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北の大森林の主
招かれざる客②
しおりを挟む守護の風を旋回させながら、アイセンレイトが空間を切り裂いて出した得物は、乾坤圏と言うドーナツ型の武器である。
勿論、哪吒の所持する武器の1つである。
外側がぐるりと一周刃になっており、ほんの少しでも触れると、切れてしまう怖ろしい武器だった。
哪吒の時は、コレを振るうと簡単に真っ二つにしていたが、アイセンレイトが使用するようになって、彼は刃を潰してしまった。
そりゃあ、刃を潰していても本気でコレを振るうと内蔵破裂で即死である。
血の海にしない程度だ。
だが、アイセンレイトがコレを振るって殺したものは、この大森林に定期的に湧く凶悪な魔物のみだった。
まぁ、魔物退治の時は、火尖鎗と言う槍の先から炎を出す槍で突いて、乾坤圏でとどめを刺しているのだが、此処では乾坤圏しか使わないので注釈としておく。
その乾坤圏でこの一個師団とやり合うのだが、まぁ、皆さんの予想通りの結果と言えよう。
賭けをしても、賭に成らないと言う奴である。
屋敷から、随分離れて待つ事数分。
敵はじわじわとアイセンレイトを取り囲み、包囲しつつ姿を現した。
騎士達は、アイセンレイトを見て息を呑んだ。
当たり前か。
年若い青年が独り、両手に輪を持って佇んでいるのだ。
側では、小さな風がくるくると舞っている。
騎士達にはそう言う風に見えていたのだ。
『魔の森の主』そう囁かれている魔物が、目前の美貌の青年だとは、魔王の概念の無いこの世界の人間にとっては思えなかった。
「誰に言われたか知らないが、今すぐ此処を去るんだ。君らは命令されただけなのだろう? 今なら無傷で返してやるから、このまま回れ右で引き返せ」
声を振り絞らなくても、アイセンレイトの声なら無条件に森は通す。
彼は返事を待った。
「我等は、ルイボス王国第二王子の命を受けて、この森の主の退治に来た。貴殿こそこのような所にいては危険だ」
そう言うのはどうやら、この一個師団の隊長らしい。
アイセンレイトはその台詞を聞いて大きく溜め息を吐いた。
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