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無実の罪で投獄された令嬢
投獄された令嬢⑤
しおりを挟む「一応、君も俺も下着姿だけど、裸では無いから。こんな状況になってしまって申し訳無い。もっと上手く立ち回れたら良かったんだが… 悪いな 」
「い、いいえっ、どうか謝らないで下さいまし。寧ろ、わたくしの方が御礼をしなくてはならない方ですのに…… 」
ぎゅっと抱き締められて、この優しくとろとろに溶かされてしまう美声の主と、顔を見て話したいとキャサリンは思っていたが、何故か振り返る事が出来ない。
抱きしめられ方が、振り返れない程強い訳でも無い筈なのに。
キャサリンの思惑に反応するように、零がクスリと笑う。
そして、振り返れない理由を彼女に告げた。
「君は死にかけてたんだと言っただろ。今の君は、自分の身体すら支える力が無いんだ。今此処で俺が君を放したら、あっと言う間に沈み込んで君は溺れるよ。大人しく抱かれてな、俺は騎士だ。君に酷い事なんかしない。フォルトゥナの名代と言う肩書きに誓ってね」
そう言う零をキャサリンは信用したのか、強ばらせていた身体をゆっくりと弛緩させた。
逸れを零は感じ取ってひとまず安堵する。
どうやら信用されたようだ。
信用出来ないのは当たり前だ。
目を覚ますなりいきなり現れた人物、それも男だ。
警戒して当たり前な上、この所、特に彼女の周りの態度は頗る付きで、悪かった。
悪いなんて一言で終わるような簡潔なものでは無く人々は陰湿で陰険、会う人会う人、彼女を嘲笑し、提げずんでゆく。
勿論、理由は解らないし、皆目見当も付かない。
キャサリンが、すっかり誰も信じられなくなるのは時間の問題だったし、嘆くのも当たり前と言えた。
そんな折に、こうやって優しくされても心が働かない。
だから思考すら麻痺して、彼女はぼんやりとお湯を見ていると、ふと彼に手を取られて居る事に気付いた。
男の人なのに細い指、だけれど節が太くて掌は硬い。
豆が出来ているのは触れられても解る。
騎士だと言う事は強ち嘘では無いのかと、キャサリンは握られる手の感触で知った。
「よし、体温も完全に戻ったな。ヘンディク、ストレージから毛布を出しておいてくれ」
「はいはい。本当に零は馬使いが荒いですよね」
と、ヘンディクはぶつくされながも、零の言う通りに動いてくれる。
その事は零だってちゃんと理解していた。
「さてと、キャサリン。風呂から出て魔法を使うから、少しの間じっとしておいてくれ。抱き上げるから……。後、目も閉じて置いてくれるかな? 」
そう言って零は、キャサリンが目を閉じるのを確認して、彼女をひっくり返し、背中と膝裏に手を各々回して、そのまま姫抱きに抱き上げ立ち上がった。
驚異的な脚力とバランス力であると気が付くのは、此処に居るヘンディクだけだろう。
身体強化せずともこれだけやってのける騎士は、そうそう居ない。
零はそういう意味では天才と言えた。
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