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番外編:ソラシア帝国大舞踏会
舞踏会当日です
しおりを挟むシルベスタ家の一員としてやってきた薬師の着る衣装は、有る意味、とても似合っていた。
スラックスにベスト、ネクタイにジャケットと、黒よりの濃いグリーンで日本の伝統色で言えば萌葱色がそれと言える色だろうか。
元々昔っからスーツを着用していた彼だ、燕尾服も違和感無く着こなせるのも、当たり前と言えるだろう。
そして、絶讃すべきなのは、薬師よりもナディアのドレスであった。
薬師のスーツと同じ萌葱色のドレスは、宮廷服でパーティードレスでは無い。
それ用として着用可能ではあるが、宮廷晩餐会や皇帝主催の大舞踏会は年に二度だけ催される行事で、総ての上位、下位貴族が招待される大イベントである。
因みに蛇足だが、後一回催される大舞踏会は一般的にはデピュタントと呼ばれている。
そんな大舞踏会で、ナディアが着るドレスは、周りのお嬢様に比べてシンプルに見えるが、実は凝っていて、エレガントであった。
上半身はサテンとレースの飾りで縁取られ、肘から先はサテン生地とレースのドレープで流れるような美しさを見せ付け、スカート部はサテン生地にレースが全面に縫い止められた飾り布である、同色のサテン生地が半分被せるように取り巻いている美しいドレープの仕上がりは、仕立て人の腕の良さが伺えた。
今流行りのデザイナーズブランドと言う代物らしかった。
逸れを着こなしたナディアは『緑の貴婦人』、『妖精姫』などと古称される程の美少女であった。
彼女は、薬師如来に出会う前から巷でそう呼ばれていたのだ。
主に『妖精姫』と。
そんな彼女が良い意味にも悪い意味にも捉えられ、揶揄され(憧れや尊敬もあったが)たのは偏に薬師に断罪された皇太子のせいであった。
未だ、間違いが正された事が、周知されて居ないのだ。
勿論、世界が救われた事も、殆どの民衆は知らないのだ。
それは大変、嘆かわしい事だった。
漸くシルベスタ家の入場になった。
下位貴族から入場が始まって上位貴族の入場、そして皇族の入場で全員となる。
シルベスタ侯爵家は、皇族、公爵、侯爵、と三番目に遅く、四大侯爵の中ではトップを行く大侯爵であった(意外だった? )。
シルベスタ夫妻が先に入場し、その後をナディアをエスコートした薬師が入場して程なく、ざわざわと周囲が騒がしくなった。
「……、っ、櫂っ…… 」
「気にするな。堂々としてろ」
そう薬師に言われて顔を上げるナディア。
その表情は凛として、美しかった。
程なくして全員が会場入りして、皇帝の一声で舞踏会が始まった。
第一皇子が排斥され、第二皇子が繰り上がり皇太子となり、皇子がその婚約者と、ファーストダンスを踊るのを見守る。
ナディアは、皇子の婚約者を見て嘆息を吐いた。
「はぁ、とても美しい方ですわ…… 」
「そうでしょうか? 私には、冷たくて何処か人形のように見えます」
ホールでくるくると回る二人を見て、薬師は眉を潜めそう言った。
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