極々普通の王太子、名前すら覚えて貰えず、弟に婚約者までも奪われたので王子辞めました。でも何か思っていたのと違う方向へ行ってませんか?俺!?

黄色いひよこ

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二章

見解の相違~答え合わせで知ったこと~

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そのキューブにあるのは、苦い思い出だ。

庭園のガゼボの裏の生け垣に、隠れて設置してあった小さなベンチ。

其処は意外と知られていない休憩場所で、ガゼボの張り出した屋根で日陰も出来て、絶好の隠れ休憩場所に、憩いを求めて休むサフィシルが居る。

それに気付かない彼の弟と婚約者が、ガゼボの中で逢い引きしているその場所が映って居る。

その情景が閉じこめられているキューブ、それがキットの手の上にある物なのだ。

そう、彼、サフィに取ってコレは苦い過去であるのだ。

そう思っていた。

この瞬間まで。



動揺するベンチのサフィシルを横目に、サフィが彼等の正面に立つ。

勿論、彼等とは第二王子と王太子の婚約者の事で、サフィの事は彼等には見えていない。

場面はサフィの知らない葬式の会場から何時の間にかこの場所に移っていたのだ。

そしてサフィは本当の事を此処で始めて知ったのだった。


「おいっ! エスリルッ嬢!! 好い加減兄上に、ちゃんと『愛の告白』してくれよっ!! でないと、俺、兄上に嫌われるじゃないかっっ!! 」


そう食って掛かるサフィシルの弟王子は、言葉の最後には涙声になっていた。

実はこの王子、とんでもないブラコン王子だったのだ。

そして知らぬはサフィただ独り。


「そう言われますが、とおっても、難しいのです。サフィシル様の誤解を解くには……。今此処で貴方様に呼び出されている事ですら危機的状況ですのに…… 」


扇を開いて隠すエスリル口元は、きっと困ったと、言う風に歪んでいるに違いない。

けれど見える所は若干の焦りすら見せず平常運転だ。

それとは対処的なのが第二王子で、彼は焦りと怒りをそのままその身に現している。

はっきり言ってまだまだ兄の庇護がいる、子供のような男だった。

勿論、庇護がいるような子供では無い。


「本来なら兄上の婚約者なんて、俺は認める気は無かったんだ! けど、どいつもこいつも禄な女がいやしない!? 兄上を心底好きだって言うあんたが一番まっしってほんっっとどうかしてるよっ!! 」

「上位貴族の令嬢は皆様、麗しのアルス殿下にご執心ですものね。お陰でわたくしには、敵は御座いませんもの。ありがとうございます。アルス殿下」


口元を隠してにっこり笑うエスリルに、アルスは苦虫を噛み潰したような顔をして見せた。

そんな一部始終を見ていたサフィは、プッと吹き出し笑いをこぼすと、


「コイツら、こんな事を話してたのか……。仲が良いどころか、どっちかってぇと悪くね? 」


と、サフィシルらしからぬ言葉で、笑い声を上げた。


『幻滅、したリしまシタか? 』


キットが大笑いするサフィに問い掛ければ、


「嫌、こういうしたたかな所は、世界ばしょが変わっても人は変わんないんだな。彼女、エスリルって、地球の俺の女房にソックリだよ。不思議だねぇ、居るはずのない女が此処に居る…… 」


地球のサフィと、この世界のサフィシルの人格が、上手に混ざり合いサフィと成った彼の始めての感情は、何とも言えない複雑な感情だった。

その証拠に、サフィの顔は何とも言えない複雑そうなな表情をしていた。

特に、地球のサフィの感情は、サフィシルに取ってとても難しい物だった。

何故なら、サフィシルはエスリルを愛していたものの、サフィとその妻ほど、彼女とは長く連れ添っていた訳では無かったのだから。

所謂、恋人と言うには程遠かったのである。




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