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番外編:ソラシア帝国大舞踏会
現皇太子と薬師
しおりを挟むすると、今では皇太子となった第二皇子が、薬師を見てふわりと微笑んだ。
「人とは思えない程の造作ですね。貴方は」
そう言われて薬師も口元だけを浮かせるアルカイックスマイルで微笑む。
それは弥勒が作る微笑みで有名だが、如来の微笑みにも通じるものがある。
薬師はあくまでも、皇族にはそう言った微笑みしか見せなかった。
「そうですね……。私は、人では無いですから。あえて言えば、元人間。ですかね…… 」
と、微笑みを貼り付けた儘言えば、第二皇子の口元がひくついた。
父親である皇帝からは聞いていたが、本人を目の前にしたら身が竦む思いだ。
皇子はそう感じる程に、目の前の彼を恐れた。
薬師は如来の中でも気が優しい神だ。
そう緊張するものでも無いし、怖がる必要も無い。
けれど、この皇子は怖がった。
もしかしたらだが、薬師自身が皇子と言う生き物を警戒しているのだろうか。
己の番のナディアが、皇子に、それも皇太子に酷い目に合ったのだから、警戒しない筈が無い。
そうか、そのせいで皇太子は薬師に怯えて居るのだ。
彼が何かした訳では無いが、これから何かしないと言う訳でも無い。
ほんのちょびっとの警戒が、普通の人間には針のむしろに感じるのかもしれないと言う事を、薬師は目にも思わないまま、辺りを意識だけで見回していた。
「薬師様、僕は彼とは違います。何をどうすればこの帝国を少しでも良く出来るのか、皇太子妃となる彼女と二人で考えて行きたいと思います。彼女とは、信頼関係にあってもまだ、お互いを愛し合う恋愛感情までは残念ながら思いは、達してはおりません。けれど、僕はいずれ彼女を愛するでしょう。激しい愛では無くとも……。 僕は、彼女からも愛されるよう努めて行きたいと思います。兄のように婚約者を蔑ろに扱ったりしません」
真摯な目で薬師に訴える第二皇子は、名をシェイドと言った。
シェイドは至って真面目で真剣だ。
そして思慮深い。
何故彼が皇太子に成れなかったのかは、偏に年功序列的な皇室システムのせいで、後に産まれるか先に産まれるか、彼自身、決められないからだ。
それに、皇帝が愚王でも愚王を囲む側近が優秀で有れば、国は何とでも回ると言う事も弊害の一つで有ろう。
優秀な皇子が皇帝に着けば、自ずと側近も優秀な者が集まり、愚王を頂く場合よりも政治や事業の回転、改革などがが進み、国は尚一層栄えると言う事象をこの皇室は、漸く気付いたのだろう。
まぁ、気付かなければそう遠くない未来に、国が一つ地図から無くなっている。
と、言う憂き目に合うのだ。
薬師は一瞬で其処まで思考して、一度目を伏せ、皇子から視線を外し皇帝を見やった。
「ジオルク、良かったですねぇ。世界地図から、この帝国が消えて無くならずに済んで……。」
そう薬師は言って、ふわりと笑った。
その一言では、薬師の真意は計れない。
ジオルクは眉を寄せて薬師の言葉を考え出した。
「フフッ、考え過ぎない、ジオルク。禿げますよ……。言葉通りですよ。良い跡継ぎが出来て良かったですね」
その言葉の後に、薬師は漸く漂わせる気を緩めた。
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