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御劔家と如月家
しおりを挟む俺は久しぶりに実家の門の前に立っていた。
此処には実の両親と、義理の両親が一緒に住んでいる。
俺自身も、高校卒業する迄は此処にいた。
別に居ずらい訳じゃ無い。
単に、大学に通うには遠過ぎただけだ。
俺と姉は、実は年齢が27離れている。
俺は、母が44の時に出来た子で(所謂、恥かきっ子と言う奴だ)、20歳で結婚した姉に子供が望め無いと知って、母が晩年に産んだ俺を、養子にしたいと姉夫婦が直談判したのが、俺が産まれた直後だったらしい。
知らない子供を養子にするより、血を分けた弟の方が良いと思うのは、致し方ない事だ。
そんな事情で、俺の戸籍の位置付けはちょっとややこしくなっている。
家の門構えは、一言で言うと重厚。
家も、どちらかと言うと『屋敷』と言う方がしっくり行った。
現代から後退するような門を開けて中に入る。
白い玉砂利と飛び石。
綺麗に剪定された庭木に、大きな岩を流れる水は人工的に造られた滝で、池の中へ流れ落ちている。
その奥に、まるで老舗旅館かと思うような佇まいの日本家屋があった。
18の歳まで住んでいた家。
あまり帰りたく無かったんだけどな……。
俺は溜め息を1つ付くと、玄関の引き戸を思いっ切り引いた。
「お帰り、真紘」
玄関に佇むのは、初老の婦人。
うっ………、びっくりした。
この人、一体何時から此処に居たんだよ。
俺、帰る時間なんて言って無かったよ。
母さん。
「母さん、一体何時から居んだよ此処に……。風邪引いたらどうすんの」
「大丈夫よ~。彩花が門にセンサー付けたから、誰か帰って来たな~って解るの~」
このユルっとしたのが実母だ。
因みに『彩花』ってのが義母であり、姉でもあり、俺の勤め先の社長だ。
「母さん、取り敢えず中入ろ」
俺は母さんを促して家に上がった。
戸籍上では姉が母だが、実際はそうでも無い。
俺を産んだ母は、やはり母親で姉の替わりに俺を育て上げた。
姉夫婦が欲したのはあくまでも後継ぎで。
もし俺が2人の実子であったのなら、あの2人が俺を育てたのだろうか。
あぁ、なんて事を考えてもまるっきり意味なんて無い。
だから俺は、義理の両親を『姉』、『義兄』と呼んでいる。
「父さんは、どうしたの? 出て来ないけど? 」
「真紘が帰って来ると知って、朝っぱらからいそいそと海釣りに行ったわよ。鯛釣ってくるんだって息巻いてたわ。ふふっ、坊主に成らなければ良いんだけれど」
母さんがそう言ってコロコロと笑う。
父さんは早い内に跡目を姉に譲ると、楽隠居を開始した。
総ては愛する母さんの為に。
俺の所属する会社、『サングリア』は、父さんが設立した会社だった。
「それはそうと、義兄さんと、姉さんは? 」
「彩花は色んな人引き連れてもう直ぐ帰宅するわ。省吾さんはもう少しかかるわね」
「そっか…………。義兄は相変わらず? 」
「そうね………。『相変わらず』よ。手ぐすね引いて待ってるみたいだから、気張りなさいよ。私、結芽ちゃん、気に入ってるから。不思議なものね。貴方をどん底へ落としたのが亜依ちゃんなら、救い出したのが結芽ちゃん。双子なのにこうも違うのよね…………」
母さんは、庭に隣接する廊下を抜けながら蒼い蒼い空を見上げた。
「結芽ちゃん、早くお嫁さんに来てくれないかしら……。おかあさん、こんなに楽しみにしてるのに、肝心の息子はヘタレだから未だにプロポーズは無しときてる…………はあぁぁぁ……おかーさん、憂鬱❤」
何処が憂鬱なんだよ。
語尾にハートマークが見えてるよ。
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