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神獣朱雀『エレオノラ』
薬師様は総てお見通しでした
しおりを挟む「ナディア、そんな顔しないで。もう大丈夫なんだから。ね」
ナディアの耳元で、甘く優しく囁かれる薬師の言葉。
とろとろに甘やかされるナディアに、周りが呆れてサーッと蜘蛛の子を散らすように散っていく。
二人きりにされて、薬師が袖を掴んでいるナディアの手を取り、掌に自身の唇を寄せると、ナディアの顔が茹でたタコのように赤くなった。
コレが可愛くてついつい甘やかしてしまうと、思いはするが、反省はしない。
ドロドロに甘やかして、溺愛してやると心に決めているから。
薬師がふわりと笑みを見せる。
ナディアだけに向けられた微笑みに、彼女の心臓は早鐘を打ち、心の中で、ナディアは悲鳴を上げた。
それに追い討ちを掛けるように、薬師は、ナディアの髪を一房取り上げると、上目遣いで彼女を見つつ柔らかな髪に口付けを落とした。
ふわっ。
「おおっと…… 」
傾いだ彼女の身体を素早く移動して抱え込む。
ナディアは薬師の甘さに耐えきれず、その腕の中で、なんと、気を失っていた。
「ほんにおんしは、罪深き男よのう……… 」
そうにやりと笑みながら言葉を投げ掛けたのは、もう一人の朱雀だった。
薬師が独り、異空間に亀裂を開けようとした時、開いた扉を打つ音がして、彼は其方に目を向けた。
其処に立っていたのは悉陀。
彼を認めたまま、薬師は異空間を開き元に戻った事を確認する。
試みは、成功していたのだ。
薬師の唇が微かに動く。
声には成ってないが、唱え終わった途端、彼の手の中に何かが飛び込んで来た。
そう、その何かは羅漢であった。
レーザーを吐き出していた羅漢を改造して今度は吸い込むようにした。
まるでブラックホールのように、何でもかんでも吸い込むようにしてやった。
その結果、羅漢はとてもいい仕事をしてくれたのだった。
「薬師、それって異空間に放り込んだ奴だよね」
「あぁ、そうだよ」
「それ、どうするの? 」
「愚問だろう? 俺の血肉を手に入れた阿呆が居るだろう。回収して他の血肉と混ぜて使えなくする」
頬杖を付いて羅漢を眺める薬師が悪い顔でにっと嗤う。
逸れを見て悉陀は悟った。
── 薬師様は気付いていらしたのか…… ──
と。
「そう易々と俺が身代わりを造らせると思うか? 別に俺は同性愛者を差別視したりはしないが、自分自身となると話は違ってくる。相手をするのが俺に似せて造った人形でもな。だから羅漢を愛染の所に放り込む」
「ほぅ、流石は薬師ですね。全部解ってらしたのですか」
薬師はにっと笑った。
「人の血肉を使って動くダッチワイフを造ろうなんてふざけた行い、俺が許す訳無かろうが」
「あ~、確かに」
悉陀は、薬師にそうは言ったものの、薬師が本気で色々とぶっ壊す事も、悪ガキ達を増徴させる原因の1つでは無いだろうかと言う考えを、そっと胸に飲み込むのであった。
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