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北の大森林の主
その頃……。
しおりを挟むとある場所で。
女は金髪碧眼の見目良い男にしなだれ掛かっていた。
「わらわは、もっと楽しい事が見たいのよん❤王子様~ねえ~ん」
「そなたは何が見たいのだ? 」
「そぉねん、のたうち回って苦しんでもがいている男の姿、とかぁ❤も~う、それはス・テ・キよねん❤」
うっとりと話す女に、王子と呼ばれた男はにっこりたたと笑って彼女を見つめた。
「それは全くかまわんが、さて、誰をそうする? 」
と、王子が問うと、女は扇を口元に翳し、にやにやとした笑みを隠して答えた。
「今日、貴方のお妃候補を、殺し損ねたでしょう……。その殺せなかった男に責任を取って貰いましょう❤キャハ❤良い考えよねっ❤ダッキって賢いわぁ❤そうしましょうよん❤」
そう自分の名をダッキと呼んだ女がパチンと音を立てて扇を閉じた。
そして、暫くして連れて来られたのはあの隊長さんだった。
一体何があったのか、そんな様子できょろきょろとする隊長に、ダッキはにっこりと扇越しに微笑んだ。
「あなたが、あの子を殺せなかった騎士さんねん❤お陰で太公望ちゃん候補が保護しちゃったじゃないのん💢よってお仕置きしちゃうからぁん❤」
と、ハートを散らしながらも恐ろしい事を言った後、「王子様、やっちゃって❤」と、相変わらずの鬱陶しい口調で言ってのけた(こいつ多分、王子の名前覚えてないぞ)。
隊長は両腕を兵士に拘束されても、意味が解らずきょろついた。
そして当の王子は、ダッキの目の前で虚ろな眼差しのまま、隊長の左足を股の付け根から切り落とした。
「ギャアアアアアアアアアアア」
まるで断末魔の叫びのようだった。
ダッキがコロコロと笑う。
「素敵ですわん❤あなた❤」
この女も、この王子も、神経が普通では無い。
「ダッキが喜ぶなら…… 」
王子はそう言って今一度剣を振るった。
隊長の末路は、いわぬものがな。
両手両足を切り落とされても、しばらく生きているのが人間である。
その現実が、隊長にとっての哀れだった。
「うふふふふ❤あははははは❤いいわ❤とおっても❤」
コロコロと笑う女の背後に、尻尾のような影がゆらゆらと揺れている事に、誰も気付かなかった。
それは複数。
各々違う方向に、ゆらゆらと揺れていた。
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