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北の大森林の主
せっかく会えたのに……
しおりを挟むそしてラスティエルが自室として案内されたのは、アイセンレイトの隣の部屋。
普通ならそこは、夫人の部屋になりますが、小さな屋敷の為、その辺は気にしないで居てほしいと頼まれたラスティエルです。
にこりと微笑んだ儘、「ラスと呼んで良いか」と問われコクリと頷くラスティエルに嬉しそうにしたアイセンレイトは自分もレイトと呼ぶようにと彼女に言い含めます。
こう言い含められて喜ばれるのは嬉しく思うものです。
初めての時は、呼んでほしくとも呼んで貰えなかった。
呼びたくても呼べ無かった。
そんな歯痒い思いをした2人です。
呼び合えて良かったねと、黄色いひよ子は思うのでした。
公爵家の自室に比べたら少し狭い部屋でしたけれど、調度品は女の子の心を擽るような物ばかりが揃っています。
特に猫足の三面鏡。
バスタブなんかは可愛らしくて、どこかのお姫様を彷彿とさせるようになっている。
本人はどう思っているか解らないが、彼女を思って、恥ずかしさも我慢して、妹の意見も聞きつつ8年かけて揃えた物達が集まったそんな部屋だと、きっとラスティエルにも伝わった筈だと思う。
そんな部屋で、天蓋付きのベットに横になったラスティエルは、疲れていたせいで、あっと言う間に夢の世界へと旅立ってしまったのでした。
「嬢ちゃんは眠ったようだよ…… 」
「お前、こんな所で寝っ転がるな! 自分の部屋に行けよ…… 」
アイセンレイトの部屋の長椅子には、寝そべった青年が居た。
アイセンレイトは青年の姿から、もう少年に戻っている。
寝そべった青年はアイセンレイトとは若干違った銀髪で、蒼い色の瞳を輝かせた、漢と言う字体をこんな風に読む、読み方がしっくりくる様な、見目と体格を持っていた。
「レイ…… 」
アイセンレイトに険しい表情で呼ばれた男は、人型に化けたフェンリルのレイだった。
予想通りであったでしょうか?
それはさておき、アイセンレイトとレイは何かに気付いたようにパッと見上げました。
どちらも同じ方向。
いち早いのは立っていたアイセンレイト。
間に合うと思って居ませんでしたが、何かがこの世界に押し入ったと、世界樹からの声無き発信に、ベランダに出ておりました。
数日前にも、1つ何かが落ちたと世界樹から聞いたところです。
「嫌な予感。的中しなければ良いのだけれどね…… 」
「親父殿はなんと? 」
隣へとやってきたレイが問う。
「何も…… 」
夜空を見てそう答えるアイセンレイトだった。
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