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epilogue
妖精の花園③
しおりを挟む思わずと言っても過言では無い。
女の子の頭を撫でてしまって、内心自分でも驚いてしまうのだが、それはそれ、仕事をしない表情筋のお陰で、ピクリとも表情が動かない。
アイセンレイトは、作り笑顔(こうでもしないとなかなか笑えないから)で女の子にあっけらかんとした口調で言った。
「僕はくすしなんだ」
と。
「ええっ!? くすし!? そんなのうそだぁ~っ」
驚きつつ本気にしない女の子に、思わず今、効能を目の当たりにしたじゃんかと、思いつつ、苦笑いが浮かぶ。
でも仕方が無いと思う所もあった。
この世界で薬師は少ない。
魔法が発展しているこの世界にとって、薬で治療する病気は殆ど無い。
しかし、薬師如来の出現で、薬師とは別の立場を現す名称となった。
魔法では治せない病を治す事が出来る人を、薬師と呼ぶようになったのだ。
今の時点で薬師と呼ばれる人物は二人。
薬師如来と、薬王菩薩(兄)だけだった。
ただし、己が薬王と成った事は本人に自覚は無いし、薬師としては息子を釈迦に取られるのは絶対嫌だと思っていたので絶対に話しては居なかった(認めてもいない)。
そんな経緯で(どんな経緯だよ……)アイセンレイトは嘘吐き呼ばわりされても気に留めなかった。
仕方が無い、そう思う部分もあったから。
アイセンレイトが女の子を見つめていると、女の子もアイセンレイトを見詰める。
それが何時までも続くといいのにと思いつつも、彼は口を開く。
「そう言えば、名乗って無かったよね。僕はレイド、アイセンレイドって言うんだ。レイドって呼んで。君は? 」
「あ、わたくしはラスティエル。ラスティエル=アル=エルディエク公爵令嬢ですわ。以後お見知り置き下さいませ」
と、女の子、ラスティエルは上手く言葉を操って、見事なカーテシーをして見せたのだった。
アイセンレイトはそれを聞いてピクリと眉を上げたが、此方もそれならばと、
「僕のような者に丁寧な挨拶痛み入ります。公爵家のお姫様」
礼を取った。
その際に、誰が見ても格好いいと思われる姿勢や柔らかさを見せ付ける彼に、ラスティエルは目を奪われた。
それが番の色気とは気付かなかった二人だった。
見つめ合えば、胸が高鳴る。
アイセンレイトは思わず口にした。
「ラスティエル嬢は、番と言うのをご存知か? 」
「番って、獣人の人達の? 」
「僕等の番は獣人の
ソレとは異なるんだけど、まぁ、似たり寄ったりとは言えるのかもな…… 」
アイセンレイトは、ふっと笑ってラスティエルに言った。
その微笑みは少し悲しそうだ。
と、ラスティエルが思ったかは、定かでは無い。
彼は一つ呼吸を整えるとラスティエルを見据え言った。
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