
その頃、夜遅くに車で帰る時に見つけた場所。
高い丘の上にある住宅街は、夜になると夜景が綺麗で、特に公園の前は遮るものが何もなくて、見通しがよい。
「え? ここ? 公園?」
不思議そうな顔をして俺の方を見る直くんに、「前を見てごらん」と言って、フロントガラスを指差した。
「……わ……ッ」
前方が行き止まりで、ガードレールの向こう側に広がる都会の夜景に、直くんが感嘆の声をあげる。
その横顔がキラキラと輝いているように見えて……。
直くんは、素直に綺麗なものを綺麗だと、そのまま受け止める。
そんな純粋な笑顔を、俺のせいで曇らせてしまうんじゃないかって、いつも不安になるけれど……。
直くんが俺に飽きるまででいいから、それまでは俺から直くんを手放すことはないんだろうな、と考えていた。
同時に、結婚の話はなるべく先に延ばせないか、父からも言ってもらえるように頼んでみよう、なんて都合のいい事も。
「夏になると河川敷でやってる花火大会とか、ここからよく観えるんだよ」
「へえー、ここからだと、夜景と花火が一緒に見えて綺麗だろうなー」
「うん、綺麗だよ。夏になったら、一緒に観よう」
夏まで一緒に居れるかどうかも分からないのに。俺はその時、本当に心からここで一緒に花火を観たいと思っていた。
――しかし、似合ってるな。
隣を見ると、助手席で少し前のめりになって、前方の夜景を眺めている直くんが女の子にしか見えなくて、コートの下のワンピースが気になって仕方ない。
「ね、直くん。車の中だし、寒くなければ、そのコート脱いで欲しいんだけど」
「え? コート?」
「折角可愛い服を着ているのに、コート着てるとよく見えないから……」
「服は、可愛いかもだけど、俺、男だし、よく見えなくていいよ!」
そんなに恥ずかしがられると、余計に見てみたくなるんだよ。
「駄目かな……」
「いい……ですけど……恥ずかしいから、ちょっとだけだよ?」
照れながらも、直くんはシートベルトを外して、コートを脱いでくれた。
コートを右手に持って後ろの座席に腕を伸ばして置く瞬間に、ふわりと長い髪が後ろになびく。
スクエアカットの胸元から首筋のラインが綺麗で……、思わず見惚れてしまっていた。
「と、透さん、そんなに見られると……」
気が付けば、何かを言いかけた直くんの、艶のある唇に吸い寄せられるように口付けていた。
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