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動き出す
ラスティエルと女禍②
しおりを挟むラスティエルは、後ろから女禍に抱きつかれて居た。
辺りは真っ暗闇で、空間に自分達だけがぷっかりと浮かんでいた。
此処は女禍の精神世界。
これ程までの暗闇に閉じ込められている彼女は、一体誰なのだろうと、ラスティエルは彼女に興味を抱く。
── アイセンレイト様は何故、この女性にあんなにも冷たかったのかしら? ──
そう、疑問が浮かぶ。
ラスティエルの命を狙い、アイセンレイトの命をも狙った騎士団長にまで慈悲を掛けたアイセンレイトが、女禍には心底冷たい理由など推して知るべしである。
けれど、ラスティエルは根本を知らない。
女禍を知らないし、彼女が何をしたのかも知らない。
だから推し量る事など出来はしないのだが。
だからだろうか、ラスティエルは女禍に雁字搦めにされていても、憎めずにいた。
一人ぼっちで寂しがる女禍も、紛う方無き事なのだ。
そんな中、女禍がラスティエルを押しのけて闇の世界を浮上しようとする。
そんな事をされれば、ラスティエルは此処に捕らわれて出れなくなってしまう。
そんな折の
「嫌だ。ラス、主導権を握られるな! この身体は君の物だろう……」
と、言うアイセンレイトの強い意志の籠もった彼の声が彼女に届いた。
暗闇に一条の光。
アイセンレイトが繋げたそれは、ラスティエルに取って蜘蛛の糸そのものだった。
「駄目よ、貴女。この身はわたくしのもの。助ける代わりに大人しくなさいな…… 」
と、アイセンレイトの腕の中でのたまうラスティエルは、毅然としていて強かった。
ふっとアイセンレイトが笑む。
その笑みにラスティエルの中の女禍が反応した。
『おおおおおお、伏羲。何故此処に伏羲がおる』
「ふっき? 誰の事ですの? 」
女禍の戦慄きに、ラスティエルは怪訝そうに呟くと、アイセンレイトが唇が触れ合いそうな至近距離で囁いた。
「伏羲はラスティエルの中に逃げ込んだ女の兄にして、夫で、その女を滅ぼした男だ。故あって今僕の中に居る。逸れをその女が感じ度って居るんだよ…… 」
と、発言したのだ。
ラスティエルはその言葉に目を見開き、やがて納得するかのように瞑目した。
「アイセンレイト様、その伏羲とやらはこの悲しみに支配された哀れな魂を追い落とすおつもりですか? 」
ラスティエルは再度目を開いた時、そうアイセンレイトに告げていた。
彼女に取って、それはかなり重要な事だった為に、問いかけずには居られなかったのだ。。
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