【完結】女神に殺されて死神にされました。でも助けた令嬢がドストライクで困ってます

黄色いひよこ

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新米女神と女神の守護騎士

面倒な男

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突然、場の中心に出て来た人間に一同は喧騒から一変、しん……と静まり返った。

そして、ザわっと場が急にざわついた。


「団長に、副団長だ… やった、助かったぞ、団長が帰ってきた」  


そんな声が少しずつ大きくなってゆく。

これが零の背負う期待。

それは一気に歓声に変わった。

銀の縁取りの細工も艶やかに映える黒の外套を羽織り、フードを目深に被る長身の男が数歩前に歩み出た。

重量級の大男の前で立ち止まり、多分目線だけで値踏みしているのだろう。

首が上下に動いてない辺り、予想は当たっているようだ。


「君が新入り? 」


フードの中から聞こえる声は、高くもなく低くもなく、かつ、抑揚すらない事務的な声。

勿論、普段零はこんな喋り方はしない。

これは彼なりの面倒くさい案件をかたずける時のスタイルだと、団の人間なら誰もが知っていた。

だから、下を向く者や、横や上を向いて顔を逸らす者が続出していた。


「我は、カスクート公爵…… 」

「あ~、あのさぁ、」


男が口上を言い掛ける中、無残にもぶった切る行動に出た、我等が騎士団長様。


「君、それ良いから。別に爵位なんて聞いてないから。団員にしつこく言われてるだろうけど、俺からも言っておく。此処では貴族も平民も関係無い。皆、同じ釜の飯を食う仲間だ。そんな基礎的な事が聞けない者は、この団には要らない」


『ププッ』、誰かが吹き出し笑いをする声が聞こえた。

それを目ざとく見付けるカスクート公爵。


「そこっ! 何が可笑しい!! 私を誰だと思ってる! この騎士団の時期団長だぞ!! 」

「君、そんなに怒鳴らなくても聞こえてるから。で、何で君が時期団長なのかな? 団長不在だってスレイが言ってたよね? それに、まだ団員でも無いのに……。志が高い事は確かに良い事だけど、先ずは入団テストを受けて俺から入団許可を取ってからにしようね。大口叩くのは…… 」


と、言う外套男。

カスクート公爵は、零の事を心の中でそう呼んでいた。


「貴様はなんだ? その物言いは。この私に対して失礼だぞ。不敬に値する! 」


「はぁ……」、外套の男が深い溜め息を吐く。


「だ・か・ら、騎士団では身分は関係無いと言っている。関係するのは、上官と下士官、一兵卒の上下関係だけだ。そう言う意味では、君は上官に楯突いているんだよ。解る? 」

「貴様が、上官だと? 」

「君がなりたがっている騎士団長だよ。一応、この黒騎士のトップだ」


男が零を値踏みする。

外套をすっぽり被り、あまつさえフードまで被って顔を隠す徹底ぶりにカスクートは訝しんだ。


『コイツが団長? 有り得んな…… 』


等と失礼極まりない事を考えて、奴は鼻で笑った。

もしカスクートが零のふたつ名を知っていれば、馬鹿になどしなかったであろう。

『フォルトゥナの死神』と聞けば誰しもが会い見えたくないと言う。知る人ぞ知ると言う人物なのだ。

この男はそんな事すら知らない甘やかされた男であった。


「はぁ、君、今とんでもなく失礼な事を考えたね。しょうがない、納得がいかないみたいだから、模擬戦でもしようか。君が俺に指一本でも触れる事が出来れば、団長を譲ってあげよう。けれど君が負けたらこの団から去る事。良いね。後、俺は武器の使用はしないから、君は好きなのを使えば良い。まぁ、使えればだけどね」


零がそう言うと、男は俄然やる気が出たのか、


「本当だな! 男に二言は無いな! 」


そう言って鼻息も荒く息巻いたのだった。

彼が秒殺される事実を知らないのは、この場に居る者達の中で、彼一人だけであった。
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