無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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長い1日の始まり

ルナティの替わりに…

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   「俺は薬師だ。勇者カイトなんて奴じゃない」


   「薬師様~、体裁成ってませんよ~素面に成ってますよ~」そんな風に日光が後ろからコッソリ言っているが、薬師はそれどころでは無い。

   誤解を解くのは早い方が良い。


   「元々、この世界には『勇者』も『聖女』も居ただろう? だから話として成り立っていた訳だし」

   「お話…?  良く解りませんが、産まれる筈の『勇者』が産まれなかったのは『聖女』が、こんな風になったせいもあるやもしれませんね」


   ルナティがちらりと見やったのは、結界の中の瘴気にまみれた『聖女』だった者。

   
   「この方は、もう元には戻れないのですよね…… 」

   「そうだな。死なせてやるのも救いのひとつだ」


   ルナティの言葉に、薬師が答える。

   救いの手を持つ薬師の言葉が、こんなに重く感じる事はない。

   儚い命の重さを知る神の言葉が、ずしりとルナティにのし掛かる。

   やるせない。


   「聖獣ルナティ。貴方では荷が重いでしょう。私がやりましょう。但し、今回だけですよ」


   一瞬の内に体裁を立て直す薬師。

   有る意味、現金である。


   薬師がぬいぐるみにさせられたルナティを抱き上げ、そのままナディアの腕に預けた。


   「ナディア嬢、彼を預かって頂けますか? 己の加護していた者の末路を見るのは、彼には酷と言うもの。まぁ、この世界を統べる者としては、彼には見届ける義務が生じる訳ですが、其処は年若い神だと言う事に免じて、今回だけ特別措置を取る事にしました」


   丁寧かつ尊大な言葉を紡ぐ薬師からルナティを受け取りつつ、ナディアは首を傾げながら薬師に問い掛けた。


   「それでは薬師様が辛い目に合いますでしょう。その様な事…………!」

   「私は大丈夫。幾度も見送り、この手にもかけてきました。今更1人増えても大した事は有りませんよ」


   非常にも聞こえる薬師の言葉。

   だからと言って、全然平気という訳では無いと、ナディアは、何とはなく気付いてしまっていた。

   だって、ねぇ。

   ナディアは、記憶こそ無いものの前世は凪だ。

   薬師の辛さや感情は、肌で感じてしまう。

   心は薬師に共鳴して、憂鬱な気持ちで満ち満ちた。

   「ナディア嬢。後できちんと話しましょう。私の事と、貴女の事、そして凪の事を……… 」


   薬師はそう言うと結界に包まれた元聖女を連れてその場から搔 き消えた。



   「あの……、あの御方はエアリアルを連れてどちらへ行かれたのでしょう?」


   ルナティの問い掛けに答えたのは、日光だった。


   「多分、この世界の本当の創造神の所ですね。抗議の為と、エアリアルの始末を押し付けに行ったのだと思いますよ。ルナティ、貴方はある神様に薬師様の事を教えて頂いたのでしょう。凪様をさらったのはその神様で、此方に転生させたのもその神様。さて、薬師様もその神様を尋問される事でしょうし、我々は場所を移してこれまでの事総て吐いて頂くとしましょうねぇ~」


   日光がにっこりと微笑みを美麗なかんばせに貼り付けた。

   けれども、その瞳は一切笑ってはいなかった。

   ルナティは、ぞぞっと身体を振るわせると「わかりましたぁ」と、言ってきゅっとナディアの服の袖を握り締めた。




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