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二章
見解の相違~ さぁ答え合わせといこうか ~
しおりを挟むサフィシルこと、サフィの目前に移動してきたのは彼の過去であり、今であり、未来でもあり、それのどれでもないものであった。
それが言い切れるのは、此処が5次元だから。
そして今のサフィは2つの感情と記憶を持つ完全体でもあったから、自分の事ですら客観的に見る事が出来た。
否、今だから知れるのだ。
その数多の次元キューブの中で、
自分が見る事が出来なかった事を、彼は今になって知る事となった。
自分の世界の過去と現在と未来。
彼は己の前にスライドして来た逸れを、一つ一つ紐解いて行った。
そう、此処から先、彼は知る事となる。
己が本当は愛されていたと言う事実を…… 。
目の前で行われている光景にひっそりと息を呑んだ。
それは教会の聖堂で、沢山の人が黒い衣装に身を包み、中央の祭壇に安置されている白い柩に祈りを捧げている。
そこら中から啜り泣く声は、独りの人物を慕い敬う者達の嘆きの声だ。
辺りを慟哭で覆い尽くす光景は、棺の人物がどれ程慕われていたのか、想像に難くない。
サフィは周りの景色に溶け込むように、其処に佇んでいた。
周りの誰も彼に気付かない。
まるで亡霊のように彼は其処に居るだけだ。
一体誰の葬式なのか。
サフィは小さく首を傾げた。
ただ、王妃が柩に縋ってさめざめと涙し、王が涙をこらえて柩を見つめる姿は、サフィが目を眇める程には今更感が否めなかった。
柩の主に嫉妬したかと言えば、そうでもない。
サフィシルに取って、彼等は親と言うより王と王妃だったからだ。
親らしい事をして貰った記憶など皆無であったサフィは、柩の人物が誰であったとしても気にも止めなかった。
白いウエディングドレスを纏い、ブーケを手にした花嫁が式場に入って来るまでは。
ざわざわざわ。
ザワザワザワ。
まるでさざ波のように囁き声が引いては寄せる。
それには、悪意に似た物も混ざっていた。
「如何したのだ。サンチェル公爵令嬢、その姿はどういう事なのだ? 」
最初に言葉を発したのは国王だった。
そう、花嫁衣装を身に着けていた女性は、王太子殿下の婚約者。
彼女は王の質問には一言も応えず、持っていたブーケのリボンを解くと、パッと白い柩の上に撒き散らした。
「私の夫は生涯貴方様ただひとり……。お慕いしております、サフィシル殿下。わたくし、信じませんわ。貴方様はきっと何処かで生きております。だって……、この中は空なのですもの! 」
サフィは思わず目を見張った。
彼女の言葉が信じられない。
茫然自失でサフィは事の成り行きを見つめ続けていた。
彼女が俺を愛していたなんて……嘘だ。
サフィは、心中で唸るように呟いた。
彼女は言っていたのだ、…………を、愛している。
と。
『さフィ、アナタ聞こえテいマせんデシタよネ、彼女がヨんダ名前…… 』
キットが手に乗せているキューブがくるくると回っている。
それは、あのキューブだ。
サフィにはキューブの中身が解っていた。
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