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北の大森林の主
君を堕とす
しおりを挟む「はい、どうぞ。喉渇いたでしょう? それともお腹がすいたかな? 君が眠っていた間に夜も更けてしまったしね」
ポカンと見詰めるラスティエルを不思議に思わないのは、彼の悪戯心に起因していた。
自分が他人からどう見えているか、多少(ほんの少しね)は自覚している彼だ。
まぁ、まだまだ周りからは無自覚とは言われがちなのだが。
けれど、好かれるように、恋に堕ちるように画策する事位、赦されるだろう。
裏切り者だが、ラスティエルには婚約者も居た訳だし。
だからとは言わないが、愛される努力、逸れをしなければいけないのは、アイセンレイトの方だった。
それにあくまでも、番を認識出来るのは哪吒太子の記憶と魂を持つ、アイセンレイトだけなのだから。
愛染明王としての記憶が無い、ただの人間の少女(公爵令嬢で、弥勒と神獣玄武の娘だけど)に生まれ変わったラスティエルでは、番の認識など不可能に近かった。
さて、話を戻しましょうか。
あまりにも明るかった部屋の中のせいで、外が真っ暗になっていた事に気付かなかったラスティエルは、アイセンレイトが見やった視線の先を見て驚いていた。
窓の外は本当に真っ暗闇。
でも室内は驚く程明るい。
天井を見やると、シャンデリアでは無く横にズドンと切断されたような、半円の太陽が一つ。
それが部屋を昼間のように照らしていた。
青白い輝き1つなのに、それが広範囲に光を落とす。
太陽と違うと思えるのは、その光を見詰めて居られると言う不思議だった。
「あれは一体何なのでしょう? 」
逸れを見つめたまま問い掛けるラスティエルに、アイセンレイトは目を細めて答えた。
「あれは、蛍光灯の明かり。原理の説明は難しいから省くけど、雷の魔法を応用したようなものと思えば良い。光の加減は月明かりに近いかなぁ…… 」
そう言ったアイセンレイトをラスティエルは見やると、思わずボンッと、真っ赤に爆発した。
逸れを見たアイセンレイトは、一瞬、目を見開いたがくすくすと笑い出して、
「なるべく早く慣れて。いずれは夫婦になって、子供だって作るんだから」
そう言いながら顔を彼女に近付けると、
「僕は、本気だよ…… 」
そう、ラスティエルの心に爆弾を落とすと、総ての人を魅了するような微笑をその顔に浮かべた。
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