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神獣白虎『ルナティ』
皇宮の敷地内にある離宮
しおりを挟む十二本、総てがナディアの胎内に納まって、体調の変化は無いかと薬師に聞かれたナディアは、首を軽く縦に振りながら「大丈夫なようです。何の変化も有りませんわ」と答え、笑顔を見せた。
薬師も、わずかながらも微笑みを唇に刻んで彼女の答えに頷いた。
晴明が、ナディアに向けて微笑み、告げる。
「嬢ちゃん、薬師様方を宜しく頼んだぞ。こ奴ら、この世界の事はな~んにも、解らんのでなぁ。さて、儂は屋敷に戻るとするか。何かあったら何時でも儂を呼ぶとよい。では薬師様達も達者でな」
「おい、シジイ、待てっ」
と、薬師が晴明に声を掛けるが晴明はどこ吹く風だか、後ろ手に手をひらひらと振ってみせると、薬師の言葉を無視してさっさと空間を切り裂いて帰って行ってしまった。
「要件だけさっさと済ませて帰りやがったよあのくそジジイ………… 」
立ち竦むナディアの肩にうなだれ掛かるように頭を乗せて溜め息を吐く薬師に、ナディアの緊張が伝わる。
どういった意味の緊張かは薬師には解らなかったが、どちらにしろ意識して貰えて居るのだと思うと、隠したにやけ顔が止まらなくて少し困っていた様だった。
少しして薬師は、お顔の体裁を整えると顔を上げナディアを抱えると、もと居た椅子にナディアごと腰掛けた。
「やはり、移動手段は抱きかかえられるのですねぇ……」
もう殆ど諦めていた『自分で歩く』と、言う行為。
「当たり前だろ? こればかりは俺の特権だから諦めて」
そう薬師に追い討ちを掛けられると、諦めるしか無い。
そうなのだ。
ナディアは記憶が無いので知らない事だが、実はもう既に凪の頃からこうなのである。
流石に人の多い所では降ろして貰えた凪だが、人の多過ぎる場所では抱きかかえられての移動だった。
と、言う訳で何事も諦めが肝心なのである。
「さて~、朱雀を助けにいくの、何時からたつの? 」
その疑問、タイムリーな質問だね、ルナティ。
「明日、明後日と、休みを儲けて休養と旅の準備に当てようかと思うのですが、如何です、薬師様」
日光の提案に、「それでいいよ」と薬師は応え、其れではひとまず解散だと、皇帝の号令によりその場は解散と相成った。
それぞれが、皇宮の敷地内にある離宮の部屋に案内されて、夕食も立食形式で一時間後にと説明された。
流石にナディアとは別々の部屋にさせられた。
いくら番だからとは言え、男なれしていない女性が男と同じ部屋とは可哀想だと、皇妃様が気を利かしたのだ。
ただ、番が離れがたい特質を持っているのも考慮してくれたのか、薬師とナディア、隣同士にしてくれていた。
取り敢えずは、それで由と言う事にしろと言う事だ。
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