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②
しおりを挟む「真紘、取り敢えず荷物降ろしてらっしゃい。部屋はそのままにしてあるから。降ろしたらリビングにいらっしゃい。一緒にお茶しましょう」
母さんが俺の部屋の前で立ち止まるとそう言った。
俺の部屋も、長い廊下と庭に面していて、障子の引き戸だ。
けど、開けてみると、意外と中は洋間の造りに成っていて。
荷物の殆どは此処に置いて行っているから、高校生の時のまま、此処だけ時間が止まって見えた。
塵ひとつ無く、綺麗にかたずけられている部屋を見て、僅かながら罪悪感が心を過ぎる。
前回この家に立ち寄ったのは何時だったか?
随分と帰って居なかった事に、今一度思い当たって、俺は、荷物を降ろしながら溜め息を付いた。
両親共に、寂しかったに違いない。
ことり。
ダイニングテーブルの決まった場所に座ると、紅茶のカップが置かれた。
今日は、母さんの好みで紅茶らしい。
目の前に母さんが座って、一口紅茶を啜って言った。
「真紘……、また、あのバイトするんですってね。大丈夫? かあさん心配 」
「ん、大丈夫だよ……。今度は俺の意志でやる事だから 」
本当に心配そうな母さんの声音。
あの頃を思い出して心配なんだろう。
本当、『mahiro』には振り回されたから。
母さんは、逸れを間近で見て来ていたから。
とても心配してくれている。
「お前が良いと言うんだったら、かあさんもう何も言わないけど……何かあったらちゃんと話してよ。父さんもかあさんも真紘の味方なんだから……」
母さんの言葉に、俺は黙って頷いた。
沈黙。
紅茶のカップを置く音。
ただそれだけがやけに響いた時、キッチンの壁に設置しているインターホンがポロンと音を奏でた。
「ん? 」
顔を上げる俺に、
「きっと彩花ちゃんだわ。今の、門のセンサーが反応した音ね」
「そ、なんだ…………」
そんな会話をしていたら、玄関の方からけたたましい声が響いて来た。
「真紘~っ! 居るか~!! 大変だっ!! 」
バンっと言う音と共に、どやどやと入ってきたのは、案の定、姉さんだった。
「合坂に嗅ぎ付けられた!! 『Yume』との共演押し切られた! ! ごめん阻止出来なかった!! 」
ゼイゼイと息せききる姉に、俺は、問い掛けた。
だって、可笑しいじゃ無いか。
企画段階で、合坂は弾かれた筈なんだ。
「何処から漏れた? たかだか宝石店のCMに……。社長、この話、他に知ってる人物は? 」
「私とお前と結芽以外………… 、省吾………。まさか……」
「確定だな、そのまさかだよ。義兄さんがリークしたんだ……」
俺の言葉に、社長は目を見開いた。
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