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朱色の欠片
妲己と太公望②
しおりを挟む「ちっ、面倒な奴が来た…… 」
呟くアイセンレイトに、妲己がニコッと笑う。
「あらぁん、これはこれは。次代の太公望ちゃん候補くんじゃないのん♥ あたしは妲己って言うの、よろしくねん♥ 」
くねくねと妲己が身を捻ると、領布がふわふわと揺れる。
普通なら、これで……。
「ええぇっ……、なんで、魅了が効かないの? うふふ、変わってるのねん、貴方って♥ 」
そう、妲己の言う通り魅了が掛かる筈なのだ。
普通なら。
だが、アイセンレイト自体普通では無いと言う公然の事実を彼女は知らなかったし、今、彼の中には太公望が居るので、妲己の思惑通りに事が運ぶ筈など皆無であった。
「残念だったね、僕に魅了など効きはしないよ。どんなに魅力的に装うとも、僕に取ってあんたは只の『九尾の狐』だ」
妲己と対峙するアイセンレイトは、余裕綽々としているが、彼と口論中の相手である妲己と言えば、若干表情を歪め悔しそうな顔をしていた。
「あぁ、もう。お話にならないわねっ。太公望ちゃん、女禍様を滅ぼした貴方が、何故、今になって女禍様を庇うのかしらん? 」
『コレでも女禍は儂の連れ合いだからの。儂も愛おしい妹の最後の望み位は叶えてやろうと思ったしのぅ』
そうにっこりと笑ってのたまうのは、アイセンレイトの身体を借りた太公望。
不思議とアイセンレイトの口を借りて話していても声が違う。
それも仙人の力と理のせいなのか、はたまたアイセンレイト自身の成せる技なのか。
良く解らないが、器用なものである。
「あらぁん♥ 女禍様の願いを太公望ちゃんが叶えるのん? それはとおっても偽善よね♥ 聞いてあきれるわん♥ 」
『ならば妲己、そなたは何のために女禍の欠片を集める? 』
妲己の言葉に、太公望は険しい声で彼女に言った。
詰め寄ったと、言って良かった。
「変な太公望ちゃん。地球の大地に還すに決まってるじゃない♥ 」
そう言う妲己は、言葉の割に至極真面目な顔をして太公望を見たのだった。
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