無実の罪で断罪される私を救ってくれたのは番だと言う異世界の神様でした

黄色いひよこ

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神獣玄武『ナナミ』

転生します

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 薬師は、哪吒の魂から少しをちぎり取り、ちぎり取ったモノをもう半分に割いた。

 その一つを世界樹ユグドラジルに植え付け、なんと、もう一つを愛染に押し込んだ。

 愛染の中にはじんわりと少し、本当に少しだが、哪吒が感じられる。

 その感覚が、愛染をなお一層大人しくさせた。

 そして薬師はもう一つ、ストレージから紐と、薬壺から薬を一粒取り出して飲むと、左腕にギリギリと紐をむすび付け、あろう事か己の肘から先を自前の剣で切断した。


 「薬師っ!? 」

 「櫂っ!! 」

 「「薬師様っ!!」」


 それぞれの言葉でそれぞれが悲鳴を上げた。

 けれど、薬師は違った。

 ケロッとしていたのだ。

 こうすると自分で決めて居たから。

 哪吒がその身を世界樹ユグドラジルに捧げた時から、薬師は腕一本分の血肉をこの木に与えるつもりでいたのだ。

 彼に取って、何ら問題は無い。

 哪吒の魄はもう既に世界樹ユグドラジルの苗床に成っている。

 其れだけでは不十分な為、この処置となったのだ。

 その為の血止めと、痛み止めと、傷の治癒の為の薬だ。

 そしてもう既に傷口は癒えていた。

 左腕が無い状態で。

 そして世界樹ユグドラジルによる世界保護は時期安定しようとしていた。

 薬師は、無い腕をあちらこちらから確認して、何事も無い事を確認する。

 傍らで脇侍の一人が溜め息を吐いた。


 「本当に無茶苦茶だよね。薬師様は。しょうがない、神経系統は傷付いていませんよね。最高の技術を費やした最高の義手を俺が造りますから。それも早急に。その為に俺は一時あっち●●●に帰りますから。これ以上変な事しないで待っていて下さいよ」


 と、言うと問答無用でその場を去った、月光。

 そんな彼を、「慌ただしい奴だ」と薬師は見送る。

 そして、手の中に残った大半の哪吒の魂を見てナディアに言った。


 「この魂を、お腹の子に移植しても良いだろうか? 」

 「前に薬師様が仰った、愛情を掛けてこの哪吒の魂を持った子供を、育ててみるのですね。わたくしは大丈夫ですよ。溺愛してあげますわ」

 「つっ、ナディア……、一応、俺が一番だよね…… 」


 狼狽える薬師に、ナディアがくすくすと笑う。


 「さぁ? お腹を痛めて産む子ですからね。一番可愛いかも知れませんわ。うふふふふ… 」


 そう言うナディアに薬師はがっくりと肩を落とした。

 けれど、薬師もその態度で、にっと笑う。


 「どちらにしろ、この子は哪吒とは違う。優しくて強い子供に育てる。俺の後継ぎに……。そして、番となる『娘』を愛しむ子供にね。愛染、お前がこのお腹の子供の番だ。どうだ、女として、この産まれ直す哪吒の番に成らんか? 」

 「なるっ! 成りたい! 女でも良いから、哪吒の番に成りたい! 」

 「この子はきっと哪吒では無いぞ。魂はそうでも別人になる。そう育てるからな。記憶も封じるし……。お前の記憶も封じられる。それでも良いか? 」


 薬師の言葉に、愛染は迷うこと無く頷いた。
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