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大森林の小さな家
ラスティエルとアイセンレイトの温室⑤
しおりを挟む慌てふためくアイセンレイトに、半泣き状態のラスティエルは、首をふりふり否定の言葉を募った。
「違いますぅ、アイセンレイト様は何も悪くありませんっっ。駄目な子はわたくしなのですっ。貴方様の前ですぐ気を失ってしまいますわたくしですのに、きちんと抱き締めて欲しいだ等と思うわたくしの、なんと浅ましき事か! 」
「えっ……、と……、抱き締めちゃっても良いの? 」
「はい……、わたくしにも気付いた事が御座います。ですから、恥ずかしいですけれど、もう気を失ったりは致しません」
「ラス…… 」
ゆっくりと優しく抱き寄せて、柔らかく、けれど身体を密着させて抱きしめるアイセンレイトは、其れだけで感無量であった。
けれど、安心は出来ない。
この後に何時もラスティエルは気を失うのだ。
安心は出来ない(大切な事は二度言う)。
そんな彼に、ラスティエルはなけなしの勇気を振り絞って、両手をアイセンレイトの背中に添わせた。
ピクリとアイセンレイトの肩が揺れた瞬間、彼の口から切なげな甘い声が漏れた。
「ラスティエル、好きだ」
と。
そして彼は、愛しの彼女を、力一杯抱き締めたのだった。
『ちっ、結局俺はこいつらの仲を取り持っただけだったのか。癪に障る』
「癪に障るのは、僕の方だよ。魔樹。未遂とは言え、僕の番に手を出したんだから、氷付けにされても文句は言えないんだよ…… 」
アイセンレイトはラスティエルを抱き締めたまま、魔樹に視線をやり言い放った。
だが、魔樹も負けてはいなかった。
『あんたは良いよなぁ、世界樹。仮にも番って奴がいるから。俺なんて、独り切りで苗床すら与えられず、朽ちる未来しか見えない…』
吐き捨てるように言う魔樹が気になったのか、ラスティエルは、アイセンレイトの腕の中で身を捩り、今一度、魔樹の姿が見えるよう向きを変えた。
相変わらずだが、姿だけはアイセンレイトに良く似ている。
だが今はきちんと衣服を着用していて、葉の色と同じ緑の絣の着物を、粋に着崩していた。
そんな奴にアイセンレイトは眉をしかめて言った。
「お前には、番になれる最高に相性の良い女の子を置いた筈だが? 」
『あのなぁ!? 世界樹、あれは魔樹じゃない!ただの桜じゃないかっ!! 』
その悲痛な叫びに、ラスティエルは弾かれたように魔樹を見た。
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