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動き出す
ラスティエルと女禍
しおりを挟む『助けてたもれ……。妾を独りにしないで……。妾はもう………… 』
赤い宝石が点滅する。
ラスティエルの手のひらに、そっと握られている宝石の光が指の間からこぼれ出て、目が眩む。
「『いけない逸れを離せ』」
多重音声のように、2つの声が重なって聞こえる。
アイセンレイトの唇から発せられる2つの声。
それに反応して、宝石が尚一層輝きを増した。
『おぉぉぉぉ……、誰か、誰か、妾を隠しておくれ! 見られとう無いのじゃ…… 』
ラスティエルは、声の主が握り締めた赤い宝石だと気付く。
「ラス、逸れを離せ…… 」
今度はアイセンレイト1人っきりの声。
「駄目です。このままこの人を放ってはいられません」
「けれど、逸れをラスが持つ必要もいわれも無い!」
ラスティエルの言葉に、アイセンレイトの言い分は宝石の声に対して何処までも冷たい。
その理由をラスティエルは知らないから、アイセンレイトがとても冷たく感じた。
この宝石は救いを、助けを求めて居るのに、何故、アイセンレイトはこの声の主に冷たいのだろうと。
水の上にポトンと落ちた墨のように、ラスティエルの中に落ちた疑問と不信はラスティエルの心を黒く滲ませた。
其処に、女禍の欠片は付け込んだのだ。
ラスティエルの掌から溶け込むように侵入していく宝石。
逸れを止める事は、流石のアイセンレイトでも出来なかった。
『あぁ、あぁ、妾を助けてたもれ…… 』
ラスティエルの体内に入り込んだ女禍の意識は、救いを求めた彼女の意識に絡み付いた。
まるで蛇が獲物を縛り上げるかのように……。
「ラス『止めろっ!』!」
アイセンレイトの唇からこぼれ落ちた声は、2人の男の声。
ひとりはアイセンレイト。
もう一人は…………。
「『伏羲妾の……』」
アイセンレイトがラスティエルの腰を抱え、密着させるように抱き込むそのひとから発せられた言葉は、彼女が知る事の無い男の名。
即ち、
「『女禍……』……」
アイセンレイトと伏羲が同時に呟いた、名前の女が、ラスティエルの身体を乗っ取った瞬間だった。
「放してたもれ…… 」
「嫌だ。ラス、主導権を握られるな! この身体は君の物だろう……」
身じろぎするラスティエルは、ラスティエルでは無いとはっきり見て取れた。
本物のラスティエルにしては、彼女は色っぽい。
ドキリとする程、女禍に支配されたラスティエルは…………、
色っぽかった。
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