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二章
融合した二人
しおりを挟むもう一人の彼がサフィシルの中に溶け込んで、唐突に理解した事が多々あった。
その最たる事は、溶け込んだ彼の生い立ちだった。
彼が産まれた所は、地球と言う名の次元ホールの向こう側の宇宙にある惑星で、死に別れた奥さんとの間に二人の子供を持つパパだった。
地球で『NASA』の宇宙飛行士であった彼は、最愛の妻の死と共に船を降りて父親の農園を継いだ。
だが、麦を植えていた広大な土地が、異常気象のせいで砂漠化して行く中で、『NASA』の面々は、新天地を目指し何億光年も彼方にある惑星に、宇宙飛行士を派遣する計画に数人の学者と操縦士であった彼に白羽の矢を立てた。
そう、死にゆく地球から子供達や様々な生き物を脱出させる為に……。
彼は父親だったのだ……。
サフィシルは、静かに息を吐いた。
彼の名も、フィル。
サフィシル =アンダーソン、地球生まれのアメリカ人であった。
彼がサフィシルの中に定着して、己がいた世界が彼の世界とどれだけ違うか理解した。
まるで前世の記憶のようにしっくりと馴染む彼の記憶は、『前世の記憶』と良ばれる物といかほどに違うか、実感する事があった。
それは、鮮明に覚えている彼の記憶。
その続きのように連なる、王太子サフィシルの記憶。
180年あった地球の彼の時間の殆どは、コールドスリープで費やされた時間だったので彼の見た目は若かった。
けれど、その内臓は幾度も繰り返した『睡眠』で駄目になってしまった。
彼の残された時間は、遠い移住先の惑星探査で独り取り残された仲間の女性の捜索に費やされ、無事彼女を発見し、その後地球からの移民の準備に費やされた。
勿論、その女性は後に彼の妻になっている。
そんな彼の人生を、サフィシルは記憶と5次元のキューブから読み取った。
とてつもなく充実した人生だったから、次はお前の番だ。
そう頭の中に響く思考に、サフィシルはニヤリと笑う彼の顔を思い浮かべたのだった。
『さて、ワタシはアナタのコトヲ『サフィ』と呼ンでもヨイですカ? 』
そう問いかけるのは、黒い不思議な光沢を持つ物体。
今のサフィシルには、彼が何なのかが解る。
苦楽を共にして来たと確実に言える、もう一人のサフィシルの相棒キットがこのドロイドの個別名だ。
そんなキットに、サフィシルはゆっくりと笑った。
『それでは、サフィ。あナたの世界ニイク前ニ、おサラいヲしまショう』
そうキットは無機質な声で言うと電光掲示板にニコニコと笑ったマークを点灯させたのだった。
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