77 / 86
揃う
壊れかけのフィリー
しおりを挟む「じつはね、あたしも詳しい事は知らないんだ。にいにいは、あたしには詳しい事は言ってくれないし、逸れを知ってあたしの態度が変わる訳でも無いしね。あたしが言える事は、にいにいはあの人の記憶があるだけで、アイセンレイトという名前のあたしのお兄ちゃんなの」
にっこりと笑って力説するフィリーだが、答えになっていません。
ええ、はい、この娘っ子はこういう女の子です。
ラスティエルはパチクリと目を瞬かせると、どことなくと言うか、何となく、自分折り合いを付けるように目を閉じた。
教えてくれるといったフィリーは、結局何も教えてくれない。
当たり前か、このような事柄を、身内とは言え、他人に教えて貰う事では無いし、ましてや、本人に無理矢理聞く事でも無い。
彼女は、何時かアイセンレイト本人に聞ける日が有れば聞いてみたいと心に思い、再び瞳を開いた。
「フィリー様…… 」
「うんうん、様は要らないよ~、フィーって呼んで!! 」
ラスティエルの呼び掛けにフィリーはうんうんと頷くと瞳を輝かせて、ずずいっと彼女に顔を近付けた。
とんでもなく、恥ずかしげも無く、本当に近い位置に。
「ラスお姉様、あたしは小さい時からお兄様が昔の自分の事で苦しむ姿を見て来たの。だから兄様にはひと一倍幸せになって欲しいと思っているのよ。心底ね。だから、決してお兄様を裏切る様な事はしないでね」
そう言ってラスティエルを覗き込むフィリーの表情は、彼女が見た事もないと思う程に真剣過ぎる表情だった。
「裏切る? 」
フィリーの言葉に、ラスティエルは不思議そうな声音で彼女の語尾を繰り返す。
ラスティエルが、アイセンレイトを裏切るなどと万が一にも有り得ない。
純粋培養された箱入り娘なラスなのだから、何をして裏切りに値するのか、さっぱり解らなかった。
だから首を傾げた。
こてん、と言う風に。
ソレがフィリーの心情をくすぐった。
── あぁ~っ、なんて尊いの……。流石、ラスお姉様だわっ…… ──
と、クラクラと眩暈を起こしてしまった。
こういう所が如何せんフィリーの残念な所であった。
「アイセンレイト様は、共に人生を歩いて行くと誓ったお方ですわ。幼き頃に出会い、わたくしを番だと仰って下さいました。わたくし、どんなに辛いお妃教育でもあの方の言葉を思い返すだけで頑張れましたの…… 」
ラスティエルは、眩暈を起こすフィリーに向かってふわりと笑って……。
フィリーは慌てて鼻を隠すように押さえ込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】
日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる