無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

文字の大きさ
13 / 220
長い1日の始まり

傍迷惑な転生者

しおりを挟む

   「お前達が我らを断罪すると? 」


   漸く皇太子がぽやんから解放されたのか、堅い声音で薬師をにらみつけながら言い放つ。


   「私達なら、そんなまどろっこしい事は、しませんよ。ある程度の状況は、其処の馬鹿男爵令嬢が教えて下さいましたしね。私達は、貴方達を此処から逃げないように拘束し、速攻でこの箱庭世界の神獣と、この国の皇帝夫妻を転移させるだけです。あ、全て問答無用で行いますから。覚悟して下さいね」


   薬師は、にっこりと唇の端だけを吊り上げ、笑みの形を二人に見せ付けた。


『シャラ~ン』『シャンシャン』と、高く美しい音色がして、薬師の右手には金色に輝く錫杖が握られた。

   黒い伸縮性の高いシャツに、黒のスラックスに、丈の長めの薄手のコート、そして、動く事を重視した皮の素材で作られたブーツ。

   そんな現代地球風の服装にその身を包んだ薬師に、錫杖は、どう見ても合わない。

   本当は、錫杖こんな物無くても力は行使出来たのだが、インパクトに欠けると昔、日光に言われたので面倒だが使うようにしていた。


   それを見て、何故か男爵令嬢が「ああぁーっ!! 」と、大声を上げた。

   薬師に向かって、無礼にも仁王立ちでビシッと指を差す。


    「それっ! 錫杖っっ!? 」

   「おやっ? 貴女、コレが何かご存知で? 」


   と、薬師が問い掛けた所、エアリアルはドヤ顔で言い放った。

   
   「勿論!! あたし、前世は歴女で、お寺に仏像大好きっ子だったもん! 」


   男爵令嬢の意外な言葉に、「おいおい、マジかよ…… 」と、薬師の真後ろから、月光の呆れた声が聞こえる。


   ── まぁ、兎に角何となくだが、この騒動の発端と原因は、解ったような気がする──


   薬師は、心の中で呆れて息を吐いた。


   「ねーねー貴方って密教か何かのお坊様? 地球の人なのよね。召喚されたの? あたしは転生者で地球人で生まれは日本だったの。日本名は相模 笙子。ね、ね、貴方のお名前は? スッゴいイケメンよね。服装だって地球の物だし! 」


   煩くまくし立てる男爵令嬢に、目を見張ったのは、リックスだった。


   「エアリアル嬢、そなたいったい何を申している? 」

   「煩いなぁ、あたしはあの人と話しているの、リックスは黙ってて!! 」


  随分な扱いである。

   いささかリックスには同情する。

   エアリアル男爵令嬢の勢いに、立ち上がっていたリックスはストンとくずおれるように座り込んだ。

   生きるか死ぬか、そんな状況下に居るというのに、エアリアルの馬鹿さ加減にリックスは辟易した。

   何故こんな女を愛し、ナディアを差し置いて慈しんだのだろう。

   後悔してもどうしようもない。

   リックスは、ほとほと己の馬鹿さ加減に、心の中で嘆いた。


   後の祭と言う言葉がしっくり来ると、心が読める薬師と月光は、リックスにほんの少し(爪の先程も無い程度だが)同情したのだった。

しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...