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③
しおりを挟む────ええっと、真紘さんは?
相も変わらず、この時間、此処に真紘は居ない。
結芽は……今日はオフだ。
────平日だから、真紘さんはお仕事なのね。
リビングを通過して、バスルームを目指す結芽だけれど、リビングのガラステーブルには、新しく用意されたのであろう衣服が、綺麗に畳まれて乗せられている。
真紘が、乱暴な手付きで脱がせた衣服達は綺麗にかたずけられたのか、何処にも落ちてはいなかった。
玄関の廊下から寝室まで、移動の間に剥がされ落とされていたのに。
昨夜はそれらが転々と散らばり、彼の部屋のベットに投げ出される頃には結芽は、産まれた時の姿にされていた。
昼間の真紘は、結芽を自社商品として扱うのに、夜の彼は結芽を、愛玩人形のように愛でるのだ。
いや、違ったか。
真紘の心の内。
その場所に、結芽に対する愛なぞ、存在しない…………。
一方通行なのだと、結芽は独り感じ取っていた。
ダイニングには、冷めた朝食。
自分はいまだに食べたら吐く癖に、結芽にはしっかり食べさせる真紘。
亜依が死んで、もう一年が経つと言うのに、真紘の傷は、まだ癒えずにいる。
────あたしは、どうすれば…………、どうしたら貴方を……。
考えてもどうしようも無いのかも知れない。
結芽はそう考えると、お風呂場へと脚を進めた。
2人抱き合った名残でべたついた身体をスッキリさせて、ダイニングに移動した結芽。
其処には喫茶店のモーニングさながらのメニューが並んでいた。
今日は、目玉焼きモーニング。
パンにサラダ、カップスープ。
どれも手作りで、温めた朝食は美味しそうだ。
ダイニングテーブルの上の、可愛らしいトースターから、ポンと山型食パンが飛び出す。
狐色に仕上がったパンにたっぷりとバターを塗り、一口かじった。
可愛いトースターを見つめ、結芽は物思いにふける。
この家に、亜依を偲ぶ品はひとつも無い。
真紘が、総て捨てた。
生活に支障をきたす程、彼はとことん捨てていった。
今は、結芽と二人で選んだ物と、結芽が選んだ物と、不充だろうと、うちの社長(彼の実姉)が持って来た物とで埋め尽くされていた。
結芽が毎夜蹂躙されるベットも、実は新調されていた。
──── 亜依と、その彼氏が愛し合っていたかも知れないでしょう? ────
──── そんなベットで寝るのは嫌だから。
そう呟いて、真紘は真っ先に捨てたのだ。
そして、新しく届いたベットで、結芽は、真紘の腕の中に収まった。
──── その夜、あたしは真紘さんに総てを捧げた。
真紘さんは、あたしの初めての人。
そして ────
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