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北の大森林の主
招かれざる客③
しおりを挟む「貴男方は何か勘違いしている。この森は貴男達が思っているような森では無い。此処はルリコウ家が管理する森だ。よって、近隣諸国に悪影響も与えはしないし、不可侵条約で護られている。第二王子が何と言ったかは知らないが、此処を攻め落とすとなると、ルリコウ家を敵にまわす事になるが良いのか? 」
そう言うアイセンレイトは無表情で騎士団長と対峙する。
「ルリコウ家? 聞いた事が無いな」
本気で言っているのかこの男。
この世界の神の名と、逸れを救った異世界の神の名と、四獣神の名と、世界樹と、その世界樹を守護するルリコウ家と言えば、貴族学院や、全ての国民が最低限の習い事が出来る二年制の学校で習う事柄なのだ。
修学している者なら、子供でも解る寝物語にですら語られる話に彼等は登場するのにだ。
逸れを、その基本事項を知らないと言う騎士団長は、よっぽど勉学を疎かにしていたに違いなかったと、確信出来た。
この脳筋男、やはり見た目通りなのか。
さすがにコレは、アイセンレイトも頭を抱えた。
「団長っ! 此処はあの方のお話を聞いてみては如何でしょう? 我等は王子の騎士の前に王の騎士で御座います」
「うっ、うぬっ。貴様がそう言うのならば…… 」
脳筋団長に進言したのはどうやら此処の副団長らしい。
此方はどうやら話の解る男のようで、騎士団長のたずなを殊更、上手く握っていた。
そして、この一個師団は優秀では無い。
其処が、第二王子の立ち位置とも言えた。
ふむ。
これなら簡単に番を取り返す事が出来る。
アイセンレイトはそう算段を立てた。
そう独り考えて居れば、副団長らしき男がアイセンレイトに話し掛けてきた。
「貴殿に問う。貴殿はこの魔の森の主か? 」
その問いにアイセンレイトは問いで返す。
「魔の森とは何処の事だ? 」
「この森に決まってるだろうがっ! 」
アイセンレイトと副団長の遣り取りなのに、いらぬ茶々が入る。
言わずと知れた騎士団長だ。
「事がややこしく成ります。団長は、黙っていて下さい」
随分な言われようだが、今時点では副団長に歩があった。
ピシャリと言われて、団長は口ごもる。
ぶつくさと小さな声で文句を言う辺り、まるでかかあ天下の夫婦のようだった。
逸れをきっぱり、すっぱり無視してアイセンレイトは言う。
「この森は世界の北に位置する巨大な森の為、北の大森林と呼ばれて居ます。魔の森ではありませんよ。貴男方の勘違いです」
其処でにっこりとアイセンレイトは笑った。
父親譲りの微笑みを浮かべて……。
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