24 / 37
②
しおりを挟む「真紘、取り敢えず荷物降ろしてらっしゃい。部屋はそのままにしてあるから。降ろしたらリビングにいらっしゃい。一緒にお茶しましょう」
母さんが俺の部屋の前で立ち止まるとそう言った。
俺の部屋も、長い廊下と庭に面していて、障子の引き戸だ。
けど、開けてみると、意外と中は洋間の造りに成っていて。
荷物の殆どは此処に置いて行っているから、高校生の時のまま、此処だけ時間が止まって見えた。
塵ひとつ無く、綺麗にかたずけられている部屋を見て、僅かながら罪悪感が心を過ぎる。
前回この家に立ち寄ったのは何時だったか?
随分と帰って居なかった事に、今一度思い当たって、俺は、荷物を降ろしながら溜め息を付いた。
両親共に、寂しかったに違いない。
ことり。
ダイニングテーブルの決まった場所に座ると、紅茶のカップが置かれた。
今日は、母さんの好みで紅茶らしい。
目の前に母さんが座って、一口紅茶を啜って言った。
「真紘……、また、あのバイトするんですってね。大丈夫? かあさん心配 」
「ん、大丈夫だよ……。今度は俺の意志でやる事だから 」
本当に心配そうな母さんの声音。
あの頃を思い出して心配なんだろう。
本当、『mahiro』には振り回されたから。
母さんは、逸れを間近で見て来ていたから。
とても心配してくれている。
「お前が良いと言うんだったら、かあさんもう何も言わないけど……何かあったらちゃんと話してよ。父さんもかあさんも真紘の味方なんだから……」
母さんの言葉に、俺は黙って頷いた。
沈黙。
紅茶のカップを置く音。
ただそれだけがやけに響いた時、キッチンの壁に設置しているインターホンがポロンと音を奏でた。
「ん? 」
顔を上げる俺に、
「きっと彩花ちゃんだわ。今の、門のセンサーが反応した音ね」
「そ、なんだ…………」
そんな会話をしていたら、玄関の方からけたたましい声が響いて来た。
「真紘~っ! 居るか~!! 大変だっ!! 」
バンっと言う音と共に、どやどやと入ってきたのは、案の定、姉さんだった。
「合坂に嗅ぎ付けられた!! 『Yume』との共演押し切られた! ! ごめん阻止出来なかった!! 」
ゼイゼイと息せききる姉に、俺は、問い掛けた。
だって、可笑しいじゃ無いか。
企画段階で、合坂は弾かれた筈なんだ。
「何処から漏れた? たかだか宝石店のCMに……。社長、この話、他に知ってる人物は? 」
「私とお前と結芽以外………… 、省吾………。まさか……」
「確定だな、そのまさかだよ。義兄さんがリークしたんだ……」
俺の言葉に、社長は目を見開いた。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる