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大森林の小さな家
ラスティエルと世界樹
しおりを挟むラスティエルが力を注ぐ以上にアイセンレイトから戻ってくる力は多く、彼女の身体的負担を軽減させていた。
改めて、アイセンレイトの力の奔流に触れてみて、ラスティエルは、彼の力に巨大過ぎる大木の幹を見た。
── これは一体何なのでしょう ──
幹の大きさを把握すべく左右を見てみるが、それは壁のように見えるだけで、見止める事が出来ない。
上空も同じく壁にしか見えず、足元は盛り上がり波打ち、根のような物が地面から顔を出し、見て取れる。
樹木なのだろう。
それ自体、スケールが違う。
桜の魔樹達とは全然違う。
ラスティエルが見たのは(感じた)これが初めてだが、この大木が俗に言う世界樹なのだと思った。
── 世界樹とアイセンレイト様の関係……。一体如何なるものなのでしょう ──
ラスティエルは考えますが、一向に何も見えて来ません。
彼女は漸く、自分はアイセンレイトの何も知らないのだと言う事に気が付いた。
ラスティエルにとって、それがとても悔しく、そして、悲しかった。
ラスティエルは、今、本当にアイセンレイトを知りたいと思った。
此処はアイセンレイトの力が、ラスティエルに見せた世界。
言ってしまえば、アイセンレイトの心の中とも言える。
他者の心に寄り添い癒やす事が出来るのも、『玄武の巫女』である彼女の母の血を継いだ、ラスティエルの能力の一つだ。
彼女も叉巫女であり、そうであるが故、隣国の王太子の婚約者に祭り上げられた、と言うのが彼女の婚約の理由なのだ。
『巫女』の存在が軽視され、政治の駒に使われた。
その対応に心底腹を立てたのが、アイセンレイトの父である薬師如来であった訳だが、彼が何をしたのかは、また、別の話である。
まぁ、話を戻すが、そう言った訳で彼女が、アイセンレイトの深層心理の一端に触れているのだが。
ラスティエルはその自覚が有るのだろうか。
ラスティエルは徐にピトリとその身を世界樹へと押し付けた。
この世界は、アイセンレイトの世界なのに彼が何処にも居ない。
居るべき人が居ない。
そう思って焦って涙ぐんでいたラスティエルは、唐突にふと気付いた。
自分がふと思った事が正解だったのか。
逸れを確かめる為の、全身を使っての世界樹へのハグであった。
── ラス……、僕の番 ──
「アイセンレイト様……。やはり、世界樹は、貴方様でしたのね…… 」
ラスティエルは世界樹に抱き付いたまま、うっとりとした表情を見せて、そう呟いた。
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